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ウブドゥ④ / 自作短編小説

ふと気がつくと、僕は乾いた岩肌からなる断崖絶壁の下にいた。どこかで見たことのある風景だけど見知らぬところ。まだ太陽が出ていない早朝のひんやりしたさわやかな空気。

あたりには誰もいない。

僕は少しだけ寂しさと肌寒さを覚えた、そう感じた瞬間あたりの空気が少し暖かくなった。静けさの中少しずつ明るくなる青い空を見上げていると、何かがいる。

姿は見えないが何かがいることを確信できた。一瞬恐怖したが、次の瞬間柔らかで暖かい波動をその存在は放つ。イメージだけど、オレンジ色の暖かな波動は優しい女性を感じさせた。

そして、その存在は、音声ではなく頭に直接響く言語にならないイメージで僕に語りかけた。

「さあ、行きましょう。」

どこへ・・?

そう考えるまもなくその存在が僕の手に触れたと思うと、僕の体は宙に浮いた。

そしてすごいスピードで空へ駆け上がっていく。

断崖の上まで出て、そして断崖の表面が足元に、そして地表が見えたかと思うと、グランドキャニオンを思わせる無人の峡谷が太陽に向かって果てしなく続き、上り始めた日の光に美しい陰影を描き出している。

地表はどんどん遠ざかり、日の光に照らされた空が鮮やかなオレンジ色から紫へ、そして濃紺へと次々に変化し、僕は成層圏を抜け出し宇宙の暗闇へと出た。

間抜けな話だけども、息ができないと思ったその次の瞬間呼吸が楽になった。

太陽が小さくなったかと思うと星空がはっきりと見え始め、そして流れるように後ろへ向かっていく。

「もう、着きます。」

その不思議な存在がまた直接頭にイメージを放ったかと思うと、前方に見たこともない金白色の塊が見え、そして次の瞬間に、僕は圧倒的な白色の塊の前に、中空を浮いていた。

とてつもない後にも先にも見ることはないだろう、エネルギーの塊から放つ光芒に照らし出され、ただ圧倒される僕に、その光から一つのメッセージがはっきりと僕の頭に響いた。無機質なようで暖かなはっきりとしたイメージで、言語ではなく、やはり直接頭に響く、語りかけるイメージで・・・

「安心しなさい。あなたは既に許されているのです。」

そう、はっきりと・・・。

・・・許されている?何を?・・・

そう考える暇もなく、僕の全身はこれまでに感じたことのない感謝と浄化のカタルシスに包み込まれ涙が溢れ出した。幸福と感謝に包まれて。

・・・・・

ふと、気がついて、僕は自分が夢を見ていたことに気がついて、老人の姿を探した。しかし、そこはあの老人の家の応接ではなく、僕が宿泊していたグランドハイアットの居室のベッドの上だった。

不思議に思いながら、わけがわからず、しかし浄化に包まれた感覚は目覚めの後も残り、僕は嗚咽を漏らしながら、浄化感に包まれながら、幸福と感謝の気持ちを抱きながら、ひとり泣き続けた。

早朝の澄み切った空気の中に、夜明けを告げるガムランの音が響いていた。

(了)

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この小説は、実際に私が24歳の時に経験した実体験に基づいて書きました。

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