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ミスターサンシャイン備忘録⑤

両班にとって、ユジンの両親は「奴婢に過ぎない」。つまり、人間ではない、ということ。フランス人権宣言から遅れること80年で、日本は
福沢諭吉が「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と書いたがそれが1872年(明治5年)。そこから30年経っているが、朝鮮では、まだ身分制度は、厳然と染みついていることが分かる。

いつも捨てる場所に捨てた。捨てた、という表現に表されているのは
そこには死者への追悼の気持ちは微塵もないということ。怒りよりも死してなお両親が人として扱われていなかった哀しみが、ユジンを襲っている。

「親の罪は息子の罪だ」という言葉は、ヒソンをずっと苦しめていることが
後にわかる。

ヒソンはエシンのことを「あなたは花のようだ」と称すが、
それが自身の本質を突いていないことで、エシンは彼を心の中には入れない。むしろ、固く閉ざす。

「花のような今日
花のようなあなた
花嫁の輿に乗ってぼくのもとへ」という手紙や

地面に「美」と書いて、「君たちの?美しさを落としたよ」って
ナンパ←するヒソンの軽やかさ。日本でどんだけプレイボーイだったのか、
想像に難くない。でも、あのチャーミングな柔らかな笑顔とトークのせいで
嫌な感じはしないから、女子たちが群がるのは分かる。
ただし、もちろんそんな手管はエシンには通じない。

1年の約束が、5年目で醜聞が聞こえてきて、そのまま10年帰らない相手に失望して、

「女との約束を守れないで、何が守れるというのか」
と語る。 

GRORYで向き合って座る二人を見て

「ずいぶんと親しげに見えた」というユジンに対し
「友が最善の形」と答えるエシン。
この時の、鼠グレー×白×ショッキングピンクに
差し色がサーモンピンクの組み合わせもかわいい。

エシンの許嫁が帰ってきた、という情報料は豚4頭分の20ファン。
その知らせを聞いたク・ドンメのイライラっぷりがかわいい。

ユジンの名前のアルファベット、読めるよーって自信満々なわりに、
最初のEしか分からなかったとこ、あのユジンの顔は、絶対、
「か、かわいい、、、」って思ってるに違いない!っていう表情。

もう、このへん、みんなかわいいの洪水。

Where are you from?
「皆、なぜ気にするのか」
の言葉に、山崎豊子の『二つの祖国』でも描かれていた差別やアイデンティティーの苦悩を、あんな一瞬なのに思わせた。もう、ほんとにこのドラマ、
一瞬も一秒も、無駄な描写がない。

ヒソンの元から連れ出したことが、エシンを助けたことに気づいて

「どうやら私はあなたに利用されたようだ」っていう言葉。
まさか、あの時も、あの時にも掛かってくるとは。。。(´;ω;`)ウッ…

陶工は、秘密証書を捜している最中に、ユジンの正体を知る。
日本の軍事演習のことで弟子に「なぜおまえが申し訳なさそうにしている?」と言った言葉で、あとから分かったけど、彼が「日本人」というものを一括りにしていないことが伝わる。

そうなんだよなー。「だから中国は、、」とか「やっぱり韓国は、、、」とか「これだから日本は、、、」みたいに、主語を大きくして語る人は信用できない。そんなまとめられるはずがない。どこの国も、どの人も、施策も政策も法も経済のやり口も、どれもいろんな面があるんだから、一概にまとめることができるわけがない。今は、大きな声で、主語を大きくして、大きなことを言う人が多すぎる。


一触即発の朝鮮半島。
「狙い撃ちではなく、空に一発撃つだけで戦争になる。
先に撃つか、それとも俺が撃とうか」

「朝鮮と違って、米国は国民を守る」

ドミたちを助けたことで、日本軍のツダが報復に来るが
通訳たちの活躍もあって、大事には至らない。

「心が傷付けられた」→「心が痛いほど遺憾だそうです」
みたいに、訳し方で、こんなにも変わるとは。


そして、ユジンがエシンに伝えに来る。

「最初は好奇心で、次は傍観。
今は収拾だ」

???

これじゃ、エシンじゃなくても分からない。

捕まえないのが傍観、銃を探さないで味方したのが収拾。
そして、なくなった銃を探しに米軍が来るから、山に来るなと忠告。

ドミたちを助けた理由は「勝てそう」
エシンの銃にひるんだ理由は「負けそう」
いちいち対比が鮮やかで、cool


なぜする?朝鮮を救うことを、と問うユジンに

「こんな国でも500年続いてきた。多くの人が命を懸けて守ってきた。
今、朝鮮は、気付かぬうちに踏みにじられている。
清国、ロシア、今は日本、米軍にまで。
誰かが戦わないと。」と答えるエシン。

誰か、ならば、誰でもいい。それなのに、
「なぜ、あなたが?」と更に問うユジン。

そして、、

「自分が心配なんだ」と伝える(≧∇≦)
見つめあうふたり、、
今回も先に目を逸らすのは、エシン。
鮮やかなマリンブルーの上着以上に眩しい、まばゆいふたり。。

雨の店先。
「どきましょうか、お嬢様」というク・ドンメ

僅かな時間だけど、静寂で、仄暗くて、否が応でも二人きりということを意識させられる状況。

ハマンが派手に倒した棚から落ちたものを、
初めは足で片づける←ク・ドンメに、人斬り以蔵のような冷たい血は
全く感じられない。

しゃがんで、散らばった筆をかき集めようとしたときに、
彼の指先の上を、つつ、、つつつつ、すすす、っと
エシンの朱色のチマが擦れていく。
その絹の感触。なめらかな刺激。
肌が見えているわけでも、重ねているわけでもないのに
とんでもなく官能的だった。

一瞬が永遠のような時間、というのは
きっと人生に何度かは訪れるのだが、ク・ドンメにとっては
まさにこの時がそうであったのだろう。

その時間は、エシンの「何をするの?」という声で終わりを告げる。
「何もしていない。

ただ、いるだけです。」

チマをぐっと掴み、向き合うふたりの激しい鼓動のような
OSTが、ここでも印象的だった。

ク・ドンメはエシンに対して、何もできない。
何もしていないし、この先に一縷の望みも想像だにしたことがないのだろう。ただ、いるだけ。ただ、その存在を遠くから見守っているだけ。
ただ、エシンの安寧を願っているだけ。

静かに血を燃やしている、そんなク・ドンメの姿が脳裏に残るシーンだった。

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