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私のガンが実業家系彼氏を連れてきた

4年前のちょうど今頃、
私は乳ガンの放射線治療とホルモン治療が始まった頃でした。

放射線治療って特に痛いとかなく、
ほんのり暖かいという感じなのですが、
毎日通わなくてはならないのと
副作用なのか心身共にかなりキツくて
鬱病状態になってしまっていました。

すべてにおいて「絶望」という言葉しか出てこなくて
生きるための手術と治療をしたはずなのに、
毎日死にたくて「死ぬ方法」ばかりを考えている日々でした。

今でもあるのですが、
放射線治療の影響で両腕がこわばって動かなくなる症状が
頻繁にあって、それが激痛で辛かったりしました。

それに加えて父のことがあったので、
精神的にボロボロすぎて
毎日毎日仕事中も感情障害で涙が止まらない状態でした。

うーん、今思い出してもこのときが一番辛かったかも。

私が乳ガンになったことは、彼は宣告当時から知っていました。
放射線治療を受けているのも知ってて
遠くから見守っているという感じでした。

放射線治療が終わった直後、
これからゆっくり体力を取り戻そうとしていて
でもココロは絶望感でいっぱいで全然立ち直れなくて
あー、私はこれから意味がないまま生きていくんだなあって思っていて
希望も幸せもなんも見出せなかった時に
突然彼からメッセージが入ります。

「突然ですが、
明日東京へ行くので会いませんか?」

今まではスルーして気にも留めていなかったのに、
このときは自分の中でヤケクソ感がいっぱいで
人生どうでも良いやと思っていたせいもあって

「良いですよー」
と返事した。

きっと東京のどこというのが
名古屋に住んでる彼には分かりづらいだろうと思い、
ちょうど私が渋谷でお世話になっている監督に
初期治療完了報告をしに行く約束をしていたので
終わった頃の時間に
ハチ公前で待ち合わせしましょうと伝えた。

実はこの渋谷で待ち合わせというのが
すごく運命的だったんです。

7年前の知り合いたての頃。

変な口説きモードだった彼からこんなメッセージが来ました。

「今日、docileさんが夢に出てきました。
 渋谷で俺と待ち合わせしてました。」

3年後、それが実現しちゃったのです。

Facebookから想像する彼は
投稿する文章もシンプルで表情も無表情だったため、
まんま「逃げ恥」の星野 源さん状態を想像していました。
大人しいとかウブとかそんなイメージ。

ハチ公前で初めて会った彼は・・・・
「うるさい・・・笑」
が第一印象でしたw
だって体力戻っていない時のあのやかましさは苦痛でしかなかったもん笑

「えっ?!渋谷ってこれからお祭りやるの?!
 名古屋なんてこんなに人がいないよっ!!」
と人の多さに大コーフンしてました。

喫茶店に入って
二人でお茶したんだけど
初対面なのに話がエンドレスに盛り上がった。

もちろん私の治療の話もしたけど、
ずっと遠くで見守ってた分、
直接私の顔を見れたのには嬉しかったみたいだった。
しかしテンションが高くて大はしゃぎ状態の彼。

ガンになって宣告されて
「あーもう死ぬんだ」って思って
父親のことがあって色々ありすぎて
絶望感だらけの日々に変わってから、
この日が唯一一番笑えた日になった。

「俺、docileさんの歌が聴きたくて東京に来たの。
 だから今からカラオケ行こう!!」

いやいや、私。
確かに退院したその足でボイトレ行ったけど、
治療明けのカラダだから体力だって戻ってないし、
人前で歌うほどの肺活量戻ってないし。
それにこの人、初対面だし・・・。

と言い訳していたが、
自分のやりたいことは人を巻き込んでも果たす人なので、
私の病後の体調なんてお構いなし。

「大丈夫だからね。
 これからは俺がdocileさんのこと守ってあげるからね。」
と何回も言ってくれていたが、
初対面だったので「めちゃめちゃ軽い男だな」と思っていた。

私の病後のこともあるので
20時くらいに帰ろうとしたところ、
「ええーっ!!まだ良いじゃん!
 docileさんといるの楽しいもん!
 まだもう1軒行くのっ!」
と言われて結局コーヒーショップに行くことになった。

「・・・いや、だから。
 私、体力が・・・戻ってないから。」
と内心思っていたのだが、彼にとってはお構いなし。

コーヒーショップにいても
私たちの会話は途切れることはなかったなあ。

帰り際に何回も
「あのね、不安になった時は後ろから抱きしめられると安心できるんだよ。
 だからdocileさんが不安になったら後ろから抱きしめてあげるからね。」
と言ってくれたのを今、思い出した。

この時、久しぶりに楽しかったが、
まだ私の中では、
この人が彼氏になるとは微塵にも思っていなかった。
 






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