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【アナウンス】「被らない」原稿を作る方法

超大事な原稿。「ネタ被り」のリスクヘッジを

前回の記事では、なぜアナウンスで原稿が大事なのか?を解説しました。

↓まだ読んでいない方は是非。

読んでくださった方は、原稿が上手ければアナウンスは上手くなるということがお分かり頂けたかと思います。

そんな原稿で最も恐れるべきもの、それこそが「ネタ被り」です。

完全に避けることはできませんが、できるだけ避ける、被っても原稿の質で上回る方法はあります。


①ネタの系統(ジャンル)を知る

アナウンスには、細かな違いはあっても、取り上げられやすいネタのジャンルがあります。
それらを知って、それぞれのジャンルで、過去にどんな原稿が書かれてきたのか、自分はどんな原稿を作ってきたのかを研究しましょう。
既存の原稿を知れば、言葉選びを工夫できます。

筆者が考える主なネタのジャンルは以下の通りです。思いついたら追記します。
※例は筆者が考えたもので既存の原稿とは一切関係ありません。

・スポ根(例:陸上部の○○さんが、全国大会に出場します。/吹奏楽部が悲願の金賞を手にしました。)
・留学、国際交流(夢に向かって、アメリカに飛び立った生徒の話題です。)
・ボランティア(○○さんが、福祉施設の利用者と交流しました。)
・名物の先生(例:A高校には、映画マニアの先生がいます。)
・校内の特徴(例:廊下に飾られた、白黒の不思議な絵を知っていますか?)
・卒業生(例:卒業生の○○さんは、大学でドイツ文学を学んでいます。)
・町おこし(例:3年生の○○さんが、B市の移住促進ビデオを制作しました。)
・学校行事(例:今年の文化祭のスローガンが決まりました。)

※これらのネタが、例えば「卒業生+スポ根」みたいに、複数テーマにわたることもあります。

②ありきたりな「転」を避ける

アナウンス原稿は、およそ「導入→きっかけや取り組み→思わぬ壁や予想外の出来事→変化・成長のきっかけ→インタビュー→まとめ」という構成で進みます。
原稿の核となり、また個性となるのは、「思わぬ壁や予想外の出来事→変化・成長のきっかけ→インタビュー」つまり「転」です。

では、「ありきたりな転」とは何で、どうすれば避けられるのでしょうか。
ここで、2つの原稿の構成例を挙げます。なお、この例は架空のもので、既存の原稿とは一切関係ありません。

例①:テニス部のAさんが全国大会優勝→テレビで見たテニスの試合に感動してテニスを始めた→結果が残せるようになったが、高3の最後の大会の直前に足を怪我→諦めかけたが顧問の「お前なら出来る」という言葉で立ち直って優勝→インタ「ハプニングに負けず勝ててうれしかった。将来はオリンピックに出たい。」→卒業後はアメリカでテニス、夢に向かって走り続ける

例②:テニス部のAさんが全国大会優勝→優勝を支えたのは毎朝の「味噌汁」だった→熱中症対策で毎朝味噌汁を飲むので、具材や栄養にこだわって自分で作っている→3年前、朝食を抜いて熱中症で倒れた経験から作り始めた→自分の体を支えるため、食材の栄養も勉強し、様々な味噌汁を作っている→インタ「練習ばかりに気を取られていたが、一番大事なのは体だと気づいた。栄養たっぷりの味噌汁で自分をケアするのも大事な練習。」→卒業後はテニス選手としてだけでなく、管理栄養士としての活躍も目指す、「体を作る食の重要性」を伝える

いかがでしょうか。この2つの例だと、例①のほうが、ありきたりな感じがしませんか?

「テニスで全国優勝→練習の紆余曲折→克服とプロ選手への挑戦」という展開は、聞き手が予想しやすく、良くも悪くも(全国優勝そのものは普通ではないけど)「普通」なのです。

一方、「テニスで全国優勝→その裏にあった味噌汁づくり→栄養の勉強への情熱」という展開は、ほとんどの聞き手は予想できないと思います。仮に「味噌汁を作る」ことそのものは珍しいことではないとしても、「テニスの全国チャンピオンが情熱をかける」という展開が珍しいんです。

まずは、過去の原稿を研究する中で、使い古されてきた「テンプレ的なストーリー展開」を学びましょう。そのうち、取材の中で相手からぽろっとこぼれた「面白さのタネ」を拾い上げ、ひと癖あるストーリーが描けるようになります。

少し文学的な言い方をすると、「大声で鳴くセミ」に夏を感じるのではなく、「命が尽きて地面に落ち、蟻に喰われるセミ」に夏を感じられる感性を、過去の原稿や様々な話題、文学や芸術作品等に触れる中で育てていきましょう。
その感性がある人は、アナ原稿がうまいです。


③「最後の一言問題」を研究する

アナウンスにおける最後の1文は、唯一、書き手(読み手)が取材で得た考えを少し入れられるところです。この1文を工夫することで、自分の伝えたかった主題が伝わるか変わってきます。
以下に、よくある最後の一言のパターンを示します。

①皆さんも~してみませんか?/ぜひ~してみてください。

問いかけパターンです。悪くはないですが、安易に使うのは非常に危険です。「おさまりが悪いから、とりあえず疑問」は意地でも避けてください。「知ってほしい、来てほしい」という原稿主題なら悪くはないのですが、そもそもその主題は印象に残りにくいので避けてほしい、というのが筆者の見解です。

②次回は〜の予定です。/今後は、〜の活動を続けていきます。等

未来の具体的な活動を示すパターンです。実際のニュース原稿に近く、具体的な情報を添加できます。
常套句や予定調和を入れるよりはこちらの方が説得力が増します。
注意すべきは、主題とうまくリンクしていない、もしくはストーリーが未来が気になるような面白い内容でないと、情報の「取ってつけた感」が否めないことです。
見極めて使いましょう。

③常套句・予定調和

これは個人的には最も避けてほしいやつです。
具体的には、
「これからも夢への努力は続きます」
「未来への挑戦は始まったばかりです」
とかです。
これがなぜ微妙かというと

①使い回された言い回しのため印象に残らない
②きれいにまとまっているようで実は具体性がない

からです。

以上、3パターンほど代表的なアナウンス原稿の締めを提示しました。
もちろんこれ以外にもあると思います。
で、結局いい最後の一言って何?というと

「簡潔に、自分の伝えたいメッセージとリンクするような、
ごまかしや曖昧さのない文」

だと思います。
これも、たくさんの原稿に触れて、言葉選びを研究しましょう。
使われる動詞やインタビューとのリンクのさせ方などを意識して分析してみてください。


おわりに

今回の記事では、具体的に、アナウンスの「ネタ被り」を避ける&かぶっても内容で上回るために私が考えていることを書いてみました。

どんな原稿にも、良いところ、改善したいところは存在します。

まずはインプット量を増やして、パターンを知ること。
そしていざ原稿を書くときは、「本当に伝えたいことは何か?」「これで自分の言いたいことは伝わるのか?」を常に考えること。

シンプルですが、これに尽きると思います。
みなさん各々の思いが詰まった、珠玉の原稿が出来上がることを祈っています!


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