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「あの時の自分たちを無かったことにしない」という異常なパワー

増田セバスチャンのマネージャー/チーフアシスタントのキタムラです。作品制作の裏話や、進行中の企画のメイキングなど、増田セバスチャンの目線を皆様にもおすそ分けできればと思います。
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「あの時の自分たちを無かったことにしたくなかった」

10年ほど前、増田セバスチャンがインタビューで発言した一言です。90年代の原宿で一緒だったブランドやショップが時代の変化と共に次々となくなってしまった時でも、自分が6%DOKIDOKIを辞めなかった理由として答えていたと思います。続けることが自分の意地だったと。

これを聞いた当初、20代前半だった私にはピンとこない言葉でした。

しかし今となっては…
めちゃくちゃわかるううううううう!
共感しまくりの言葉です。

スクリーンショット 2020-07-27 21.31.15

(増田セバスチャンwebのアートディレクション仕事スクリーンショット)


例えば、コンサート。どんなに苦労しても、最後に世に残るのは映像を収めたDVDです。そのものはとても華やかではありますが、そこに至るクリエーションの記録はほぼ世にでることはなく、小さい規模の会場では記録映像すら残していない場合もあります。CMだとしても、商品のwebサイトはそのうち閉鎖して見れなくなるものも多く、我々の仕事は結構簡単に「無かったこと」になることがあります。もちろん、一瞬の煌めきだからこそ尊いものもあります。でもだからこそ、自分たちでの行う記録がとにかく重要だと日々感じています。


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(とある日の増田セバスチャン@アトリエ)

完成までの過程に絶対必要だけど世に出ないもの、の代表格は、一番最初にスタッフやクライアントに提案する「イメージスケッチ」だと思います。これはクリエイターの頭の中を一番最初に共有するための1枚絵であり、いわゆる取っ掛かりでしかないので、本番の美術セットやグラフィックが上がってきたら用無しになる存在です。それでも、その1枚がないと何も始まらないという、なかなか重要な存在でもあります。

ちなみに、増田セバスチャンのイメージスケッチの出し方は結構特殊です。まず本人がコンセプトに紐づく「言葉」をいくつか、もしくは、短い文章(詩のようなもの)を書きます。そこからさらに質問を繰り返してイメージを掴んでいき、スケッチに起こして修正と微調整を繰り返します。

増田セバスチャンの頭の中のイメージをアウトプットすることはなかなか困難で、この人の脳内を無線LANでそのままプリントアウトさせてくれ!と何度思ったことでしょう。VR映像で没入できるのもいいですね。そんな叶いそうもない悪あがきを何年か繰り返すうちに、「言葉」で出してもらうのが一番イメージがつかみやすいことに気づきました。

KAWAII MONSTER CAFEの最初の提案資料は、その行程がとてもわかりやすいです。2015年3月。夏のオープンまで時間がない中で、店名・コンセプト・各ゾーンの内装など大量のデザインをしなくてはいけない状態。そんな中、最初に提案したのはこの文章とスケッチ1枚です。

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このスケッチをきっかけに、すごい勢いで内装のデザインを描きまくり、いつも作品をお願いしている造形会社もフル稼働、たくさんの人の汗により無事あのクレイジーでカラフルなレストランがオープンに至るわけです。頑張れば頑張るほど良いものができることがわかっていたのでとにかく必死で動いた思い出です。

(世界で1番フォトジェニックなレストラン!めちゃくちゃ良いので未体験の方はぜひ一度は足を運んでいただきたいです)


もう1つ、世に出ないものの代表格は「ビジュアル台本」です。

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ビジュアル台本…と当たり前っぽく言いましたが、これは宮本亜門さん演出舞台「THE WIZ」の美術を担当した際に編み出したもので、多分造語です。スタッフはもちろん、出演者に各シーンのイメージを伝えるにはどうすれば良いのか考えた末にできた手法で、2012年から2014年まできゃりーぱみゅぱみゅライブツアーの演出と美術を担当した時も毎回用意していました。本人との打ち合わせ後、まずは仮タイトルとコンセプト・登場人物・世界観をイメージスケッチで大まかに提案し、それ元に各チームが詰めていって、本番までに曲順なども入った「構成台本」を完成させていくやり方です。打ち合わせ毎にページ数が増えていきます。

(アリーナツアー「きゃりーぱみゅぱみゅのからふるぱにっくTOYBOX」名作です!素晴らしきファンタジー。DVDではKPPxセバスの副音声も収録)


どんな仕事でも、最初の打ち合わせに持っていくこの数枚の提案資料を絞り出すのにセバスチャン共々何徹したかわからないくらい苦労をしているのですが、今まで特に日の目を見ることもなく、年々資料棚が軋んでいくだけでした。


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そんな我々の元に舞い込んできたのが、増田セバスチャン作品集のお誘いです。

元々アート作品の作品集を想定して声をかけて頂いていたのですが、アートディレクションの作品集にしてもいいですか?スケッチもなるべく入れたいんです!と無理言ってお願いしました。

しかし熱意はあれど、今までの仕事の画像をまとめたり、使用許可を取るのも大変で、あれもこれ入れたい!とやっていたらなんと完成に1年以上かかってしまい…

やっと2020年7月31日に「PAINT IT, COLORFUL」が発売されることになりました。初作品集にして10年間のアートディレクション仕事をまとめたので、いわゆる「ファーストアルバムにしてベストアルバム」な本になりました。

Amazon玄光社さんのページにはサンプルで数ページ載っていますので、ぜひご覧下さい。掲載した写真の中には自分たちで現場に持参したカメラで撮ったものも多く、ああ〜〜普段から記録していて良かった…としみじみ。記録、超大事です。

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この本を作ってる時、ついに自分の中に「あの時の自分たちを無かったことにしたくない」マインドが生まれて、ずっとこの言葉に突き動かされていました。

そんな気持ちで作ったので、公開や発売が終了してしまった商品やキャンペーン、DVD化されていない舞台作品のメイキングや、映像作品のスケッチなどもなるべく掲載しています。


僕の作品が世の中に認められ始めたのはここ10年、40代になってから。
カラフルなものが認められる未来が来て嬉しいと思う反面、まだまだ色(個性)が少ない世の中で、やるべきことはあると感じています。

Paint it, Colorful!
カラフルに塗りつぶせ!

それは、20代の頃にメインストリームを歩けなかった僕の、色を使ったささやかな反抗のようなものなのです。

(増田セバスチャン作品集「PAINT IT, COLORFUL」序文より一部抜粋)


こんなボリュームたっぷりの作品集を10年越しに作ることができて、関係者の皆様には本当に感謝です。増田セバスチャンの記録でもあり、アトリエの記録でもあります。

もしよろしかったら手に取ってみてくださいね。



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Sebastian Masuda Staff/Lovelies Lab. Design Studio

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