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読書感想文・かがみの孤城

大人になって読むこんなお話は、つらい。
こころちゃんが子供の頃の自分で、お母さんは今の自分に重なって、両方の気持ちがどしんと響く。
自分が不登校だったわけでも、息子達が不登校なわけでもないけれど、心を掠める不安や胸のざらつきは、きっと誰しも感じたことがあるんじゃないかと思う。

いじめられてるわけじゃない。
でも、学校に行けない理由がある。
両親に対して申し訳ない気持ちだったり、すれ違う同じ年くらいの子達に恐怖を感じたり、そんなリアルな感情にものすごく惹きつけられた。
昔の私がまるでこころちゃんで、そして今の自分はこころちゃんのお母さんの気持ちが痛いほど分かる【母親】というものになってしまっていて、苦しくて思わず涙を拭うほどだった。

この本は、すべての元学生だった人達、全ての親達、そして今まさに学校で闘ってる人達に読んでもらいたい。

※※※

このお話を読んだ後に、私の中学時代のアレコレがぶわーーーっと溢れてきて受け止められなくなってしまった。今11才の2人の息子達を見ていて、この子達もあと数年で中学生になるのかと思うと、昔の私はなんてひねくれていたんだろうと思い返したりする。
余談だが、息子達はのびのびと本当に素直に育ってくれているから、彼らを取り巻く環境に感謝しかない。

そんな私のつまらない中学生活を書いてみようかなぁと思ったけれど、なんだか悪口だらけの面白みのかけらもない話になってしまうのでやめた。

でも、この本を読んだ感想をnoteに書かなくてはと強く思って、今ポツポツと心に浮かんだことを書いている。

ファンタジーのようで、でもしっかりと現実で。こんな夢のようなお話を子供の頃の私が読んでしまったら、どうしようもなく妄想の世界に入り込んでしまうだろう。
それほどまでに魅力的なストーリー。

学校に行けない、平日の昼間に城にいる子達、みんながつらく寂しい思いを抱えながら、それでも健気な姿にみんなみんな幸せになってと、願ってしまっていた。
生きていることが大事。逃げてもいい。それでも、一歩踏み出せば、臆病ながら少しずつでも動き出せば、必ず見えてくる現実に、本をめくる手は止まらず、こころちゃんに少しずつ光が差していけばいくほど、城のみんなの幸せも同じように願ってしまう。
みんなで生きていく道を読者の私でさえ最後まで探してしまった。

物語の最後は桜の匂いがして、なんだかものすごく甘酸っぱく感じてしまったのは、私がその先にきっとある新しい物語を期待してしまったから。

「続編で、この2人のラブストーリー読めますよね?」と直接辻村先生に聞きたいくらい前のめりになってしまった。


この物語は読む人すべての中に、こころだけでなく、アキやマサムネやフウカ、城の誰かがきっといる。
ひとりぼっちで臆病で不器用な、でも真っ直ぐな子供達。大人になっていく過程でどこかに置いてきてしまった気持ちをもう一度思い出させてくれる鏡の中のお城のお話。


私が子供だったらきっと、読み終わった本を片手に鏡に手を翳してしまうだろうな。

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