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52ヘルツのクジラたち/町田そのこ(2023/7)
【あらすじ】
主人公の三島貴瑚(キナコ)は東京から大分へと移住し、新しい生活を始める。そんな中、少年(ムシ)と出会い、彼が虐待を受けていると分かった貴瑚は、自身も昔母親に虐待されていたこと、また自身も昔アンという人物に助けられたこともあり、少年を助けることを決意する。果たして貴瑚と少年の運命は。
【感想】
本作品は「虐待」「LGBT」「片親」といったキーワードが出てきます。表紙は可愛らしい絵ですが、内容はやや重たいです。しかし、貴瑚が移住した大分の港町の描写や、貴瑚を支えるアンの素敵な言葉がところどころ散りばめられており、全体的にいいバランスが保たれています。
鯨はコミュニケーションを目的として鳴くことは有名ですが、一般的には10~39ヘルツという周波数の間で鳴きます。その中で52ヘルツで鳴くクジラも存在していると言われており、周りのクジラとは交流ができず、世界でもっとも孤独な鯨と呼ばれています。
この小説に出てくる登場人物は皆、誰にも気づいてもらえない孤独を抱えながら、それでも必死で声を上げようとしていました。私の周りにも‘’52ヘルツのクジラ‘’もいることを認識し、少しでもその役に立てたらと思わせてくれるような1冊でした。