見出し画像

TREMATODAの話。

 京都をベースに活動するアーティストMARO NASTYが手掛ける『TREMATODA ZINE VOL.4』を先日、手に入れました。

TREMATODAは2015年に音楽、パンク・シーンとリンクしてイラストやアートワークを手がけるアーティストたちの母体となるべく、主宰のMARO NASTYがTREMATODAを立ち上げました。京都のセンパイたち、Kazuhiro Imai、TKKR THE ART DEMON、yossie Thrashgraphicsを召喚して自分たちの活動を1冊のART ZINEにしたことからスタート。個性の強い兄さんたちの頼れる後輩であるMARO NASTYならではの1冊で、ほかの人では集められなかったメンツです。

VOL.2以降はMARO NASTYはキュレーターとして日本各地で活動するイラストレーターをピックアップし、<ライヴ企画のように>イベントのフライヤーや、アルバムなどのアートワークを手掛ける音楽とリンクしたアート作品を1冊のZINEとして形に残し続けています。

画像1

画像2

画像3

 毎回このフライヤーはこの人の作品だったんだ!と思わせてくれる、個人的に楽しみなシリーズですが、この1月末にリリースされたVOL.4でSOCIAL PORKSのNaitinさんがフックアップされていたことでしみじみとストリート・カルチャーとしての80年代末~のパンク・アートのことを思い返すきっかけになりました。

 最初に目にしたパンク・アートってなんだったかなと思い返すと、SELFISH RECORDSの広告。最初はなにもよくわからないままに毎月雑誌に載っているTOMさんのイラストを楽しみにしていました。OUTO『正直者は馬鹿を見る』のアートワークで今でもその感触を想像できると思います。同様にかっこいいものとして記憶に残っているのは、VIOLENT GLINDの広告で、PUSHEADのイラストが載っていました。SELFISHはGAUZEのアルバムをリリースしていたレーベルで、VIOLENT GLINDはスケートボードのお店。スケートしていないわたしにはPUSHEADが手掛けるZORACやBUTTSTAIN、90の服を買い(見に)に行くお店でした。いろんなジャンルやカルチャーがクロスオーバーして未分化で混沌としていて、かっこいいかどうか、だけしか頭になかった……そんな気がします。

 まだ子供で、新宿のレコード屋さんや、ライヴハウスにはなかなか行けなくて、フライヤーを手にする機会は少なかったからこそ、FOOL'SMATEやDOLLの広告が一番新しい情報源。雑誌の広告すらデジタル入稿は出来なくてそのテキストはほとんどが手書きか、ワープロでテキスト打ちしたものをコピーして、修正液、はさみとスプレー糊を駆使してプロジェクトシートの方眼を頼りにレイアウトしたアナログの版下を作っていた時代のお話です。そして、いつの間にか手元になくなってしまうフライヤーや、棄てられていってしまう雑誌の広告、ぼろぼろになってしまうTシャツ、あの頃はもう<卒業>しているだろうと想像していた年齢になった今、手元に残るものは予想以上に数少ないのです。もちろん今はなき高円寺20000Vの地下に降りる階段に貼られた無数のステッカーやフライヤーのように、現場ごと保存することはできません。そして、その儚さこそがストリート・アートなのですが、一緒にご飯を食べながら‟SxOxBは外タレだと思ってた”と話ができるマロちゃんは作り手としても嫌というほどその儚さを身をもって知っているから、TREMATODAを運営し、とぅえるぶという実店舗までオープンしたのでしょう。

画像4

そんなとぅえるぶで最近手に入れたヤバいものも一緒に紹介します。ほんとは京都まで行ってマロちゃんとおしゃべりしながら買いたかったけど。

HAUTE DOG COUTURE ZINE by Allister Lee シャネルの5番を身に纏うホットドッグ婦人のイラスト集。グラフィック・アーティストのAllister Lee(アリスター・リー)のZINEのなかでもかなりヤバいやつです。シビれます。McRIPPER TEEも欲しいけど悩ましい…。

『大阪の中華食材店と中華料理屋への若干の所感』山本佳奈子 赤と金がおめでたい、新年快楽気分を味わえるリソグラフ印刷の美しいZINE。海外旅行に行けないけれど、気分だけでも味わいたいと池袋の友諠食府へ足を運んだりしていた私にはとてもタイムリーな1冊でした。魯肉飯はもういいから素食文化を紹介してほしいというパンチラインは台湾素食と愛玉子にノックアウトされた心に響きまくった。

UTBS 『YOUR ENEMY 
UTBS WORKS FUKUOKA ISSUE』 まだ訪れたことのない福岡…というかキースフラックに思いをはせてしまった1冊。マイロリップオフとかもうほんとかっこいい、フライヤー欲しい。壁に貼りたい。UTBSさん選曲のMIXも素晴らしいです。

※山本佳奈子さんのお名前に誤りがあり、修正しました。