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豊かな海の復活目指しアマモの種をまく

かつて日本有数の漁場として知られた新上五島町ですが、近年は漁獲量の減少などにより、町の基幹産業であった漁業が衰退傾向にあります。漁獲量減少の大きな要因の一つが「磯焼け」です。

磯焼けは、海藻が生茂る藻場もばが失われていく現象で、上五島だけではなく全国各地の沿岸で磯焼けが報告されています。

15年間で魚の産卵場所となる藻場が減り、磯焼けが広がっている


磯焼けを食い止め、豊かな藻場を復活させようと立ち上がったのが、地域おこし協力隊の梶山寛泰かじやまひろやすさんです。

    地域おこし協力隊 梶山寛泰さん
みJOY取材スタッフ 竹内紗苗

梶山さんは、魚やイカの産卵場所にもなる海草「アマモ」が繁茂するアマモ場の再生に取り組んでいます。梶山さんに、活動を始めたきっかけやこれまでの成果について聞きました。


Q.アマモに興味を持ったのはなぜですか

生茂るアマモ

普段は有川町漁協内で仕事をしています。漁業者の方々から漁獲量が多く活気があった時代のお話を聞くと、現在との変化として温暖化や磯焼けによる海藻減少などの話がよく出てきます。以前漁協の仕事で、素潜りでのガンガゼ駆除作業や海中調査を行う機会が何度かありました。

一見すると透明度が高く視界を遮るものが無いので綺麗な海に見えます。しかしこれが、昔生えていたはずの海藻や生き物が少なくなってしまった磯焼けした海なんだというのを肌で感じました。

自然の物でゼロから1を生み出す事はとても難しい。海藻が無くなる前に自分の立場としてできる事は無いか考えて調べ出していた時に、有川の白い砂浜の先に黒く見えるアマモが目に留まり「これだ!」と思いすぐに、有川地区で藻場調査を行っている長崎大学のグレッグ教授の元を訪ねました。


Q.具体的にはどのような活動をしていますか

アマモは海藻ではなく海草といって「うみくさ」と書きます。秋に芽を出し、冬に根を張り育ち、春に海中で花と種子を作り、夏の間種で過ごすというイネのような種子植物です。

陸上での管理も可能で、種の採取から植え込みまでを年間通しての体験型イベントとして、地域の方々と一緒に実施しています。昨年は有川地区に約3,000個のアマモの種を植えました。


Q.成果や手応えはありましたか

体験イベントで子ども達と一緒にアマモを植える様子


昨年採取した種の発芽を確認し、地域の子ども達と一緒に管理や植え込みまでできた事は一つの成果かなと思います。あとは発芽したアマモが子孫を残してくれた時点で成功だと思っています。

最近では他の地区でもアマモ場再生の取り組みを実施したいと、相談を受ける事があります。


Q.今後の目標があれば教えてください

まずは再生した藻場が、生き物の産卵場や生育場となること。そしてアマモの光合成により、海中への酸素供給量を増やし、海の環境を整えられることを目指しています。上五島の環境に合った再生の方法が確立でき、目に見えて生き物が増えてきたら、貴重な資源として注目してもらえたら嬉しいです。

またアマモは、温暖化対策としてもCO2を吸収してくれるブルーカーボン生態系としても期待が持てます。アマモ場の再生活動を活かして、他の海藻でも増やす取り組みが出来ればと考えています。


写真・文 竹内 紗苗

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