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大袈裟だってば。

数日前から、目にするたびに気分が少し重たくなる光景があった。家の敷地内に停めているお気に入りの自転車。その前輪のすぐ傍らに、Gの死体がひっくり返っていたのだ。これは私にとっては由々しき事態。自転車を使うたびにげんなりする。
早く対処しようと思いつつ、家に逃げ込んでしまえば忘れられるので放置していた。


でも今日、はっとした。嫌なことを見て見ぬふり。臭いものに蓋をする、事なかれ主義の後回しの姿勢。そんな生き方でいいのか、と。
嫌だ。不要なものや、やらなければならないことに埋もれて首が回らなくなりそうだ。そんなんじゃ好きな時間だって、全然楽しめない。


そんなわけで、覚悟を決めた。買物帰り、少し手前に自転車を停める。庭に回ってシャベルを手に取る。もう錆びてたから処分しようと思っていたけど、もう一働きしてもらおう。庭の適当な木の下に、気持ち深めの小さな穴を掘る。それにしても蝉は鳴くし蒸しているし、近所からプール遊びをする小さな子とパパさんの声が聴こえるし、いつの間にか夏真っ盛りだ。


ひとまずの作業を終え、シャベルを手に問題の現場へ。途中、草の中にまた大きな虫の死体を発見してしまう。金色のおりがみみたいに光っていてぎょっとした。虫もこの猛暑にやられたのだろうか。仕方ない。Gと一緒にほおむることにした。一体ずつ、顔を背けながらなんとか運搬して穴に投入。秒で土を被せて軽くトントンとシャベルでならす。お墓完成。雑なのは許せ。「なむ!」と一言。手を合わせて完了。



シャベルを縁側の下の定位置に戻そうとしたら、シャーッと何か細長く光るものが横切った。「ひっ」一瞬だったけど、とかげだろうか。でもたまに見る、とかげだかヤモリは茶色くて砂壁みたいに地味色なんだけどな。ま、いっか。とにかく任務は無事終了した。爆弾処理班のような心境である。ふう。



玄関に戻って、何気なく地面に目線を落としていたら、あっ、とかげ!しかも長いしっぽが青光りしているやつ。根の張ってしまった植木鉢の下に素早く入っていった。さっき見たのはコイツだろうか。 でも移動速すぎない?別のヤツ? どっちでもいいけど。
自転車をいつもの位置に戻し、カゴから買物してきたものを降ろして家に入った。涼しい。そして気持ちが軽くなった。


取るに足らない小さなことかもしれない。でも気分を曇らせている要因は、なるべく早めに取り除こう。改めて思うのだった。


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