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このつかの間のために

豆を挽いて
コーヒーを淹れて…
わたしのちいさなカップに
注ぎます

手の中におさめると
コーヒーの香りがして
自分の時間が
そっと
できあがります

ほんのつかの間

ちいさなカップ一杯分の
ほんのつかの間

このカップを探していた自分を
思い出します
心動くものを
つくってくれる人達がいることに
ありがとうと思います
心動く自分に
助けられることがあると
思い出します

手の中におさめた途端
そっと
自分に帰ります

この時間のために
このカップを
わたしは手元に
残したのでしょう

ある日
歩く道が変わって
他のカップたちは
新しい持ち主さんに
見つけてもらい
無事にそちらに
引っ越して行きました

たとえ歩く道が
変わったとしても
自分が何を大切に
思ってきたのか
思っているのか…
手元に残した
ちいさなカップが 今
自分をあたためてくれます

カップの模様に
にこにことして
このカタチはまた
わたしを嬉しくさせるのです

この
つかの間のために

なくては生きてゆけない
このつかの間のために

わたしはあの日
このコーヒーカップを
選んだのでしょう

そして
このつかの間が
いつまでもあるように、と。

絵はがき2024©️Mifu Sato

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