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イヤイヤ英語にカムカム英語

長男が英語に苦戦している。中学に入って初めは、英語の授業はゲームを交えたコミュニケーション(英語でジャンケンとか)みたいなことばかりやっていて楽しそうだったのだが、二学期に入ってから雲行きが怪しくなってきた。期末テストの結果はとうとう平均に届かなかった。

我が家の息子達は塾に行っていない。理由は色々ある。基本的には勉強はしたいならやれ、くらいの方針なのだが、本音は今以上に煩い母になりたくないからである。

私は演劇ばかりの人生だったし(高校は公立、大学は実技で推薦入試を合格したようなもの)、夫は中学受験経験者だが自分が相当辛かったからか、息子の成績表を見たことがないくらい放置に近い。

流石に小学生低学年の弟の方には宿題終わらないとゲームはできない、という程度は徹底しているが、「親が怒るから勉強しなあかん」と思って欲しくないなあと思っている。

話逸れたが英語の話。
私も英語が苦手だった。今も苦手だ。今の子供達は仕事するのに英語が必要、みたいな風潮があるせいか、小さい頃から英語教育が盛んな御様子。

私も長男が2歳の頃ヤマハ英語教室に1年通った。先生は小さい頃から始めると発音が違ってきますと言っていた。そうなのかもしれない。でも今は過去の自分は何であんなに焦っていたのだろうとも思う。遊び感覚で行っていたとはいえ、色々不安な育児だったから情報を鵜呑みにして齷齪していた。

私の場合、英語が苦手なのは文法を理解していないからだ。なーんとなくこうだったかな?くらいでスルーしてきた。
京都に住んでいた頃はよく観光客の外国の方に道を聞かれ、テンパりながらも身振り手振りで案内した。スマホのない時代だったし、緊張したけど何とかなった。
でもそれは英会話ではない。英単語が時々出るパントマイムでのやっつけに過ぎない。

朝ドラの「カムカムエヴリバディ」で安子さんが話しているのを観て、ほんまにラジオの英会話であんなに話せるようになるのかなーなんて、半信半疑になる。CD聞くだけで英語が話せる教材とかも然り。要は本人の情熱次第だよね、と言い訳ばかりの自分に英会話はハードルが高い。

ただ。ただね。その情熱が大事なところで。
私は英語を喋るのは苦手なので、イコール「英語が苦手」ではあるのだけど「英語が嫌い」ではないのです。それは何故か。

中学生の時も英語は苦手なのに、英和辞典は毎日使っていたのです。それは何故か。
答えは、洋楽の和訳です。

買ったCDの日本版には大抵、歌詞カードに英語の歌詞と日本語の歌詞が掲載されていたのだけど、輸入盤には英語だけ、ましてやレンタルで借りたCDの歌詞カードはコピーなので印字が擦れていたり、紙自体が破れていたり。入ってないものもあった。
今はネットで調べられるから便利になりましたね…まあ、でもその和訳がね、なんかしっくりこなかったりするのだ。

私の好きなこの歌はどんな事を言ってるんだろう。好きな歌の歌詞を大学ノートに書く。その下に和訳を書く。和訳は文法のわかっていない自分が単語を見て感覚的に書く。辞書で調べた単語の、自分が良いと思う意味を引用してちょっと捻った表現にしてみたり。
すごく時間がかかるけど楽しかった。それを誰かに見せたりしない。自分だけのポエムのような、秘密の世界。

実は今もたまにやっている。私はギターを弾く時に、自分でノートを作って歌詞やコードを書き連ねてそれを見ながら歌って遊んでいるのだが、そのノートに書かれた英語の歌詞の曲はオリジナル和訳もノートに付け加えている。

人の文章を自分の言葉で書いてみる。
詩を書く作業とは少し違うけど少し近いものを感じている。
私は詩を書くときは経験や記憶、いつかどこかで見かもしれない映像を言葉にしている。好きな歌は好きになるだけあって、初めは英語しか耳に入らないので意味がわからないのに、調べていくうちに自分の頭の中に映像化してまるで自分の一部になる錯覚を体験させてくれる。

…私は英語が好きというよりは日本語が好きなのだということがここまで書いてわかった。直接すぎる和訳はまろやかになったりぼかした感じにしたい。
演劇の脚本を書く時に台詞で説明しないように、役者の時は台詞やト書きではなく人物の感情や背景を大事にしてきたように。

あなたが好き、と歌われると胸焼けするが、アイラブユーならいいのかというとそうでもない。

夏目漱石の「月が綺麗ですね」は粋だと思う。あなたが好き、を月が綺麗と訳す。いや逆だ。月が綺麗、が、あなたが好きの意味なのになんだかこんがらがってきた。漱石氏を持ち出してきた事でややこしくなってしまった。

言いたいことは、英語の歌詞を使って自分の好みに訳す。楽しい。それだけです。回りくどくてごめんなさい。

そこから派生して、海外小説も読むようになってきた。戯曲や詩は海外のものも嗜んできたが、小説は有名な作品しか読んでいなかった。岸本佐知子さんの翻訳が好きで、最近は柴田元幸さんにも興味が湧いている。

というわけで、英語が苦手な息子へ。(息子は読まないが)
何か自分の情熱を注ぐ事に英語が関われば英語を調べたりして、少しはお近づきになれると思う。何かそういう好きなものが見つかればいいなあ、と思うのである。この際テストの結果はまあ、まあ…気にしないでいこう!カムカム英語!