#白樺派
故郷へ足をのばした僕は、学校の庭で少しだけ身体を動かして、花壇の潤しさに恥ずかしくなった。廊下を奥から眺めて、先の方まで突っ切ると、ゴムが擦れる音が盛大に響きわたった。二組の教室では机たちが物欲しそうに並んで、僕の姿を待ち構えている。窓を開けて外の空気を入れると、彼らは静かに喜んでいるかに思えた。やがて、曇ってくる空模様が雨の話し声を届けに来た。黒板に書かれたラストメッセージは、永久に残ることもなく、忘れ去られるさだめ。針が動くことのない時計は、雨滴の合唱を指揮していた。友人の声も聴こえぬ、成長した僕のために。