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咆哮の頂

#國韻アフォリズム

夕暮れがみえないほどには、家の向こうの山々は高くなかった。いつも太陽を包み込み姿を隠す彼らは、少しだけ意地悪なのかも知れない。一度俺は彼らの雄叫びを聞いたことがあって、その後に人が数百人死んだ。その温かい土のなかに、亡き人を優しく迎えて、やがて空へのぼっていくのを手伝うのだろうか。鎖につながれた人間は、山々によって解放され、残された人の涙の雫を笑う。草が生える根の方角は、亡き人の笑い声に誘われて、奥深くへともぐっていくのだ。声と根が出会ったとき、花が咲く夢が種になる。その夢をみる俺は、とても幸せな気分になった。亡き母が姿を変えて花になったのだから。




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