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『恋心』〜ふとした瞬間に〜

こんばんは!

第8回目の1曲1時間ラジオの曲は「恋心」になり、解釈を深めるために今回も書かせていただきます!

曲のイメージで小説を書くのは2回目ですがやっぱり楽しいですね。
これからも書いていきたいと思います☺️

では始まります↓

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「〇〇さん、次どうぞ。」

病院で呼ばれたその名前に一瞬反応が遅くなる。

そうだ、私はもう彼の苗字では無くなったのだ。
改めて突きつけられる事実に心がチクリと痛む。
暫くはこういうことの積み重ねで実感していくんだろう。
じわじわと真綿で首を絞められるように。
私が耐えられなくて手放した関係なのにいざあなたが居ない日々が始まると切なさが込み上げてくる。

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帰宅しても気持ちが晴れることはなかった。

医者に言われたことを思い出す。
どうやら気が付かないうちに限界が来ていたらしい。
吹っ切れたつもりだったのに…

「なんでこんなことになっちゃったんだろう…」
無意識に呟いていた言葉を冷たい壁が跳ね返した。
それすらも責められているように感じて今日何回目かも分からないため息をついた。
1度開いた記憶の扉はそう簡単には閉じてくれないらしい。

どうしても許せなかった。
いつもふらっとどこかに行ってしまうあなたのことが。
夢見ていた結婚生活とはまるで違う、私はあなたにとってなんだったの?
きっとお互いの生き方が合わなかっただけだった。
それでも同じ方向を見ていたかったのに。

SNSでちらっと見た彼は、私と離れたあと少し変わっていた。
これまで以上に自由に過ごしている。
私も私で傍から見たら変わったように見えるだろう。
それはいい変化だろうか、いわゆる"垢抜けた"という成長なのだろうか。
まだそう思うには気持ちがついていかない。
同じ明日は残されてはいないと残酷な現実を見せられているようで。
私だけが、取り残されているようで。  

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こんなに感情が溢れることが久しぶりで恐怖を覚えた。
病院で貰った薬を飲んで落ち着こうとするも、次々と感情と記憶が堰を切ったようににこぼれ落ちていく。

一緒に過ごす最後の夜。
幸せな二人の頃のように抱きしめ合った。
まるで時が戻ったようだった。

でもあなたの目を見れなかった。
目が合ったら泣いてしまいそうだったから。
まだやり直せると勘違いしてしまうから。

「ーーーっ…」

1番苦しくて優しい記憶がフラッシュバックして忘れかけていた恋心が溢れ出す。
涙が止まらない。
後悔ばかりが頬を伝う。

別れ話の後「それじゃ…」と席を立ったあなたを引き止めていればこんなに苦しくはなかった?やり直せた?
だんだん小さくなる彼の背中がいつまでも脳裏に焼き付いて離れない。

吹っ切れたつもりだったのにまだ私の心の中にはずっと彼への気持ちが残っていたのだ。
「大丈夫、彼とは合わなかっただけ。」とずっと意地を張っていた。
でももう疲れてしまった。糸が切れたように。

人って不思議なもので悲しいを超えて呆れに近い感情が生まれてくる。
流れる涙を拭うことも諦めてベッドに沈む。

今日はもうこのまま眠りに落ちてしまおうと目を閉じる。
目が覚めたら「昨日はそういう日だった」と笑えることを願って。

END

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病み寝逃げENDになりました🥲

「名前呼ばれる度」の部分を以前から離婚で旧姓に戻ったと解釈をしていたので、そこから"離婚をした後吹っ切れたつもりだったのに恋心を思い出してしまう主人公"を描きました。

結婚したあともふらーっと姿を見せなくなる相手のどこがいいのかとも思いますが、それ以上に好きな部分もあったのだと思います。
主人公はきっと気丈に振舞っていたし割り切ったつもりだったのに、もとの芯が強い分ふとしたきっかけで感情が止まらなくなったと解釈しました。
強く見える人ほど弱音が吐けなくて心が割れてしまうことってあると思うんです。

勝手なあなたを突き放したけれど、いざ1人になると辛さが押し寄せてくる。
そんな主人公の心情を意識しました。

かなり切なく苦しい描写になりましたが、きっとこの主人公なら起きたあと少しずつ立ち直っていくと思っています。
(個人的な願いです)

10月25日の恋心ナイトでこの内容を語ることになります! 

今回も色んな解釈が生まれていて興味深いです!
是非お時間のある方は聞いてみてください🎶

ではまた(*´︶`*)ノ


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