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片耳難聴の私

日常には音が溢れている。だから、音があることが当たり前でそれが普通なのだ。

普通すぎて気づかない。まるで空気のようにそこにある。

失くしても気づかなかった。聞こえなくなったのに気づいたのは、何気ない友人の一言だった。
「話しかけてるけど、聞こえてる?」

それまでまったく気がつかなかった。片耳が聞こえなくなってももう一つの耳で補完してしまう。聞こえなくなったことに気がついたのは聞こえなくなってからだいぶ後のことだった。

父に連れられ耳鼻科に行くと、突発性難聴と診断された。聞こえなくなって時間が経つほど聴力の回復は難しいと言われた。そのときには発症から時間が経っていたので、聴力の回復は見込めないとのことだった。

そんなふうに言われた後で耳鼻科の先生から
「飛行機の操縦士にはなれないかもですね~」と呑気に言われたことで心は楽になった。

でも、ふとした時にもしもう片方の耳が聞こえなくなってしまったら…と思うことはある。

夕日を眺めていて、どこまでもつづく空に果てしなく深い闇を見てしまってそこから抜けだせなくなってしまうような感じがするのだ。

そんなことを考えだすと、宇宙の彼方に吸い込まれてしまいそうで、気が遠くなる。

片耳を失ったことで、得たものもある。音楽を聞けることが幸せだ。人と話すことが幸せだ。そんな日常に幸せを感じるのだ。

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