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大ミッドレンジ時代におけるミラーの考察 〜チャンピオンズカップファイナルサイクル2を終えて〜


0.はじめに

先日チャンピオンズカップファイナルサイクル2が終了した。

Twitter PlayMTGアカウントより


優勝したのは佐藤レイ氏の《セレズニアポイズン》であったが、使用率上位から眺めると《グリクシスミッドレンジ》、《エスパーレジェンズ》、《ジャンドミッドレンジ》、《白単ミッドレンジ》と実に50%超のプレイヤーがミッドレンジデッキを選択しており、環境としては大ミッドレンジ環境であった。15%ほどいたリアニメイトデッキもその(おそらく)全てが《鏡割りの寓話》に序盤を頼っていることをみると、参加者の体感として2/3程度の相手には対ミッドレンジとしての戦い方をさせられたのではないかと思う。私も1プレイヤーとして参加し初日を戦い抜いたが、実際に7回戦中4人がこのような相手であり、かなりミッドレンジは多かったという所感であった。

考えてみれば、ここ最近のスタンダード環境は《グリクシスミッドレンジ》を始めとするミッドレンジが先頭を走り続け、常に環境を支配していたように思う。
実際私もDMUから始まる(もっと前からあったのかもしれないが)大ミッドレンジ環境では押しも押されもせぬTier1である《グリクシスミッドレンジ》を使いながらサイクル2予選期間を過ごしていた(※尤もエリア予選は《青単テンポ》で抜け、本番で使用したのは《エスパーレジェンズ》であったが・・・)。
自分としてもここまでミッドレンジに心血を注いだことはなかったので、今回自分が考えたことを備忘録として残し、少しでも皆さんに還元出来ればという思いで筆をとろうと思う。


1.3マナ域がミッドレンジを定義する


ここ最近のスタンダード環境がここまでの大ミッドレンジ環境となっていた理由は
①2マナのスペルに強力かつ汎用性が高いものが多い(かつ1マナのスペルにもそれなりに有用なものが多い)
②《鏡割りの寓話》や《婚礼の発表》に代表されるような強力かつ前向きな3マナのカードが環境に複数存在する
というのが挙げられると考える。特に②の強力な3マナのスペルが存在するというのは環境理解の鍵となり、序盤はお互いにここを巡る攻防になり易い。
ここでは3マナ域の代表である《鏡割りの寓話》を焦点に考えてみたいと思う。


環境を定義する最強の3マナ

今更説明するまでもないが、《鏡割りの寓話》は3マナというコストパフォーマンスを明らかに超えるプレッシャーを相手に与える。
1章では2/2という無視しづらいサイズかつアタック時に宝物を供給するという典型的な「無視すると負ける」クリーチャーを盤面に出す。
2章は2枚までディスカード後捨てた枚数分ドローというよくある赤のルーティング能力であるが、試合に再現性をもたらす+盤面への解答を探しに行くというミッドレンジでは喉から手が出るほど欲しいものだ。
3章では調整版《鏡割りのキキジキ》とも言うようなこれまた典型的な「無視すると負ける」システムクリーチャーを盤面に残す。

今では伝説なのが弱いと感じる・・・

「無視すると負ける」クリーチャーを2体供給するため、対応する側はほとんどのケースで2回分の除去を要求されることになる(全除去でまとめて除去する場合はゴブリンシャーマントークンに2回殴られて宝物2個を差し出しているので展開としては厳しそうだ)。

解決した段階で除去2枚を要求されるのであれば、通る前に対処してしまえばいいという考えになるのは自然なことで、多くの《グリクシスミッドレンジ》はこのような損な交換をしないために《かき消し》や《否認》のような打ち消し呪文や《強迫》のようなハンデス呪文を採用している。
序盤に《鏡割りの寓話》を通す通さないという攻防になった際に、相手がマナをオープンにしているところに《鏡割りの寓話》をキャストするかどうかはもちろんプレイヤーの自由だが、ハイリスクハイリターンであることを自覚しないといけない。すなわち、《鏡割りの寓話》を打ち消されたら返しのターンで相手の《鏡割りの寓話》が通る可能性があるということを考えながらプレイしないといけない。
打ち消されなかったとしてもゴブリンシャーマントークンを除去(《削剥》、《喉首狙い》など)されて、返しのターンで相手には《鏡割りの寓話》とゴブリンシャーマントークンがいる有利な場に入れ替わる可能性もあり、これはかなりあり得る話である(余談だが、これを私は一手損角換わりと呼んでいる)。

上記のやり取りの際に肝となるのはやはり除去や打ち消しなどの2マナスペルであり、2ターン目のお互いのプレイヤーのプレイが大事になる。先手はリスクなく2マナから動くことが出来るのに対して、後手は《勢団の銀行破り》や《税血の収穫者》で動くと返しにノーリスクで《鏡割りの寓話》が通ってしまう(クリーチャーを出した場合は除去→《死体鑑定士》と動かれ、より拙い展開となる)。そのため、後手は基本的には2ターン目に動かないことを強いられ、このミラーは先手有利である。ただ、一方がこのやり取りを理解していないと後手にも序盤から捲り目が出てくるため、注意しないといけない。


2.《グリクシスミッドレンジ》ミラーにおける各採用カード雑感


《グリクシスミッドレンジ》ミラーは上記のように《鏡割りの寓話》を巡る攻防になり易いが、もちろんそれ以外にも差が出る部分は多い。《グリクシスミッドレンジ》を使っていて、ミラーでの扱いが難しいと感じたカードそれぞれについてコメントしていく。


ⅰ.《税血の収穫者》


名誉神話アンコモン

2/3/2という優秀な高スタッツと除去を内蔵しており、さらには血トークン生成とまさに令和のスペックだが、ミラーにおける扱いは難しい。先攻2ターン目にはリスクなくプレイ出来るが、後攻2ターン目にプレイすると上述のように《鏡割りの寓話》と《死体鑑定士》の両方を強くプレイされてしまう可能性があるため、基本的には出したくない。その後のターンにおいても除去された瞬間から《死体鑑定士》のタネになってしまい、プレイするターンがなかったりする。そのため、後手番では減らしたいことがほとんど(自分は0にすることが多い)だと考える。ただし、先攻2ターン目に《勢団の銀行破り》がプレイされたタイミングだけ、後攻2ターン目にプレイすることが肯定される。というのも先攻3ターン目の《鏡割りの寓話》のゴブリンシャーマントークンへの“置き除去"となるからだ。



ⅱ.《かき消し》

スタンダードだとかなり使い易いソフトカウンター

これも実質環境を定義するカードであろう。カードプールに存在する限りは見えない《かき消し》を意識しながらプレイしなければならず、煩わしさもある。《グリクシスミッドレンジ》がミッドレンジである以上、より重いデッキには弱いはずなのだが、このカードのせいで多少の耐性を獲得しているのは恐ろしい事実である。ここから逆算するに《グリクシスミッドレンジ》ミラーは古典的なミッドレンジミラーのように「より重いカードで勝つ」という戦略が成り立ちにくいことを意識する必要があるように思う。わかってる《かき消し》は弱いので、サイド後は《否認》などの確定カウンターに替わることも多い。


ⅲ.《絶望招来》


マナシンボルお化け

語るほどでもないだろと思われそうなカードだが、ことミラーにおいてはそれなりに味わいのあるカードである。1.でも触れたように《鏡割りの寓話》は相手に除去2枚を強要するカードではあるが、このカードはミラーにおいて唯一、アドバンテージをとりながら《鏡割りの寓話》を処理出来るカードである。そのため、このカードが存在することで《鏡割りの寓話》を巡る攻防がさらに複雑になる。というのも後攻4ターン目の《鏡割りの寓話》を先攻5ターン目に綺麗に対処出来るため、先攻4ターン目に《鏡割りの寓話》で突っ込み易いという大義名分をもらえているのである(後手が《鏡割りの寓話》+《呪文貫き》を持っているのであれば天晴れ)。これもミラーの先手有利説を支持するものである。
また、これの存在がミラーにおいてPWが信頼されない理由でもある(なので、もはや陳腐化したミラー用に重いPWをとるという戦略は避けるべきだと考える)。


ⅳ.《黙示録、シェオルドレッド》


登場時から評価上りっぱなし

生き残った時のバリューが高いため、サイド後もミラーで残したくなる気持ちはわかるのだが、《喉首狙い》でも《絶望招来》でも除去されてしまい、盤面に干渉しない4マナソーサリーアクションと隙が大きいところもあり、不要牌となってしまうリスクが大きく、ミラーでは抜くことをオススメする。ただ、ミラー後手で相手が《剃刀鞭の人体改造機》を複数枚入れている場合、ライフゲイン+壁目的で1枚程度入れておくのは捲り目をつくるためには検討しても良いかもしれない。


3.最後に


ここまで強力かつ小回りが効くミッドレンジデッキが今後も登場するかどうかはわからないが、今後も3マナ域のカードが強力にデザインされ、2マナ域に有用なリアクションカードが刷られ続けるのであれば、今回に類似した環境が訪れるかもしれない。環境のキーカードをきちんと理解し、立ち回り方を練るのがミラーで勝つために肝要であろう。


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