心の中にある庭
絵本の最後のページを開きます。
すると、そこには、
文章のない絵だけのページ。
ふわあと広がる物語の余韻。
じんわり沁みこむ物語の余韻。
ページを開いたまま、
好き勝手に絵の中に入り込んで、
自分の居心地のいい居所を発見します…
時には山に向かってオールを漕ぎ、
時には月を見上げてニコニコする人になり、
時には木の枝に座ってひとり、
賑やかな下の様子を眺めます。
そんなことをしていたら、いつしか、
絵本のある1ページが、ある景色が、
自分の心の中に、
庭をつくっていました。
私にとって、文章のない
絵本の最後のページは、
美術館でみる絵や、
額縁に入った絵とはまた違う、
特別な絵でした。
幼い頃から、そして今も。
心の中に庭があると、
大変な世の中を生きてゆくのに、
少しばかり都合が良いのです。
この庭は、
かなしい時はかなしいままに、
行っていい庭です。
涙を溜めたまま、
やわらかな花びらの白い花を、
丁寧に植えます。
かなしみは、貴重です。
心がなんだかザワザワ、
イライラする…こういう感情は、
瞬発的にどうしても起こるもの…
コンニャロー!と思いながら、
庭にやってきて、コンニャロー!
と言いつつ、草を植えます。
よい香りのする草を。
できれば、ザワイラ草は、
よい香りのする草に変えてやりたい。
この庭は、一生懸命な自分を、
頑張ってる自分を、
一番よく知っているから。
うれしいもたのしいも、
この庭にはもちろん、
たくさんたくさん植えます。
せめて心の中の庭には、
やさしくてごきげんよく、
穏やかな自分を取り戻す居所を。
誰に遠慮することもなく、
思う存分持っていたい…と。
この記事の絵は、
ある日、そんな思いで描いた
絵本の最後のページです。
文章のない絵だけのページです。
*
毎月描き続けている絵はがき。
詩のようなものはついておりますが、
絵だけで、好き勝手に
遊んでいただけたらとも、
思っています。
絵本の中のある1ページのように…。
小さな絵たちが、
いつかどこかで誰かの、
心の中の庭の片隅の、
雑草や苔や蝶に
なることができましたら、
幸いです。
人々の心の中の庭が、できれば
穏やかな庭になりますように。
そう願いながら。