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2023年を振り返る

今年はありがたいことに、ピアニストとしては50回以上の本番、作曲家としては10回近く自作品が演奏される機会をいただくことができました。項目別に振り返っていきたいと思います。

ソロ

3月にはフランクフルトのGallus Theaterにて、ルトスワフスキ《2つの練習曲》と《ピアノソナタ》よりAdagioを演奏させていただきました。カッツバッハ強制収容所から始まった「死の行進」を記憶するイベントでした。ドイツの歴史教育を目の当たりにすることができたのは貴重な体験でした。

4月末にはスウェーデン3都市でリサイタルをさせていただきました。ヨーテボリでの演奏会についての批評です。

8月には東京にて、廻由美子先生主宰の「新しい耳@B-tech Japan」に出演させていただきました。拙作《滲み》日本初演のほか、シュトックハウゼン、メシアンを弾かせていただきました。

9月にはケルン近郊にて、リサイタルを行いました。「ピアノ曲」というテーマで、モーツァルト、シュトックハウゼン、シェーンベルク、ブラームスのプログラムをお届けしました。こちらが批評になります。

11月には、フランス・グルノーブルで行われたメシアン国際ピアノコンクールにて、第2位及びメシアン作品最優秀演奏賞を受賞しました。自分の中で大切な作曲家の1人であるメシアン、その演奏に対してこのような評価がいただけたこと、大変光栄に思います。

12月には、フランクフルトにてSteinway Förderpreisを受賞しました。1時間のソロプログラムを、尊敬するピアニストトーマス・ヘルさんの前で演奏できて嬉しかったです。

室内楽

1月にはチェリストPhiline Lembeckさんとのデュオリサイタルをフランクフルトで行いました。このために書き下ろした拙作《空間と密度のための考察》をはじめ、デュサパンやシュニトケがバッハのまわりを浮遊するプログラムでした。このデュオはまもなく再開予定です。

カルテットCarton Jauneは、4月にハンブルク、8月にフランス・ロワイヨモン修道院で演奏会を行いました。最初の目標であったメシアン《世の終わりのための四重奏曲》全曲挑戦をこのメンバーで達成でき、とても嬉しかったです。

6月にはトリーアにて、Gerhard Stäbler氏によるピアノ4台のためのプロジェクトに参加させていただきました。

8月には東京にて、ヴァイオリニスト河村絢音さん主宰コンサートシリーズの第1回にご一緒させていただきました。委嘱新作《なみだ》のほか、ルトスワフスキ、デュサパンを共演させていただきました。

9月にはフランクフルトで組んでいるトリオ(クラリネット、チェロ、ピアノ)で、野外コンサートを行いました。ベートーヴェン、ファランク、ロータを演奏しました。

11月にはスウェーデン・ウメオにて、ピアニストJonas Olssonさんとのデュオリサイタルを行いました。長年の夢であったメシアン《アーメンの幻影》に挑戦したほか、ドビュッシー《白と黒で》サンダース《choler》を組み合わせました。こちらが演奏会の様子になります。

オーケストラ

2~4月にはヘッセン州立歌劇場にて、Søren Nils Eichbergさんによる新作オペラ《Oryx and Crake》上演にピアノ奏者として参加していました。ドイツのプロオーケストラには初めての客演、とても良い経験になりました。

6月及び9月には、フランクフルト放送響に客演させていただきました。それぞれバーバー、ライヒなど気の抜けない作品を演奏させていただきました。

9~11月には、スウェーデン・ウメオにあるNorrlandsOperan劇場にて、ジョン・アダムズ《クリングホッファーの死》上演にキーボード奏者として携わっておりました。かなり複雑なプロダクションを支える一員となれたことを誇りに思います。

作曲

1月に、ソロアルバムのために書き下ろした《滲み》を完成させたあと、3人の楽器と3人の歌手のための作品《「ぬ」についての考察I》に取り組みました。これは2024年7月20日神奈川にて初演予定です。

その後、河合美帆さんからの委嘱で、ヴァイオリンとヴィオラのための《Drei Gesten》を完成させました。これはシューマン《子どもの情景》からアイデアを得た作品です。12月22日フランクフルトにて、DuoMiAによって初演されました。

5月頃には、河村絢音さんからの委嘱で、ヴァイオリンとピアノのための《なみだ》を完成させました。8月6日東京にて、河村さんと小倉の演奏で初演されました。

12月には、ラジオフランスからの委嘱で、トロンボーンとパーカッションのための《Exosomes》を完成させました。こちらは2024年3月にJon Roskillyさんと窪田翔さんの演奏で収録、その後配信初演を迎える予定です。

CD

スウェーデンのレーベルThanatosisより2月に本リリースとなった「Ogura Plays Stockhausen」は各地で好評を受けました。日本では「レコード芸術」「モーストリー・クラシック」ヨーロッパでは音楽学術誌「TEMPO」などでレビューが掲載されました。

また、同レーベルより自作自演を収録した2作目のアルバル「Ogura Plays Ogura」のリリースが発表されました。本リリースは2024年2月16日となりますので、皆さまご予約のほどお待ちくださいませ。日本でのリリースコンサートも2024年3月30日東京にて計画しております。


執筆

「スタイル&アイデア」様にて、作曲家として論考を書かせていただきました。自分の当時の作曲、ひいては音楽に対する考え方を言語化するという大変貴重な機会となりました。

また、情報未公開ではありますが、日本を代表する作曲家の記念誌に、未熟ながらも言葉を紡がせていただく機会をいただきました。

来年の予定

来年は既に3作品の委嘱をいただいており、ワクワクと緊張が混ざっております。
日本での演奏・作品発表の機会もいくつかありますので、皆さまとお会いできるのを心より楽しみにしております。

2月20日21日 於トーキョーコンサーツ・ラボ
向井響 作曲個展 美少女革命
向井響《東京第七地区》

3月23日 於神奈川県立音楽堂
紅葉坂プロジェクト おんがくが「ぬ」とであふとき
ワークインプログレス

3月28日 於ミューザ川崎市民交流室
JFC作曲賞本選
ヴァイオリンとチェロのための拙作《HITOGATA》が初演されます。

3月30日 於B-tech Japan 東京スタジオ
"Ogura Plays Ogura"リリース記念コンサート

7月20日 於神奈川県立音楽堂
紅葉坂プロジェクト おんがくが「ぬ」とであふとき
本公演
古代語「ぬ」から影響を受けて作曲した拙作4作品が演奏されます。

演奏・作曲のお声がけがございましたら、いつでもお気軽にご相談くださいませ。

新しい1年が、皆さまにとって素晴らしいものとなりますように。

2023年12月31日 小倉美春


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