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秋の芋煮会

実家に帰ってきたのは、庭で開催する芋煮会に参加するためだった。
うちは一家でアウトドア派で、キャンプが共通の趣味なので道具なら一式揃っている。

今日はとにかく風もなく秋晴れで、芋煮日和だった。
兄夫婦と姪っ子、両親と、私。
楽しいけど、私の横には誰もいないのが毎回少し寂しい気持ちになる。
近所に住む叔父さんや、従兄弟やその娘の3歳児もきて、庭で犬と子供の追いかけっこを焚き火をしながら眺めていた。
みんなが笑ってる。穏やかでとても幸せな瞬間。
なのに、やっぱりどこか私は不安になる。

私にも誰かと夫婦になって、子供を産んで、両親をこうして喜ばせることができる日が来るのかな。そんなことがとても難しいような気がしてしまう。両親が元気なうちに、こうして庭で遊べるのかな。その時私はもうこの家から出て、別の姓を名のっている。今の家族から戸籍上は出てしまうんだなと思った。兄嫁がそうして家族に入ったように。

あの幸せな夕暮れに、きっとわたしだけ、ひそかにそっと、すこしだけ不安になっていたなんて、誰も誰にも気づかれなかっただろうな。

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