勝手にアニメキャラのセックスを想像してみた

第35回 黄前久美子−3

麗奈たちの前では、自分の弱さを曝け出してきた事は何度もあった。だが秀一の前では、弱い自分を見せたことはない、と私は信じたい。
私は、そばに誰かいることを信じて目を開けた。
ところが、そこには、私以外の人間が見当たらなかった。
男も、女も。
大人も、子どもも。
成人も、老人も。
そばに誰もいないというのは、私に限らず、とてもしんどいのだ。
それでも私は、ありったけの勇気を振り絞って、叫び続けた。
「しゅ──いち──っ、どこ──? お願いだから、返事して────っ」
だが秀一から、返事が返ってくる気配はないことに、私は心底失望した。
コイツはこんな薄情なヤツとは! ヤツの正体見たり、である。
今度見かけたら、ただじゃ置かないからね!
怒りのあまり、体中の血が頭に上るのを感じながら、私は自分の格好を見た……全裸だ。
キョロキョロと周りを見回しながら、あてどもなくさまよっていると
「ドドドドドドン!! ドドドドドドン!!」
という、激しい衝撃を伴った打楽器の連打と
「キィ──────────ッ!!」
という、弦楽器の不協和音が、私の聴覚を襲う。
それらの音があまりに激しく大きい。我慢できなくなった私は、たまらず瞼を閉じた。
耳を塞ぎ、そのまましゃがみ込む。
じっとして音が鳴り止むのを待とうと考えていたのだが、打楽器も不協和音が生み出す音は大きく、激しく、強くなるばかりで、鳴り終わる気配がない。
それどころか、私の座っているところが激しく揺れはじめたからたまらない。グラグラッという揺れは手がつかないほど激しくなり、私の身体は右へ左へと転がった。
深い谷に落っこちてはたまらないとばかりに、私は必死に地面にしがみつく。
夢中でしがみついていたから、どのくらい時間が経ったのかはわからない。
地面の揺れが弱くなったと判断した私は、打楽器の連打と不協和音が、ある一定の法則に基づいていることに気がついた。
フォルテからフォルテッシシモの間で自由自在に変化する、打楽器の連打。
コン・フォーコ(燃えるように)でアパッショナート(熱情的)だが、ブリッランテ(華やか)でグラツィオーゾ(優美に)でエスプレッシーヴォ(表情豊か)に、旋律を奏でる弦楽器。
私はここが、一種のオーケストラだと判断した。音源はどこだ? と再び周囲を見渡すと……
「バシャーン!」
という音と共に、大量の水が上空から降ってきたではないか。
慌てて逃げ出そうとした私が、水が産み出す水流に、あっという間に飲み込まれた。
パシャパシャと水をかき、やっとの事で水面から顔を上げると、遠くには赤い何かが漂っているのが見える。
あれは、いったい何だ? 赤い物体の正体を探るべく、全力で手足をばたつかせたが、予想以上に早い濁流が、私を襲った。
叫ぶ時間もなく、私はその中に飲み込まれる。
手足を動かそうにも、濁流の勢いが強すぎて、動くこともままならない。それどころか、鼻から口から、水が勢いよく私の灰の中になだれ込んでくる。
「ゴボッ ゴボゴボボボボボボボボボボボボボッ」
あまりの息苦しさに、なだれ込む液体が温かいのか冷たいのか、感覚もわからなくなっている。
もうダメだ、このまま溺れて死ぬんだ、秀一のそばに寄り添えないんだと悲観した私は
「しゅ─────いち─────っ、どこ─────っ!!」
と、何度も何度も心の中で絶叫した。
だが、とうとうそれも限界だ。
視界はぼやけ、聞き取れる音もじょじょに小さくなる。嗅覚に至っては、大量に注ぎ込まれた液体で、機能停止寸前だ。
ごめんね、秀一。
私はもうダメだ……。
死を覚悟したその時、いずこから
「…………く……み……こ……」
と、秀一が叫ぶ声が聞こえた……ような気がした。
かすかな望みを抱き、最後の力を振り絞って、私は濁流の中を見る。
だが、彼はいない。
姿も見えない。
今際の際に聞こえた秀一の声は、幻想に過ぎなかったのか……
そう思った時、再び
「…………く……み……こ……」
という声が、かすかに聞き取れた。
声の聞こえる方に、視線を向ける。秀一の気配は感じられない。
もういいや、私は天国に行くんだ。そう思った瞬間……
「久美子! 久美子! おい久美子ったら!」
名前を叫ぶ声と同時に、激しい衝撃が私を襲った。
え、誰? 秀一?
ここは天国なのかな? 私の勘違いなのか?
「久美子! 久美子! おきろ!! おきろったら!! 聞えないのか? 返事をしろ!!」
といいながら。私の頭を激しく揺さぶる人間がいる。
私は、恐る恐る目を開けると……

「久美子! よかった……やっと目が覚めたか」
そこには、心配そうに私の様子を窺う秀一がいた。
「ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ」
「ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ」
2人の口からでる激しい吐息が、部屋の中に漂う。
秀一は、私の隣に寄り添い、やさしく私の背中をさすっている。
「……ねえ、秀一……私さ、いったいどうしちゃったのかな……」
「よかった……意識が戻ってくれて……」
ほっとしたように秀一は口を開くと
「久美子……よかったよ」
といい、やさしく私の唇にキスをした。
私は両腕を秀一の背中に回すと、彼の身体を私の身体に引き寄せた。
そして、何度も何度も舌と舌の交歓を楽しんだ。
「私……どうなっちゃったのかな」
「悪い……俺も全然覚えてなくてさ……」
頭をかきながら、すまなさそうに秀一が返答する。
「俺、下手をすれば、恥をかいたかも知れないんだぞ」
「……どうしてよ」
ぷっとほほを膨らませて、応じる私。
「何むくれてんだよ」
「知らない」
私は、視線をあさっての方に向ける。
「俺、意気込んでお前の中に入ったろ?」
「その割に、ずいぶんと手間取っていたみたいですけどね」
冷ややかな口調で応じる私。
「しょ、しょ、しょうがないだろ! お互い初めてなんだから!」
「まあね。それはそうだけど、さ……」
「やっとお前の中に入った時、俺、ビックリしたんだよ」
「一緒になれて嬉しいから?」
「それもそうなんだけどさ」
フーッ、と秀一は深呼吸する。
「お前の一番深いところ、熱くってトロトロだったんだ。あんまりキモチよくってね……」
「え? そんなにキモチよかったの?」
「ああ、そうさ!」
どや顔で応じる秀一、まじでウザい。
「挿れると同時に、お前の中で発射したらカッコつかないし、だいいちみっともないだろ。だから負けないようにグイッ、グイッグイッって腰を動かしたんだ。そうしたらお前はさ……」
うん、それは覚えている。秀一の腰の動きに合わせて、声を出していたのは。
「あの時のお前の声、ものすごくスゴいんだわ。久美子がこんなに大声を出すなんて思わなかったよ。隣近所に聞こえないかと、ヒヤヒヤしながら腰を動かしていたんだけどさ……」
秀一が覚えている範囲では、わたしは大声を出しながら、頭を左右に激しく振っていたらしい。
だが秀一も、相手に歓んでもらいたい一心で、一心不乱に腰を動かしていたから、私の様子を見ていなかったのだという。
秀一は我慢できなくなって、私に何度も何度も「いいか、いいか」と聞いたそうだ。
もちろん、私はそんなことは覚えていない。
私の中で果てた後、秀一はしばらくの間、私の上に乗っかっていたそうだ。
素敵だったと耳元で囁き、私の唇にキスした後、秀一は2人の身体が汗まみれだったことに気がついた。
タオルで私の身体を丁寧に拭き、ついでにウェットティッシュで、私のアソコの残滓を拭ってくれたそうだ。
「何度も何度も、俺は久美子、久美子って耳元で囁いたのに、お前はウンともスンとも言わない。頭にきて身体を揺すっても目を覚まさないから、俺は心配したんだぞ……」
その話を聞いた時、私はすべてを理解した。
私が何度も秀一の名を口にしても、一心不乱に腰を振っていた秀一が気づくはずがない。
打楽器の連打は、秀一が私の深いところを突いた音。
弦楽器の不協和音は、私の声。
渦巻きは、私が待ち望んでいた歓喜の瞬間。
そして、波間に漂っていた、あの赤いものは……。
私は、ゆっくりと上半身を起こすと、お尻の位置に視線を移動させた。
そこには、私が処女だった証が、少しだけ残っていた。
「気にすることないよ。この程度だったら、濡れタオルで拭けばなんとかごまかせるから」
「ありがとう」
「……痛かったか?」
私は、首を1回縦に振った。
「俺が入ってきた時、久美子は『っあぁ……!!』と叫んだ後、必死で歯を食いしばっていたから、腰を振りながら『やっぱり痛いのは本当なんだな』と実感したよ」
「……そう」
秀一は、右手でゆっくりと、私の髪を梳いてくれた。

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