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天使は死体だった - 0X1=LOVESONG の歌詞が STAND BY ME を愛するわたしに刺さったわけ

TOMORROW X TOGETHER の The Chaos Chapter: FREEZE のリリースから約1年、すでに次のアルバムの告知がされファンは毎日大騒ぎというかなり今さらなタイミングで The Chaos Chapter: FREEZE のアルバムタイトル曲 0X1=LOVESONG (I Know I Love You) にハマっています。(以下 0X1=LOVESONG とします。読み方はゼロバイワンラブソングです。)実はこの曲あまり聞いていませんでした。別に嫌いだったわけじゃないんですけど、沼落ちしてから半年間、過去曲あさるのに忙しかったのと、過去曲で一番好きな Cat & Dog とあまりにも違う世界観だったので気持ちが追いついてきてなかったっていうのがあります。

それが 0X1=LOVESONG ラバーのFFさんのアツいツイートを毎日見ているうちに気になってしょうがなくなってきました(ほんとに情熱に圧倒されました!!)。また、この曲は最愛のナムジュンが作詞にかかわっているためいつか歌詞をよく見てみたいと思っていたこともあり、ことし3月ようやくしっかりと聞いてみました。聞いたらもうすぐにこの曲のとりこになりました。

歌詞には結構抽象的な言い回しがあって(歌なんてみんなそうかもしれないけど)どんな意味かなあと考えていたとき、ひとつのセオリーが頭の中に浮かびました。それは、0X1=LOVESONG の天使は STAND BY ME の死体だというものです。

(注: 以下 STAND BY ME のネタバレしまくってます)

1.0X1=LOVESONG と STAND BY ME の主人公の共通点

まず、自分の中での架空の配役はこんな感じです。
ゴーディ(ウィル・ウィートン)→スビン&テヒョンの amalgam
クリス(リバー・フェニックス)→ヨンジュン
テディ(コリー・フェルドマン)→ボムギュ
バーン(ジェリー・オコンネル)→ヒュニンカイ

人数が違うのと、スビンとテヒョンの歌詞の感じが両方ともゴーディぽかったのでゴーディは2人の amalgam ってことでおちついてます。amalgam は混ぜ合わせたものという意味です。ヨンジュンのクリス、ボムギュのテディ、ヒュニンカイのバーンに関しては第一印象からそのまんますぎるなあと思って見ていました。

しかし、この配役はそんなに重要じゃなくて、5人全員で映画の中の4人全員を表していると感じます。

さて共通点です。

共通点1「一度も勝てなかったチェス」

0X1=LOVESONG には「一度も勝てなかったチェス」という歌詞が登場します。自分の人生がいかにツキに見放された不遇のものであるかを表したフレーズです。これは STAND BY ME では特にクリスとテディに当てはまると思いますが、より強く自覚しているという点ではクリスに近いかと思います。2人とも親が問題を抱えている困難の多い家庭で育っていました。チェスでいえば最初からしかるべき数の駒を与えられていないような悲惨な環境でした。また、舞台となっているキャッスルロックという町自体が貧しい人たちが住むという設定だったので、4人全員人生においては有利なスタートではなかったことがわかります。

共通点2「道がなかった」「死んでもよかった」

STAND BY ME のゴーディは尊敬していた優秀でやさしい兄を事故で亡くしたばかりでした。もちろん悲しくて仕方がないのですが、正直なところでは兄がいなくなったという状況をまだ飲み込めていません。そしてそれを教えてくれる大人もいません。両親は悲しみにくれゴーディの心のケアにまで気が回りません。ゴーディは「死んだのが両親自慢の兄ではなく自分だったらよかったのではないか」という考えを持つまでに自分を追い詰めていました。この先どう生きていけばいいのかまったくわからない暗闇に迷い込んでいました。

また、STAND BY ME の象徴的なシーンの一つに、汽車を相手にチキンレースをしようとするテディとそれを必死で阻止するクリスのやりとりがあります。絶対的な自信があったのにクリスに止めに入られたことでテディはクリスに当たり散らしますが、ほかの3人から見てテディが汽車と衝突する前に線路を降りたかどうかはどう考えても怪しく、最悪の事態も考えられました。ふだんから傍若無人なふるまいの多いテディですが、自分に度胸があることを示すためなら命さえも天秤にかけるような危うい一面がありました。兵士として第二次世界大戦に従軍し現在はPTSDに苦しむ父との複雑な関係から、テディの人生の価値観はほかの人には簡単にはわからない形につくられていました。

そして、STAND BY ME の終盤では一番おとなしかったゴーディが命の危険を顧みない驚きの行動に出ます。蟻一匹も殺せないような物静かな少年が、ナイフを手にした町一番の不良を前に一触即発の場面でまったく引かずに相手を追い詰めます。

共通点3「たぶん僕はダメだと思う。天国には行けない。」

0X1=LOVESONG には「天国に僕の居場所はない」という旨の歌詞があります。これは STAND BY ME ではクリスの心境と重なります。クリスの父親はアルコール依存症、兄は札付きのワルで、世間からはどうしようもない一家だと思われています。そんな背景もあり、クリスは学校内の窃盗事件の犯人の濡れ衣を着せられたとき、弁明することをあきらめ、こんな自分だから冤罪も致し方ないという気持ちになってしまいます。

また、クリスは優等生のゴーディから一緒に進学コースで学ぼうと誘われても、不良のレッテルを貼られている自分が入ったら迷惑になると言って固辞します。実際には後にロースクールを出て弁護士になれたほどの頭脳明晰さを持ち備えていたのですが、まさに「天国に行くに値しない僕」といわんばかりの自己肯定感の低さを示します。

共通点4「連れてって 君の hometown」

STAND BY ME の4人は親の監督なしで町の外へ出かけることが初めてでした。12歳という年齢であることと、アメリカの田舎は自動車でなければ隣町への移動も大変だという事情からも納得です。

一方、0X1=LOVESONG の5人は自動車も運転できる歳になっていますし、いろんな交通機関もある時代なので STAND BY ME の4人と違って物理的に町の外へ出ることは簡単だと思います。ただし、「連れて行って 君の hometown」という歌詞を考えてみると、まだまだ勉学に励むべきとされるあの年齢で恋人の故郷に行くということは、恐らく今の生活のすべてを投げうって親の敷いた正しいレールから外れるということとイコールなのではないかと思います。そういう意味で映画の4人と同様に初めて親の庇護/支配から切り離された冒険に出かけようとしているところであると考えることができます。

2. 天使は死体「I know it's real I can feel it」

STAND BY ME には5人目の主人公がいます(個人の解釈によりますが)。それは the body。原作のタイトルにもなっている死体です。

STAND BY ME の4人のうち、ゴーディ以外の3人は「死体を一番に発見したら有名になれる、英雄になれる」という野心に燃えます。ゴーディは「死とはどんなものか、それは何を意味しているのか」という疑問を持ち続けています。そして4人とも「死体を見つけることができたら自分を取り巻く世界が一変するんじゃないか」という希望のようなものに魅せられて旅に出ます。

ゴーディはほかの3人とは明らかに違う優等生であり、親からも「あんな連中と付き合うな」と厳しくくぎを刺されていました。にもかかわらずゴーディは死体探しのアイデアに乗りました。ゴーディにとって死体を見つけに行くことは、死体を見て、感じて、兄の死を理解するために必要な旅でした。このときのゴーディには死体は「唯一の Gold」であり「世界で唯一の法則」に思えたに違いありません。そして、死について誰かから教えてもらえることを期待するのはもうやめて自分で感じるべきだという結論に達したのだと思います。これがまさに 0X1=LOVESONG の中の「 I know it's real I can feel it 」だと思います。

0X1=LOVESONG の中では主人公たちの求めるものが天使(恋人)として描かれていますが、「ある日突然現れた人生の呪いを解く鍵」のように思われた存在という意味で、天使と死体は同じ役割をしているように思います。

3. これらをふまえて 0X1=LOVESONG の結末を予想する

0X1=LOVESONG の MV のラストはヨンジュンの夢落ち風に描かれたところで終わっています。この後この青年がどう生きていくのかは想像するしかありません。

STAND BY ME では死体を発見した後4人は帰宅し普通の夏休みに戻ります。結局、警察には匿名で通報しました。第一発見者としてヒーローになるという出発前の意気込みは、実際に死体を目の前にしたときにもうどこかへ行ってしまいました。死体探しの旅に出ていた2日間はまるで夢のように過ぎ去り、夏休みが明けて新学期が始まっても再び4人が仲良く遊ぶことはありませんでした。4人そろって顔を合わせる機会もないまま卒業しそれぞれの人生を歩んでいきます。そして、ゴーディのナレーションによって、クリスが大学まで進学し弁護士になったこととその後死去したことが明かされます。

0X1=LOVESONG の彼らも、もしヨンジュン以外の4人が実在したとしても、また楽しくつるむことはないのだと思います。そしてもっといえば天使と結ばれることもなかったと予想します。

これは今まで生きてきた経験からのわたしの個人的な考えですが、SATND BY ME の死体や 0X1=LOVESONG の天使のように、人生で大きな気づきやきっかけを与えてくれたものや人は案外本当にさりげなくかかわるだけで過ぎ去るものであるように思うからです。もちろん自分を成長させてくれた、変えてくれたという事実は残ります。けれど、そういったものや人と一生楽しく付き合っていけるケースというのは一握りだと思います。多くの場合、そのものや人から影響を受ける時間というのはほんの一瞬で、数年後にはそのこととはまったく別のことをしていたり、まったく連絡をとっていなくなっていたりします。そして、それでいいんだと思います。それに、そもそも STAND BY ME の死体のケースのように、自分を決定的に変えてくれたものというのはダークで重たい経験の中にあり、ずっと覚え続けているにはしんどすぎるという場合もあります。もしかしたらむしろそちらのほうが多いかもしれません。

だから、STAND BY ME の4人がひと言も口を利かずに帰路につき、何事もなかったかのようにまた以前と同じ日常生活に戻ったように 0X1=LOVESONG のヨンジュンもあの両親が喧嘩ばかりしている家へ帰りさらりと元の退屈な生活に戻ったと思います。けれど、クリスが死体探しの旅のあと考えを変え、あれほど頑なに自分には不釣り合いだと拒否していた進学コースを取り大学へ進学したことを考えれば、0X1=LOVESONG のヨンジュンも何かしらの新たな可能性を見つけたかもしれません。

4. まとめ

すごく悪い言い方をすれば、STAND BY ME の旅も、0X1=LOVESONG の5人の友情や天使(恋人)への恋焦がれる気持ちも他人からみたら取るに足らないガラクタみたいなものかもしれません。これは STAND BY ME という映画そのものが意味がわからなかったと言われることが多いゆえんでもあると思いますし、 0X1=LOVESONG についても何割かのファンに「キラキラかわいいコンセプトにもどってほしい」と言わしめてしまった理由の一つかと思います。それでもやはり映画の中でゴーディから出た「12歳のときのような友達はもうできなかった」というセリフ。これがすべてを物語っていると思います。そしてそのフレーズがまた 0X1=LOVESONG の世界にも当てはまるような気がします。

あとがき

そもそも私がK-POP(といっても今のところBTSとTXT、少しEN- くらいなのですが)にハマったのも、彼らがまとう STAND BY ME 味からです。男女の友情物語は世の中にたくさんあるでしょうし、わたしもそういうのは好きです。ただ、STAND BY ME の中の男子同士の友情は女の自分には絶対に理解のできない入り込めない次元にあります。そしてそのことがとんでもなく良いのです。だから 0X1=LOVESONG の中に STAND BY ME を見つけたときとっても興奮してしまいました。

STAND BY ME というのは世界映画史の中の傑作の一つであり、公開から35年以上経った今でも多くの人の心の中で特別なポジションに居座るモンスター映画ですから、0X1=LOVESONG に限らずこの映画に気持ちをトレースしながら鑑賞する現代の作品そのものが多いと思います。0X1=LOVESONG も単にそういう数ある作品の一つと言ってもいいかと思います。それでも、10代で初めて STAND BY ME を見てからずっとこの映画とともに成長してきたわたしの心に 0X1=LOVESONG の歌詞が深く入り込んできたことは事実です。この年齢になってまたあのときの気持ちを思い出させてくれた 0X1=LOVESONG に感謝しています。

以上です。お読みいただきありがとうございました。

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