《私は、10年遅く生きている。①》


ある時期から薄っすらと感じている。
私の人生は同世代の友人より10年遅いのだ、と。


10歳で父の転勤により福岡から大阪に転校した私は、大阪に馴染むことが出来なかった。
実際は割と誰とでもそれなりに話せるし、その場の人間関係を築くのは得意だったように思う。


その場限りの人間関係、は。



鮮明に覚えている。
毎年夏休みにこども会で行っていたキャンプの写真を友達から貰い、
来年もみんなで行こうね!」と話した日の夜、


その来年が私には存在しないと親から告げられたことを。


5歳上の兄の高校入学に伴い、小学5年生から転校することになった。
1年前から父が単身赴任していたし、逃すとタイミングが難しかったのも大人の今なら頷ける。


10歳の私にはその選択が恐怖にしか思えなかった。
自分の選択の余地もなく、居場所を奪われる感覚。


若干10年の人生で必死で積み上げたものは、こんなに簡単に崩れ去るのか、と。


下半身に力が入らない。
自分が泣いていることだけは理解できる。


思い返せば、この時から"私"の呼吸は乱れていたように思う。


小学校は地域柄転校生も比較的多かったのもあり、沢山話しかけてくれる友人のおかげでなんとなく過ごせた。
転校初日に博多弁を笑われて大阪が怖くなり、しばらくは同級生に敬語を使っていたというオプション付き。


休み時間、放課後は友達と遊び、暗くなっても中々帰って来なかった"私"。
ピアノ、プール、書道、ダンスと沢山習い事をしていた"私"。


大阪でも習い事を続けるかと母に問われ、答えていた。


「しない。」



多分、これが最初の過呼吸。



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