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幼少期テレビで見た変な生き物のこと、「良いトラウマ」について。

増田セバスチャンのマネージャー/チーフアシスタントのキタムラです。作品制作の裏話や、進行中の企画のメイキングなど、増田セバスチャンの目線を皆様にもおすそ分けできればと思います。
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今年に入って、増田セバスチャンのポートレートを撮影しました。場所は撮影スタジオではなくセバスアトリエ。作品で使うマテリアルの棚や、アトリエにいるぬいぐるみたちと一緒に撮影してもらいました。

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NY在住のカメラマン、GIONさんによる撮影です。素敵!

棚にたくさん並んでいるマテリアルの話は以前にしたので、今回はそれ以外のモフモフの生き物たちのお話をしたいと思います。

興味がない人が見たら、ぬいぐるみはただの商品で、着ぐるみは人が動しているキャラクター、くらいな感じかと思います。でも、こういうよくわからない生き物が日常にいることって、結構心地がいいものなのです。

なぜ心地いいのか、そんなことに理由はないし、言う必要も無いと思っていました。でもこの数年くらい、その糸を手繰り寄せようとする自分がいました。

もしやこれは、幼少期からの刷り込みが原因では無いか?と…


小さい頃見たテレビの中の、変な生き物たちの世界

少し、自分の話をします。
物心ついた時から私は大変なテレビっ子で、NHK教育(Eテレ)、日曜朝のテレビ朝日の実写物などの時間帯はもちろん、バラエティ含め四六時中何か映像を見ていました。

にこにこぷんやポンキッキ(ーズ)はもちろんでしたが、NHK教育で夕方の時間帯になると、"月から来たモップ"こと謎の毛むくじゃらの宇宙人が地球にやってきてアメリカ人家族と生活する「アルフ」に夢中になり、テレ東では笑う赤ちゃんの太陽でおなじみ「テレタビーズ」。そしてウゴウゴルーガ内で放送されていた「ももいろぞうさん」など、海外の子供番組が地上波でたくさん見ることができました。

好きな番組がやってないときは、VHSの出番です。

初期ディズニー(花と木など)、ダンボ、くまのプーさん…この辺りはベタですが、加えて、ジュディ・ガーランド主演の「オズの魔法使い」など子供向けの物語を実写映像化した作品。あとは美術セットが作り込まれた「8時だよ!全員集合」のドリフ長尺コント。本物の象とか出てきちゃうやつですね。

我が家には、このラインナップに加えて、1本不思議なVHSがありました。

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怪獣のような主人公、そのガールフレンド、クリストファーロビンのような少年、喋るフルート、狂った時計、水玉の馬、意地悪で怖いけどすごくドジな魔女…。確か、少年の持つ喋るフルートが貴重(高価?)で、怪獣や森の仲間たちが魔女からフルートを守る…といったストーリーだったと思います。

よくわからないけど、出てくるもの全部がすごくヘンテコで愛らしい。でも子供にとっては可愛いというより怖い。なのに繰り返し見てしまう。そんな不思議な映像でした。

どうやらこの作品はマニアックなようで、このVHSがなぜ家にあるのか、そもそもタイトルはなんなのか、親に聞いてもよくわからず、同級生に聞いても、誰もそんな映像見たことがない。私はずっと見てたのに〜!あれはなんだったんだろう…?

時が経ち大人になると、そんなことは忘れてしまい、あの不思議な映像の正体はとうとうわからずじまい。

おそらくほとんどの人が、成長するにつれて、あんなに興奮して見ていた不思議な生き物たちの世界を、遠くに忘れ去ってしまうのではないでしょうか。


「良いトラウマだったね」

増田セバスチャンのアシスタントになり1年経った頃。

アトリエの引越しを手伝ったときに、突然幼少期の記憶がフラッシュバックします。

本棚に入れられた黄色いDVD。そこには「H.R. Pufnstuf.」と言う見知らぬタイトル。ジャケットに写っていたのは…

あの変な生き物たち!!!

「え!セバスさん、なんでこのDVD持ってるんですか!!」
「海外で買ったやつ。こういう子供番組のDVDとかVHSいっぱいあるよ」

タイトルを初めて知って急いで検索すると、それはイギリスの子供番組でした。さすがウィットに富んだ国。ウィキペディアによると日本語名は「怪獣島の冒険」だそうですが、全然ピンと来ません。でも絶対にあの時のアレです。

「これ私ずっと小さい頃繰り返し見てたんですううう!」
「あー、良いトラウマだったね」

良いトラウマ?

このキーワードは、増田セバスチャン作品を作る上で、その後も頻繁に出てきました。子供には、良いトラウマが必要だと言うのです。

確かに、当時子供が見るVHSとしてはベタだったディズニー作品「ダンボ」や「くまのプーさん」の1シーンにも、変な生き物が登場する悪夢が出てきて、幼少期の記憶にガツンと刺激を残しています。


変な生き物が存在する、私たちの日常

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増田セバスチャンの作品にも、着ぐるみがよく登場します。(これは、「ほっぺたおっこちんとスイッツー体操」という映像作品の時に作ったキャラクター)

以前、糸井重里さんの会社「ほぼ日」さんとセバスアトリエがご一緒する企画があり、作品を箱詰めする作業のために、ほぼ日さんを訪問する機会がありました。そこで登場したのが、クマ工場長。


この企画は増田セバスチャンのアトリエで制作したアートピース(ぬいぐるみ)を展示販売するもので、アトリエのクマ工場長として着ぐるみが店頭に立ちました。ほぼ日さんにも社内に宇宙鳥のシジュちゃんという着ぐるみのようなものがいるので、慣れてらっしゃるだろうなと思い、箱詰め作業の日は、人間1人+クマ1人で会社に訪問しました。(今考えるとちょっと変な判断ですね…)

クマ工場長は、私よりも手先が器用で、どんどん箱を組み立てていきます。(ぜひ再生ボタンを押してその様子をご覧ください)

1時間ほどで作業を終え、私とクマ工場長はエレベーターを降り、停めていた車に乗り込んで、そのままアトリエまで帰りました。

反対車線に乗っていた方は、クマが乗った乗用車にさぞかし驚いたのではないでしょうか。

バックミラーに映る水色のクマ。
ふりむけばクマがいる。

なんだこの状況は?

この時、小さい頃にみていた「変な生き物が存在する世界」に自分がいることに気づきました。

当たり前の日常のように、この日の私は大きなクマと一緒に元いた場所へ帰ったのです。


いつか遭遇するはずの、私だけの不思議な生き物

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(これは、「きゃりーぱみゅぱみゅのからふるぱにっくTOY BOX」というライブに登場したキャラクターたち)

トラウマのように記憶の奥底から離れなかった、変な生き物が存在する世界。

それを見て育って、物作りができるようになったとき、先人と同じように変な生き物がいる世界を作りたくなった…というよりむしろ、「変な生き物がいる日々を日常にしたかった」という方が、ニュアンスが近い気がします。

これは、妄想と現実の境目を限りなく無くすという行為の1つなのかな、と、アトリエにいるモフモフを見ながら思いました。自分が生きている世界は妄想ではなく、現実であることを知っているから、そうしたくなるのかもしれません。

変な生き物は大抵そんなに何もしません。
時々少年(少女)を守ってくれますが、基本的には人間の生活にモフモフ、モグモグと溶け込んでいるだけです。物語のエンディングでは、きっと元の世界に帰ってしまうのでしょう。

あの変な生き物はあくまでも主人公の少年のものですが、いつか自分には自分の、モフモフしてたりモグモグする生き物が現れるような予感が、大人になった今でも少しだけ残っています。


カラフルで愛おしい良い悪夢

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(これは、原宿のレストランKAWAII MONSTER CAFEのチョッピーとモンスターガールたち)

誰が最初に子供たちに良いトラウマを植え付けようとして、変な生き物がいる子供番組を作り始めたのかはわかりません。そもそも、トラウマなんて作る気はないのかもしれません。

でもいつか、増田セバスチャンで「トラウマ系子供番組」ができたら、思う存分変な生き物たちを出して、子供達にカラフルな良い悪夢を見せたい!それが私の夢の1つです。


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何故こんななずっと考えていたことを急に書き出したのかというと、この自粛期間中にフェリシモさんと、まさに変な生き物たちを作っていたからでした。

最初はそんな昔の記憶まで意識していませんでしたが、完成した子達を見たときに、いろいろな点と点が線になって面になりました。(あまりに宣伝っぽくなってしまうので、これらの商品についてはまた別の機会に書くことにします。気になる方はぜひKAWAII COMPANYのwebを是非チェック)


年齢を重ねるに連れて、年々こんな風に、幼少期の影響力の強さを感じています。

そしてよく考えると、幼少期のトラウマが増田セバスチャン作品(6%DOKIDOKI、きゃりーちゃんのライブやMV、展覧会など)である子供たちも、世界中にたくさん存在しているわけで・・・

増田セバスチャンは5年ほど美大の客員教授を務めていますが、「小学校の時に見たあのMVが衝撃的で」という学生に会う機会も増えました。

現実の世界は、とにかく色々あるけれど、彼らがクリエイターになる世界がもうすぐ来るのかと思うと、やっぱり未来は楽しみだなぁと思うのです。

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