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ファッションと哲学のおぼえがきvol.1.5

vol.1でけっこう冗長になってしまったので、改めて端的に、かつ具体的に研究テーマのイメージを整理する回です。
今回はファッションと哲学の結節点に寄った案です。

行先のイメージ

・ファッションを学術的に紐解くことに貢献する
・消費生活の中で必ずしも表面化しないファッションの素晴らしさを証明する
・定量ではなく、言語化による定義をしてより適切な説明を探る

こんなことができればいいなと思います。

まず、5W 1H に落とし込んで表現してみる

研究テーマのイメージを、いわゆる5W1Hのフォーマットに則って書いていきます。

When…
2021年以降

Where…
一般的な都市的な感覚を持つ日本で

Who…
一般生活者(20~50代の社会生活を営む人)を対象に

What…
ファッションとは、自己表現と自己形成の両方を担うものである

Why…
ファッションは、社会に対して外向きに表現する役割もあるが、「自分とは何か」を形作る効力が認識されるケースは少ないと感じるため

How…
生活者に対するインタビューとワードローブのファッションデザイン批評


によって研究する。

ファッションは自己表現?

私は、よくファッションは自己表現だ!個性の現れだ!という言説に違和感を覚えます。たとえ上下ユニクロのシンプルな服を着ていたり、ファッションに無頓着だったとしても面白い人や存在が目立つ人はいますし、目立つ格好をしている人が必ずしも目立つことを意図しているとは限りません。

ただ、必ずしも「自己表現」という言い方が間違っているとは言えなくて、非認知下で多少「自分はこう見られたいぞー」というのが服装に取り込まれます。
そして職場の同僚や友人、家族から「その服かわいいね!似合ってるね!」というリアクションを受けて「これを着た時は可愛いと言われたからもう一度着ていこう」「かわいいと言われすぎたから着合わせを変えてみよう、もう職場に着て行くのはやめよう」などの試行錯誤をしていきます。
さらには、ある程度ファッションリテラシーに左右されて、見る側もそのファッションリテラシーや相手の性格やバックグラウンドを鑑みて、総合的に、無意識的に評価しているのだとは思います。

つまり、ファッションは自己表現の手段というより、自己を表現し、また自分を変化させるインターフェースのようなものなのではないかと考えました。

5W1H整理した内容について解説

便宜上、先にWhat、Why、Howについて詳しく書きます。

What

What : ファッションの効力によって、人は自己認識できる範囲を超えた自分を構成し、表現することができる

先にも何度か述べましたが、私はファッションは内在的な自己と外在的な他者から見た自己の両方に干渉されて「自分は何者か?」を形作ってくれるのではないか、またその形成にファッション従事者の力を借りることで、当人が想像する範囲を超えていくことができるのではないか、という自分自身で立てた仮説を確かめたいと思います。

ポイント
掘り進めていく中で、気に入ったファッションを身にまとって「ああ、いいな。」という感覚の適切な説明を探り、今この瞬間まとっているファッションの何の要素が自分を表現し、どこのディティールが自分を変化させ揺るがしているかを明確にすることを重要視しておく必要があります。


筆者の仮説1
ファッションは、自分の感性を表し・また着用しているものによって自分に変化を与える、相互作用的なものであると考えています。

私は、よくファッションは自己表現だ!個性の現れだ!という言説に違和感を覚えます。

もちろん、人が毎日社会生活を送る上で身に纏うファッションは、自分の好みやセルフイメージ、なりたいイメージを基に選択されています。
だからこそ、ファッションは自由であればあるほど良さそうだ…という社会通念に紐づいていると思います。
しかし、本当に私たちは純粋に自分の個性をもとに服を選べているでしょうか?お洋服を選び着るということは、他者からの評価を通じて自己を形成するということから逃れることはできません。
もちろん自身の身体イメージとのマッチングもありますが「この格好が好きだ!」と思う観点に、職場の同僚や友人からみて「女性らしく」仕上がっているであろうことを鏡の中の自分を見て想起する経験は無視できません。

さらに表面的・一般的なケースでも、他者からの評価を受けて「可愛らしすぎると言われたから着合わせを変えてみよう、もう職場に着て行くのはやめよう」という試行錯誤をし、自分の「女性らしさ」の定義を変化させているはずです。

つまり、ファッションは自己表現の手段というより、自己を表現し、また自分を変化させるインターフェースのようなものなのではないかと考えました。

筆者の仮説2
さらに、自己を再編集・再構成をより高次元のものにしている要因は、最も重要な要素はファッションデザインの提案性だと考えました。

シンプルな例だと「普段パキッとした赤色は着ないけど、着てみたらなんだかいつもより明るく前向きな振る舞いができた」のような体験です。
実際はもっと細かく様々な変数によって形作られると考えています。ただしこのような体験は変身願望とは異なり、全く違う自分に仕上がってしまうとすごく違和感があり、居心地が悪いはずです。
(もちろん、そういった非日常性をあえて活用するシーンもありますが、私たちがファッションから受ける恩恵の主軸から外れると判断し、その論点は除くことにします。)

大抵の生活者はファッションの専門家ではありません。そのため、ほとんどの人がファッションビルや百貨店で店頭に並んでいるお洋服を眺めて、気になるものを手に取って購入します。
何気ない消費行動ですが、店頭に並んでいるお洋服が気になり手に取るという体験は、「自分と共通点を持つ、ただし自分ではない他者が思い描いた身体像」を受け入れるということを意味していると思います。

とあるファッションデザイナーが捉えた「普段着」「カジュアル」「個性的」などの記号がデザインに落とし込まれ「平均よりも10%増しくらいにボリュームを取った袖」が「ちょっとだけ斜に構えた私」を表現する。
こういった要素の集合体を吟味し、自分にマッチするものを取り入れることで、より適切で新しい自分の身体像を手に入れる…お洋服を探す、買うということは、その経験の繰り返しなのだろうと考えています。

「ファッションが好き!」という人はいちいち自覚しないまでも、自己のセルフイメージにしっくりくるファッションと、セルフイメージの一歩先をいく新しい自分へ再編集することの間を自身の感覚・ファッションデザインの力・他者の目線を借りて行き来することを楽しんでいるのだろうと捉えています。

Why

Why : ファッションは、社会に対して外向きに表現する役割もあるが、「自分とは何か」を形作る効力が認識されるケースは少ないと感じるため

記号論や身体論の知識なしに、生活者自身が自覚してファッションを取り扱うことはほぼ不可能です。
でも、ファッションを記号的・身体的に使いこなすことで、自分の社会での居心地の良さを確立したり、自分が経験したことのない素晴らしい自分をつくり、もっともっと現代社会を生きやすくすることができるんじゃないかと考えています。

How

How…
生活者に対するインタビューとワードローブのファッションデザイン批評

さて、この大きな問いをインタビューという方法で紐解けるんでしょうか…。

インタビューというアプローチしか私自身の引き出しがないというのが正直なところですが、哲学的な理論を引用するにとどまらず、実社会でのを証明するためには、インタビューという手法は有効だと思います。

インタビューによって生活者から湧き出てきた自己認識を構築する居心地の良いファッション・自己を再構成するファッション・自己を変身させてしまうファッションの境目を導き出すことを目指します。

また、ファッションに関しても徐々に批評のシステムが整ってきていますので、デザインの評価・文化的価値の評価によってある程度分析が可能だと考えています。

調査対象となった生活者のインタビュー結果、またその人たちが所有し好むお洋服のデザインを紐解き、記号論や身体論の理論を引き合いに出して付け合わせていくことで、最大限の説明ができるのではないかと考えています。

手法に関しては、じゃあ具体的にどんなことを聞くの?デザインの評価や文化的価値はどうやって定義するの?など深掘って論じるべきことがたくさんありますが、今回は知見が浅いのとあくまでやりたいことの整理なので、割愛します。

When…
2021年以降

Where…
一般的な都市的な感覚を持つ日本で

Who…
一般生活者(20~50代の社会生活を営む人)を対象に

現代の中でも、特に2021年以降ファッションのトレンドが完全に停滞したと言われています。
明確な「これを着ておけ!」という流潮がない中で、どうやってファッションを選択するのか?を見つめることは、今回の課題設定に最適だと考えます。

一方、場所は代表的な商業施設にアクセス可能な範囲の都市に限定します。
地域を広げてしまうと、生活者のファッションと触れ合う量と質の差がどうしても顕著になります。今回は、より高度な人とファッションの邂逅にフォーカスしたいため、一定の都市文化の中で成立するファッションシステムに的を絞ります。

また人に関しては、仕事とプライベートという社会生活が存在することを前提にしたいため、いわゆる「社会人」を対象とします。
明確に男女を分けるかは悩ましいところです。ただし、ファッションとフェミニズムはどうしても切っても切れない関係性があるので、社会的な性を限定する可能性はあります。

長くなりましたが、補足も含めてこういった全体像になります。

とはいえ…


インタビューを用いて、本質的に生活者がファッションをどう考えているかを紐解くんだ!と記述しましたが、正直テーマとしては壮大になりすぎる気もしています。

もう少し的を絞った方がインタビューをしたりファッションデザインの評価をする際もブレが出にくいのではないかと思っています。
例えば、ブランド選定という体験にフォーカスするとすごくわかりやすいと感じていて
生活者がお洋服を手に取るとき、「ブランドを見る」か「ブランドを見ないか」という分岐が発生します。
ここで、「ブランドを見る」ケースを選択するだけでテーマの的を絞ることができるのです。
近年だと、ブランドを気にしない消費行動の方が一般的になりつつありますが、それでも無数のファッションデザインの中から自分に合うものを探す…という難易度の高いファッション消費の世界で、ブランド選定は自己表現・自己再構成のために重要な要素と言えると感じています。

有名ブランドでなくても一般的なファッションブランドはほとんどのケースで「ブランドコンセプト」を持っています。
ブランドコンセプトとは「これこれこういう文脈に沿ってすべてのお洋服をデザインするよ~」というルールであり、約束です。
またブランドによって文言化される「女性らしさ」ひとつ取っても、実際にデザインされたお洋服を見てみるとレースをたっぷり使ったスカートから、ごくシンプルなタイトスカートまで数多あります。
一般生活者・消費者の力では「女性らしさ」からデザインの落とし込みを理解して明確に連想することは難しいですが、作り手はたとえ暗黙知でも何かのアナロジーを持ってデザインしていますので、紐解きがしやすいと思います。
つまり、一般人にも理解できる「言語」で表現されたファッションの選択と、結果としての実際のファッションデザインの紐付きは、詳細な消費体験の中での事象の深堀りも、事象を俯瞰しての理論化もしやすいかもしれません。

まとめ

今回は、今自分の中で一番成熟したテーマについて文章にしてみました!
研究計画4000字とか無理だろ〜って思ってたけど、今3,500字くらいなので行けるかもしれません。笑

今回はファッションと哲学のテーマで書きましたが、少し違った切り口でファッションビジネスと社会システムについても考え中です。
実社会を経験した人間が大学院に進みたいと考えたときに、貢献できることは仕事における経験です。
そう思ったときに、ファッションというシステムを取り扱うのもいいかもなと思いました。ただ、全く具体化されていないのでまたどこかで!

長くなりましたが、お読みいただきありがとうございます🙇‍♀️


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