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看護師が感じる無力感

先月、今月で治療室に通院されていた患者さんが
旅立ちました。先週まで普段と変わらず治療を受けられていた患者さんが亡くなってしまう時ほど
無力感に苛まれてしまいます。
今回は先日亡くなったSさんを通して私自身の振り返りと共にこれからの看護師としての在り方など述べてみたいと思います。

先週亡くなられたSさんは骨髄異形成という病気で抗がん剤治療を受けておられました。
今年に入り、病勢の勢いが増していき、輸血をしながら7日間通う抗がん剤治療をなんとか受けているという状況でした。
数ヶ月前からは細胞が白血病化して、現在の治療の効果が期待できないとして治療内容を変更するための入院を勧められていました。
しかし、Sさんは5月に入ってからにしてほしいと
言い、今できることとして外来通院でも可能な内服薬での治療が開始されていました。

「しんどい…。」
「今日も輸血がこの後待ってます。」

静かな口調ではありましたが、Sさんの
言葉には精神的苦痛の訴えが増えているように
見受けられました。

「本当はもうこれ以上の治療は受けたくない。でもやめるとこのあと長くないこともわかっているから仕方なくやっている。しんどいです…。家にいても寝てるだけです…。」

カルテには療養支援をした看護師の記録が
毎日のように残されていました。

先々週のことでした。
治療2日目の朝、病院に向かう道中に体調不良を
訴え救急搬送されてきました。

発熱があり陰嚢に血腫が出現し、感染症による
血圧低下いわゆるショックバイタルがみられ、
重症な敗血症として即日入院となりました。

私を含め治療室の看護師スタッフは心配ながらも
敗血症の治療が落ち着けば、いよいよ白血病化している病変に対しての治療が始まるものだと思っていた矢先のことでした。

Sさんが入院から数日後に亡くなられたのです。
治療室看護師スタッフは口々に自分たちの
無力な思いを表出し、振り返りのシェアをしていました。

「Sさんにとって私たちは何ができてたのだろうか…」

「亡くなるギリギリまで治療を続けていたことは
Sさんにとってどんな意味があったのだろうか…」

しんどい、治療をやめたいと言われていながらも
治療を続ける事で僅かでも希望の光を見ていたのかもしれないし、そうであってほしいというSさんであったと思う。
私たちは少なからずSさんの思いに寄り添って
辛い事も私たちに吐き出してくれていたことで
その瞬間はSさんの辛さが少しでも和らいでいたのではないか…。

と話す看護師もいました。

実に多くの種類の抗がん剤治療が
外来通院でも可能になったこと、治療メニューが増えたことなどから緩和治療への移行の
タイミングであったり、患者本人の生き方在り方も変容しており、Sさんのように治療を続けて
いる最中に亡くなってしまうケースが増えている
と考えます。

ACP
アドバンスケアプランニング
(もしもの時の人生会議)
の時間をどんどん増やして、どうありたいか
命の使い方など本人、家族、医療者が一体となって思いを分かち合う時間を増やしていくことが
とても重要で、すこしでもその思いに寄り添って
どんな経過を辿ったとしても
最後には

「よかったね」
「幸せだったね」
「ありがとう」

と言い合える関係性が構築出来れば、常日頃
感じてしまう無力感に苛まれる機会も少なくなり
今回のSさんのような最期であったとしても
素直に受け止められるのではないかと思うのでした。

日頃の業務に追われるだけの仕事の向き合い方についても考えさせられる時間でした。

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