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フランダースの犬は幼いころの私に人間のリアルを教えてくれた。

ネロの末路を知っても、見たくなるのが不思議だ。なぜこれほどまでに私の心をつかんでいるのかわからない。

ただ、一つ言えることは、ネロの末路に興味が無いからかもしれない。アニメでもTVドラマでもノンフィクション小説でも恋愛映画でも、終わりはハッピーエンドか、バットエンドで終わる。そんなことは私に言われないでも、誰もが分かる当たり前のことだ。

私はとうに結末を知ることには飽きている。結末よりも、それまでにどのような過程を経て、主人公がどんな境遇に置かれ、どのような人々と交流し、そして救われ、見放されるのかに興味がある。

そこで、ストーリーを考えてみると、ネロは、結末よりも、残酷な現実に何度も直面している。

アニメのストーリーはこちら。

 1870年頃のベルギー・フランダース地方に、絵を描くのが得意な少年ネロと祖父ジェハンが貧しいながらも人々の好意に助けられながら暮らしていた。ある日、ネロは金物屋の主人に捨てられた荷車引きの犬パトラッシュを道端で助け、家に連れて帰り一緒に暮らすことにする。元気になったパトラッシュは牛乳運びの仕事を手伝い、いつもネロと一緒に過ごすようになった。しかしジェハンは無理がたたり亡くなってしまい、ネロはたった一人きりになってしまう。貧しいネロに世間の風当たりは厳しく、願いだった絵のコンクールにも落選してしまい、とうとうネロはパトラッシュと訪れた教会のルーベンスの絵の前で静かに天に召されていくのだった。出典:日本アニメーション株式会社 HP

描かれるのは、牛乳運びで生計を立てなけらばならない貧しい暮らし、ネロにとって唯一の家族であるジェハンの死、絵のコンクールの落選による挫折、そして、物語のクライマックスで描かれる、火事の犯人にさせられるという不運に見舞われるなど、壮絶なシーンの数々だ。

もちろんアニメの世界だといえば、それまでの話だが、幼い子供にみせる作品としてはなかなかヘビーである。

それに加え、このストーリーはハッピーエンドで終わらない。つまり、このフランダースの犬という作品は、今でいう後味の悪い作品だった。

それなのに、今でも私がこの作品に惹きつけられるのはなぜだろう。

やはりハッピーエンドで終わらないからなのだ。いや、この作品はハッピーエンドで終わらないからいいのだ。

幼いころ読んでいた絵本や小説には、ディズニー作品をはじめとするハッピーエンドで終わるファンタジー要素が強い作品が多かった。その点、フランダースの犬はファンタジー要素がほとんどなかった。いわば、はじめて物語を読んで、人間のリアルに触れた作品だった。

リアルで、生々しくて、見たくないものを見せることは、大人が子どもにしたくないことの一つかもしれない。

フランダースの犬はそういった大人たちの目をかいくぐり、子どもたちに人間のリアルを教えてくれたのだ。


参考



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