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3日もたなかった

 私のボス 棟梁はひらめきで動く人です。そして準備をしない人です。
 動物を迎え入れるにあたって、雨風をしのげ安全に過ごせる環境は最低整え、できることなら事前にある程度の知識を持ち、いざって時の獣医師さんも目星つけて、さあ、動物を我が家に連れて来ようか、が私なりの常識です。
『ヤギ』がうちに来た時、、小屋がありません。柵もありません。桑の木の枝葉が屋根代わりで、首輪から伸びたリードを庭の木に縛っておく、という有様。
連れてきた張本人棟梁は
「ヤギは野生の生き物だから大丈夫さー」だって。そうだけどさー。でもヤギは濡れるのが大嫌いってインターネット先生言ってるし。それで、ついつい即席ブルーシート屋根を作ってしまう訳です。離れのお風呂場の屋根から伸びた角材やら近くの木の枝やらにブルーシートをくくりつけという心もとない屋根。豪雨や台風はしのげないなぁ、、
 ヤギは周り歩きをする習性があるから、繋いだ木にリードがグルグル巻き付いて『ヤギ』が動けなくなってる事も1日に数回あり、安全とは到底いい難い。
などなど、「情を入れない」とは言うものの対処したい事だらけ。餌やり、うんこ掃除は日々のルーティン。『ヤギ』は私の生活の一部で、『ヤギ』にとっても私達の存在を意識する事になりました。
 『ヤギ』が来て3日目。一応情を入れないと決めたからには、必要以外で触る事は決してしませんでした。この3日間で触る必要が出た時というのは、絡まったヤギのリードを解いたり、縛り直したりする時だけ。それ以外の時は気にはなっても見るだけ、見つめるだけ。撫でることは決してしませんでした。
 別れが頭をかすめる度に複雑な気持ちになります。しゃがんで『ヤギ』を見つめていると、『ヤギ』の方から私に近づいて来て、鼻先を私の鼻先に近づけて、「フンッ」と一息放ってまた歩いて行ってしまった。この時が私の決意がほころびた瞬間だったと思います。
 そしてとどめは、棟梁が名前をつけました。名前をつけちゃったら、もう家族じゃん。
新しいメンバー「ミー子」。ここから私のヤギ中心人生の幕開けです。

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