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『永遠の今、絶ゆることなく』という言葉と出会った富山の不思議な喫茶店のこと。

今回はトップの写真(これ動画作品なんですが、その最初の部分をスクショしたものです)の作品を作るきっかけとなった、ちょっと不思議なエピソードの紹介です。

まずは富山への一人旅

去年のお正月、まだコロナのことは大きな話題になることなく、日本中がのんびりとしていた時の出来事です。

三が日が明けてすぐのこと、私は急に、ある知り合いのプロカのメラマンの個展を観にいこう!と思いたち、 一人富山!!へと一泊の旅に出かけました。

ず〜っとどこにも出かけず何日でも家に居て平気な私ですが(なのでこのコロナ禍でもそれほどストレスを感じることはありません)、何かの拍子で、ふと思い立って計画性なく出かける時があります。
この時もそんな感じでした。

奈良の我が家から大阪駅までは、マイナーな近鉄とJR在来線を使って約45分、大阪から金沢までは「サンダーバード」、そこから富山までは「はくたか」と、カッコいい鳥の名前がついた電車たちに乗って、都合5時間弱の旅でした。

写真展の素晴らしさと、その夜の富山の美味しいお魚たっぷりのご飯のこととか、書きたいことは山のようにあるのですが、今回は翌日に起こった出来事に絞って話を進めたいと思います。

路面電車と立山連峰

翌日、帰りの電車の時間まで、数時間あるので、よし!富山の海の方に行ってみよう、と早めにホテルをチェックアウトし、とりあえず海の方に向かって走っている路面電車に乗り込みました。

そして、海岸近くの終点で降り、展望台があるようなので行って見ることにしました。

途中何気なく周りを見渡したならば、まるで舞台の書き割りのような見事な立山連峰が見えるではありませんか!
美しかった〜!

後で聞いたところによると、この時季にそれほどくっきり見えるのは珍しく、どうもかなりラッキーだったようです!

不思議な喫茶店「天下堂」

もう少しで展望台、というところの殺風景な道に忽然と不思議な雰囲気を醸し出しているお店がありました。
展望台に行った帰りにはここに寄ろうと決めました。
そのお店の名前は「コモン天下堂」とありました。

このお店からそう遠くないとこ頃にあった小さな展望台は、予想以上に素晴らしく、ぐるりと360度の景色を見渡せて、富山湾も立山連峰も一望できて大満足!
ということで、さっきのお店へと向かいました。

不思議なお店の不思議なお話

そのお店はお客さんが誰もいなくて、入るのをちょっと躊躇ったのですが、お腹空いていたし(笑)入って見ることにしました。

一階はイギリス紳士が郊外で着るような洋服や、古いのかなんなのかよくわからない雑貨が置いてあり、店の隅にある棚の前には年配のダンディーなマスターと猫が座ってました。


喫茶はどうも上のようで、案内された二階は寒々としていました、がマスターはすぐに石油ストーブをつけてくれました。

カレーもあると聞いたので、それを注文して待っている間、店内を見回すと、落ち着いたレトロな雰囲気でどうもマスターが撮られたらしい素敵な写真がたくさん飾られていました。(今回の旅は写真を鑑賞することになっていたのか?)

で、カレーをいただいた後、セットのコーヒーを飲みながら、ふとテーブルの端に置いてあるメモのようなものに目がいき、印刷されているその文章を何気なく眺めていると、真ん中あたりに大きめの文字で
『永遠の今、絶ゆることなく』とあるのが目に飛び込んできました。


ちょっと不思議な言葉だなぁと思い、興味を持ってそこに書いてある文章を読んでみました。

その内容にえーーー!っと衝撃を受けた私は、一階のレジでお金を払うとき、マスターにそのことを話すと、書いてあった話をも少し詳しく話してくれたのですが、それは次のような内容でした。

お伽話のような老婦人とイギリスの詩人ウィリアム・ブレイク


マスターはこう語り始めました。

「何年か前の暑い時でした。涼しげな着物をお召しになった上品な老婦人がお一人でお店に入ってこられ、注文されたものをテーブルにお出ししていると、

その老婦人が
「あなた〇〇中学に通っておられませんでしたか」
と、聞かれたのです。
確かにそうだったのですが、驚いてなぜそれを?とお聞きしたところ、その当時その中学で教師をしておられたのだとか。

ただ、担任を持ってもらったわけでもなく、何かの教科で習った覚えもなかったのと、本当に自分は中学で覚えていることが少なく、その先生のことは記憶になかったのです。

『申し訳ありませんが、思い出せなくて・・・ただ、その中学時代に、ただ一つだけ覚えていることがありまして、それは中庭にあった時計台に刻まれていた言葉が、中学生の自分には、意味が理解できないけれども何故か心に残っていまして、それは『永遠の今、絶ゆることなく』という言葉でした。』というと、

その老婦人は
「私の選んだ言葉を覚えていてくれる生徒がいて嬉しいです。」
とおっしゃったのです。

なんでも、その方が東京の大学の英文科を卒業して富山のその中学に赴任してこられた時に、ちょうど新しく時計台が建てられる時だったらしく、当時の校長先生が『あなた、英文科卒だから何か気の利いたいい言葉を選んでください。』というようなことを言われたらしいのです。

そして、色々考えた挙句にその方が選んだのが、イギリスではシェイクスピアと並び称される有名な詩人、ウィリアム・ブレイクという人の詩で、その一節『永遠の今、絶ゆることなく』だったらしいのです。

本当に驚きました。
そして、後にも先にもその老婦人がご来店になったのは、その日だけだったんです・・・」

とマスターは話を結ぶのでした。


時間の不思議、ご縁の不思議

お伽話のようなその話を聞き、その他にもいろんな
会話を交わしてお店をあとにしたのですが、なんとも不思議な経験をした気分になりました。

またいつか富山を訪れることがあれば、必ずあのお店に立ち寄ってみようと思うと同時に、今度行ったらあのお店、なっかたりするんじゃないの?と思ったりもしました。

その後帰ってから、いただいていたお店の名刺にあった住所にお礼の手紙を出したならば、ご丁寧にお返事が届いたので、実在のお店であることは確かなようです(笑)。

時空の不思議をパラパラ漫画作品に

かなり前から「時間」ってなんだろう、とか思っていた私は、それからこの言葉が頭から離れなくなり、これを作品にしてみようと思い、BATシリーズに取り掛かる前、あれこれ創ったりしていました。

そして、一年以上たった今年の冬の終わりに作ったのが次の作品です。

「永遠の今絶ゆること」
2021 メモ用紙 サインペン

過去のあやふやな「記憶」と未来の不確かな「想像」を拠り所に私たちは生きている。
しかし、どこにも過去や未来などの実態はなく、そこにあるであろうと思い込んでいる記憶や想像は、自分たちの脳髄の海馬にのみ存在する。
そして、それらは瞬間瞬間、追加、消去、書き換え、補筆などがなされた最新版にアップデートされたものしか存在せず、一瞬前のデータは完全消滅している。

ここには、何枚もの紙の隅に「カコ・ゲンザイ・ミライ」の文字をかいてある。
子供の頃よく遊んだパラパラ漫画のようにめくってその文字を眺めてみる。
これを眺めながら、その一枚一枚に書いていた時間のこと、これまでの人生とこれから、そして永遠を思うである。

300年近く前のイギリスの詩人が書いた言葉が、摩訶不思議なことの連続で私のところまで届いたこと、それに触発されてまた何かを創作することになったこと、不思議で面白いです!人生は!

3000字超えの記事になりました!
辛抱強く最後まで読んでいただきありがとうございました!

#ウイリアムブレイク #即今 #富山 #立山連峰


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