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Let Us Cring Together~タクティクスオウガリボーンプレイ感想~

前置き

 この記事はスクエアエニックス社の"TacticsOrgaReborn"をプレイした感想及び個人評です。
 もう発売されて1年近く経ちますし、元々のSFC版からは28年(!?)も経っているので基本的にネタバレ上等になります。
 初見で楽しみたい方はブラウザバックしてください。


はじめに

 MHRiseやポケモンSVの裏でちまちまと、ずーっとプレイしてたタクティクスオウガリボーン、ようやく自分の中でクリアと言えるところまでやり込めました!当然トロコンも完了
(と言うか、このゲームにおいてトロコンはやりこみのスタートに過ぎない)

総プレイ時間550時間(AI自動周回含)

 ということで、今回も感想評価をつらつらと。
 ちなみに自分は、SFC版(以下原作)はLNCの3ルートクリア済で、運命の輪(PSP版/以下前作)も今回と同じくらいやり込んでる人です。タクティクスオウガ大好きなので、その分贔屓目が入ってる可能性は大いにありますのであしからず。
 というのも、SNSでは過去作のプレイヤーから低評価が続いてるのですよ、本作は。本作への低評価は、正直思い出補正が強いと思うのよね…

評価

総合評価 80/100
 システム     75/100
 シナリオ     85/100
 キャラクター   90/100
 難易度・バランス 60/100

システム

 基本はSFCの戦闘システムをベースに、PSP版の下記2システムを踏襲。更にクラス別レベル性からキャラ別レベル性に戻した上で、いくつか新システムを追加してバランスを調整したような感じになっている。

(1)C.H.A.R.I.O.T

巻き戻していろんな方法を試せる機能

 50手まで遡ってやり直しできる。シミュレーションゲームでは禁じ手と言われる機能で、これを搭載した前作はその点だけでチャレンジャーだおともったほど。
 前作・今作ともにこの機能が前提になっているところが大きいので、縛ると難易度的には激むずになる。
 歯ごたえのあるシミュレーションと言えるけど、逆に言えば「ぱっと見理不尽な状況で攻略しなければいけなくなる」ので、前作から賛否両論だった点である。
 個人的には"難しさと間口の広さの両立"には一つの最適解だと思ってるので、評価したい点です。使うかどうかはプレイヤー次第なので、邪道と思うなら使わなければいいのだしね。
 「これ使わなきゃクリアできねぇじゃねぇかクソゲー」と言うには、いくらでも"対処のしようがある難しさ"なので、そういう意見については「難しいゲームあわなかったんだね、うんうん」と生暖かく見ればいいと思った。
 ただ、この機能前提で敵のレアアイテムのドロップ率が軒並み低めなのはちょっといただけないかなとおもう!

(2)W.O.R.L.D

過去に遡って別ルートにも挑戦できる

 こちらはシナリオを巻き戻しして過去のシナリオに再挑戦したり、回収しそこねたアイテムやイベントを回収したりできるシステムで、これも前作からの機能。
 タクティクスオウガは原作の時点でLNCの3ルート分岐をするけど、当然シナリオも変化して仲間になるキャラやイベント・武器防具が変化してまっていた。全部集めるのは無理!ってなってコレクター的には歯がゆかったので、この機能はとてもよい改善点だと思っている。
 また、この機能を時空を移動して過去を改変し、ifの分岐を作り出すと解釈して、聖騎士ランスロットを救えるように、そして全ての始まりの"あの地へ"行けるのは原作ファンとして、とても嬉しかった。
 (もっともこれは前作からなので、リボーンの評価ではないけど)
 アイテム・キャラクターをすべて集めることができるのは、コレクター系ゲーマーとしては高評価ポイント。

(3)バフカード

 ここからは今作からのシステムの評価。
 マップ上にランダムで発生する"バフカード"というものがあって、これを取得すると戦闘中に大幅なバフが入るというもの。

  • 物理攻撃UPカード

  • 魔法攻撃UPカード

  • オートスキル発生率UPカード

  • クリティカル率UPカード

  • 魔法回復量UPカード

  • バフリセットカード

 バフカードの種類は上記の6種類。
 (厳密には"バフカード廃棄"はリセットカードという別物扱いだけど、ものは一緒なので割愛)
 1キャラにつき全部で4枚まで保持可能で、5枚目からは古いカードが押し出される形で消えていく。
 今作の戦闘システムの根幹を成してて、効果が非常に高いのがポイント
特に攻撃UPの2種は1枚に付き1.5倍くらい上がる。4枚揃えたら3倍まで跳ね上がる。ここにマイティインパクトでクリティカルを重ねたら6倍ダメージというロマンの塊!
 なんでこれが不評なのか?というと、おそらく2点あると思う。

<1>戦術的に"待ち"と相性が悪い
 この手のシミュレーションゲーにおいて"待ち"というのは、安定した手堅い―言い換えると退屈で面白みのない戦術である。
 なので、ゲームとしての面白さを保とうとすると待ちをすると不利になる状況を作り出す(ターン制限とか救出ユニットとか)のだけど、今作はこのバフカードがその役割を担ってる。
 基本的にバフカードは前線にポップするので、"待ち"をしているとバフカードをガッツリ載せた敵に襲われる。そうなるとバフによるステータス差で一方的にボコられがちなので、それが不満につながるのかなと。
 いや、前に出ればいいんですよ。このゲーム役割を理解してジリジリと攻め合うゲーム性なので、爽快感はないけど。

<2>後半のボスがバフカード4枚所持でスタートする

終盤はボスが攻撃UP2枚重ねでスタートとかザラにある

 これは個人的に「後半ボスだしそりゃなぁ」だし、特に暗黒騎士団のコマンドとかが単にレベルキャップより2つ高くて専用必殺技持ち、というだけでは強さが割に合わないと思ってた人なので。
 なにしろ設定的には「一般兵は鎧袖一触」「ネームドですらタイマンなんて無理」な相手なので、暗黒騎士のコマンドは。彼らに匹敵するのは各陣営片手で数えるほどのはずなんですよ、本来は。
 ウォルスタ陣営ですら、ゼノビアの5人にデニム・ヴァイス・カチュア・レオナールあたりが加勢してコマンド2人のライム侵攻をなんとか押し止めるような敵だと考えると、この強さも当然といえば当然なんですよ。
 まぁいきなり物理UP2枚魔法1枚MP回復1枚はキツイのわかる。ここはアイテムデバフが「攻撃ダウンは物理か魔法の片方だけ」でなければなぁ…とは思った。
 とはいえ、キツイのはきつくてもやりようはあるバランスにはなってたので、悪い点ではないと思うのです。Chariotもあるのだし。
 間口が狭くなっちゃうのは、それはそう。だけど"歯ごたえのあるバランスのゲーム"のつもりで作ってるなら、これは十分ありだと思うのです。
 それに他のバフカードをわざと取らせたり押し込んだりして上書きさせちゃえばいいんだしね

 以上のような2点が、バランス悪いと叫ばれてる要因なのかな、と。個人的には"バランス崩壊"ではなく"難しいレベルでバランスが取れている"用に見えるのです。

(4)レベルキャップ

 シナリオの進捗に合わせてレベル上限に制限がかかるシステム。
 後述のレベルシンクやアイテムシンクもそうなんだけど、今作は特に「ガチンコでプレイしてくれ」という意志をすごく感じる。
 賛否の否は、多分この「ガチンコでやってくれ」に非常に窮屈感を感じてるんだと思う。バランス自体は非常に練られてて、真面目に頭回転させながらプレイするのにちょうどよいバランスになってるんだけど、救済措置のなさが否定意見に繋がってる感じがするのよね。

(5)レベルシンク・アイテムシンク

 個人的に今作最大の問題点。
 主にW.O.R.L.Dで時間軸戻したときの未プレイステージや、やりこみダンジョン"死者の宮殿"において、本来の適正までレベルや装備性能を下げる機能。
 未プレイステージにおけるこれらの機能はともかく、いくらやりこみダンジョンとはいえ、最終的に周回必須な死者の宮殿でレベルの制限をかけるのはやりすぎだと思う。
 たしかに最終的には死者の宮殿で集めたチャームによるステ底上げを利用して、オート周回をするのだけども、それまでがやりこみにしてもストレスが強い。正直レベル・アイテムシンクは半分死に機能でいいから任意ON/OFFで良かったと思う。

シナリオ

 原作の時点でほぼ完成したシナリオだったので完成度は保証済。
 賛否両論である本編中の追加シナリオは、追加キャラとしてネクロマンサーのクレシダやバッカニアのアゼルスタンなどのサイドイベントも言うほど原作の感じを壊してないと自分は感じた。
 特に、Lルートにおけるジュヌーンやグアチャロ・ディダーロのイベントや、Cルートのザエボス・二バス・クレシダ関係のイベントなどは、極めて高評価をしてる。
 島の人口の半数以上を占めるにも関わらず、ザエボス周り以外は描写が全然貰えなかったガルガスタン勢力の内情を追加描写してるのは、とても良いと思ってる。
 …前から存在意義の薄かったNルートの価値がほぼなくなってるって?それはそう

 そしてDLCで追加された追加エピソード4つ。
 ユーリア、ウォーレン、ランスロットを仲間にできるのも嬉しいけど、やはり"始まりのゴリアテ"へ時を遡って挑めるのはやはりアツい。
 ただし、今作の"十二人の勇者"シナリオはクリア自体がやりこみのレベルだけど…

キャラクター

 こちらは前作から対して変わってないので詳細は省略。
 前作追加キャラクターはよくできていて、自分はラヴィニスにアゼルスタン、クレシダはとても気に入っている。
 また改変を受けたキャラも、前作はサラッと流されたジュヌーンやデボルトのみならず、敵方のグアチャロやディダーロ、モルドバなどが掘り下げられててとても良かった。
 正直原作でのガルガスタン陣営は二バスとザエボスばかりがピックアップされて、ジュヌーンやグアチャロといった面々どころか、トップのバルバトス枢機卿すら掘り下げが大してされていなかった。
 前作と今作でガルガスタンの内情が掘り下げられて、この内戦における実情に深みが増したと感じている。
 惜しむらくは、バクラム陣営にももう少し掘り下げが欲しかった所だけど、元々暗黒騎士団とブランタ司祭の内情だけでかなり時間を取っているので難しかったのかもしれない。

 また今作からSS版以来のボイスが実装されて、重厚なシナリオをフルボイスで楽しむことができる。
 聞いた瞬間はまり役と確信する人もいれば、最初は違和感あったけど進めるうちに違和感が消え去った人もいるけれど、概ね演技もよく声もあっていて楽しむことができた。
 …唯一の例外は水のオリビア…縁起が悪いのではないのだけど、さすがに島本須美さんが演じるには16歳の少女は厳しかったように感じます…島本さんがわるいわけではない、相性が悪かったのだ…

難易度・バランス

 ここの評価が一番難しい。
 上記のシステム面で前作から相当テコ入れが入っていて、ゲームとしては基礎は共通しつつも完全に別物となってる。

 原作では弓や召喚魔法が強くて、かつレベルでゴリ押し可能。またハボリムのペトロクラウドやアロセールの雷神の弓などのバランスブレイカーもあって誰でもクリア可能なバランスだった。これは難易度を下げるものの、自分で縛れば融通がきくところもあって遊びの広さにはなっていた。
 ただしバランス的に荒削りすぎるのも確かで、ジャンルを作り上げた作品なのもあってしかたないけど、今で見ると非常に隙の大きいバランスであり、ヌルゲーと言っても差し支えないと思う。
 ただし死者の宮殿と一部救出クエストは当時からエグかった…(主にAIのせいで)

 一方で、前作の運命の輪はジョブレベル制やスキル習得の経験値バランスなど、戦術の幅を増やそうとする試みは随所に見られたけど、正直バランスとしては悪いと言わざるを得なかった。
 スキル経験値が低すぎて1つ育てるのもままならず、ジョブレベル制のせいでレベルボーナスが偏るため、強いキャラを作ろうとすると多彩なジョブをあえて絞らざるを得なくなっていた。
 C.H.A.R.I.O.TやW.O.R.L.Dといった画期的なシステムは評価できるが、とにかく育成周りのシステムが全てのネックになって良作と言いたい所を阻害していたように思う。

 これら2作をふまえた今回のリボーンは、ジョブレベル制の撤廃やスキル経験値の調整などもちょうどよい塩梅だし、バフカードによる戦術のランダム性もつよく、戦術ゲームとしては高いレベルでまとまっていると思う。
 特にタンク役のナイトやLサイズユニットの調整が良くできていて、今までの"相手より先に火力を発揮できる状態を整えて一気に押し切る"という安定戦術一本にならずに済んでいる。Lサイズユニットも大活躍だしね!
 "タンクや前衛アタッカーの混じった前線を崩さないよう維持しつつ、綻びた所を丁寧についていって徐々に前線を押し込んでいく"という"タクティクス"の名にふさわしいバランスだった。
 終盤に召喚魔法が解禁されると"いかに丁寧に各個撃破して戦線を押し込ませないか"になってくるけど、基本のバランスはあまり変わってないし、難易度低下は起こしていない。これは評価したい所。
 ここにバフカードによるランダム性や強力なボスの扱いなどを踏まえると、とても硬派な戦術ゲームになったと言っていいと思う。
 えてして硬派な難易度でじりじりとした戦いをするゲームになったので、合わない人は合わないだろうなぁ、と。

 と、ここまで言っておいてなんだけど、そういった要素を踏まえてもレベルシンク・アイテムシンクはその…正直いらんかったなぁと思う…
 最後のシナリオ"十二人の勇者"の敵がめっちゃ強い(Lv50に対してLv70で襲ってくる)ので、そのために死者の宮殿周回が必須になってくるから余計に、死者の宮殿でのレベルシンクが余計だなぁと…
 加えて最終装備や最高ランクの魔法もドロップなので、数集めるためにもぐるぐる回らなきゃいけないので、それならせめてドロップを確定にしてほしかった。ステUPのためのチャーム獲得条件がC.H.A.R.I.O.T未使用でのクリアなのもあるからなおさら…
 ここだけが大きな不満点、ホントに。
 他は強いて言えば、W.O.R.L.Dを駆使してると各イベントのフラグ達成状況が都度更新されていって混乱するので、それを確認できる方法があれば嬉しかったなぁ、と。

総評

 2回目のリメイクで、しかも前作が否よりの賛否両論だったせいでかなりの注目度があったりした中での発売だったけど、十分良作と言える結果だったと思う。自分が微妙と思ったレベルシンク・アイテムシンクも含め、前作・今作の新要素はチャレンジャブルなものであったし、正直前作は賛否両論も宜なるかなと言った印象だった。
 けど今回は様々な欠点はありつつも、リメイクとしてはかなりいい塩梅にまとまっていて非常に良かったと思う。
 原作のタクティクスオウガ自体が、当時のプレイヤーに意識的・無意識的に特別視されている作品でもあるので、正直どうリメイクしたところで否定意見はなくならなかっただろうし。
 スクエニのリメイクとしては聖剣3と並べていい良リメイクだったのではないかと思います。
 とても硬派なバランスなので、「せっかくのシナリオを見てもらいたいから、もっと手軽にクリアできるバランスを!」という意見はわかるけど、それは本作が良作かどうかとは別問題じゃないかなーと。

最後にたどり着いた場所が父の腕の中なのは本当に泣ける…

 高難易度に抵抗がなく、タクティクスオウガをやったことがない人はぜひ挑戦してみてください。20年以上前の作品がベースとは思えないほど、いいゲームだと思うので。

以上、タクティクスオウガリボーンのプレイ感想でした!

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