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二人三脚で遺してきた不朽の名作。ポール・ケアホルム展-時代を超えたミニマリズム-

ポール・ケアホルム。
名前といくつかの椅子のイメージが思い浮かぶ。
そして、メーカーは、フリッツ・ハンセンだ。

そう思いながら、日本の美術館では初めて開催されるという「ポール・ケアホルム展」へ足を運んだ。

ほぼ撮影NGの会場では、ポール・ケアホルムの言葉と、椅子研究家の織田さんの解説を交互にじっくりと堪能しながら、作品の間をジグザグと進んでいく。見たことのある家具はもちろん、初めて見る作品も多い。50点以上の貴重な作品や関連資料は、そのほとんどが織田さんの収集したものだそう。熱狂具合を肌で感じることができる展示である。

二人三脚で遺してきた名作デザイン

会場を進んでいくうちに、ある解説でハッとした。
実は、ポール・ケアホルムのデザインを製品化していたのは、アイヴァン・コル・クリステンセンという会社である。(当時は、フリッツ・ハンセンではなかった!)この日、初めて聞いた名前だった。

ポール・ケアホルムは、工業デザインを学び、量産される工業製品としてのあり方を模索しながらも、素材や構造へのこだわりとのバランスが取れずにいた。結果、当時の製造技術に合わずに量産化は難しく、一点ものの家具にシフトしていく。それを支えていたのが、アイヴァン・コル・クリステンセンである。ポール・ケアホルムの素材、構造へのチャレンジを応援し、サポートをし続け、独自の生産システムを作り上げていた。そのおかげで、現代にもこのデザインがきちんと残せていたのだ。そして、ポール・ケアホルムが亡くなった2年後には、全ての販権をフリッツ・ハンセン社に譲り、アイヴァン・コル・クリステンセン社も閉業している。この展示を見るまで知ることがなかったふたりの固い信頼関係に、グッとこみ上げるものを感じた。

アイヴァン・コル・クリステンセンは、元々は、カール・ハンセンの営業で、ハンス J ウェグナーのデザインを気に入り、カール・ハンセンの社長に紹介したのだそう。のちに、ハンス J ウェグナーの家具を製造販売していたSALESCOを率いた人物でもあり、北欧家具を世界へはばたかせることに一役買っている。相当な目利きだったのだろう。北欧家具躍進の歴史上のキーマンなのかもしれない。

誰と出会うのか、誰と組むのか、どんな関係性なのか。ビジネスもデザインも人間がすること。長く受け継がれていく素晴らしいものには、人々の良い関わりが必ずあるということを感じずにはいられない。デザインを通じて、そのストーリーやドラマを知り想像することが、鑑賞の面白さの一つでもある。

座るから、わかること

最後に、実際に椅子に座りながらの絵画鑑賞エリアも設けられている。PK0に座った瞬間、心の中で「これはいい」と思った。背板の程よくしなる感じ、シートハイのちょうど良さ、背から腰までの絶妙な角度、座り心地、クッションやパッドも一切ない成形合板の美しさと潔さ。PK25もまた然り。ポール・ケアホルムの椅子は、見た目と座り心地のギャップが価値なのだろう。

異なる素材の組み合わせ、シンプルでありながら重量感を感じられるデザインなど、対極的な価値の融合が特徴だという。木製が主流だった北欧家具としては珍しいアプローチで挑み続けたポール・ケアホルム。この展示をきっかけに、より一層の興味を惹きつけられるデザイナーのひとりになった。

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