私は香りで生きている。
久しぶり、note。
久しぶり、わたし。
もうずっと、頭の中で文章を読むことも、文字で打つこともしていなかった。
文字が書きたくなる時は決まって心が動いた時。今がその時だった。
ということは、今まで何もなく心も動かずただ惰性で生きていたということだ。
そんな私は何か心が喜ぶようなことを探して、化粧品を買おうと思い立ち、伊勢丹へ行った。
そこでリップバームを買った時、テスターでもらったヘアミストの香りがそれはもう私好みで何も考えずに「あ、これも」と追加した。
付けるとふんわりと優しくて、甘く心を躍らせてくれる香りだった。
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私は香水が好きだ。
というか匂いに敏感で、人の匂いや街の匂い、雨の匂いとか全てが鼻を通る時感情に直結してしまうから、香水とかが私にとって重要な存在なのである。
そしてなんかよく分からない思想で香水は一つだけ持つことに決めている。
理由は、全てのモノを平等に愛してあげられないから。
"あげられない"と言う言い方もなんだか上から目線な気もするが、モノが増えた時に必ず優先順位が生まれて使ってあげられないモノが出てくるのが嫌だった。
それで、高校生の頃から使っていた香水の香りになんだか心が踊らなくなり今回のテスターの香水に一目惚れしたから購入したというわけだ。
そのヘアミストをとても気に入った私は毎日つけていた。
けれども、ヘアミストは香水とは違って香りの滞在時間が少ないから使う頻度が高かった。
なので減りが早くてならばいっそ同じ香りの香水を買ってしまおうと伊勢丹に向かった。
香水を購入する時、もうしばらく伊勢丹には行かないかもしれないからと別の香水のテスターももらった。
その香りは、私を驚かせた。
鼻を通り脳にまで直接匂いが充満し立ちくらみそうになるほどだった。
甘く、でも刺激的で、強く焼き付いて離れない。そんな香りだった。
あろうことか、もう今買おうとして目の前で紙袋に入れられるのを待つ香水と迷ってしまっている私もいた。
けれども、私は知っている。
香水は当たり外れが激しく、お店で香る匂いと家に帰ってから嗅ぐ匂いとでは違うことがあるということを。
だから、一度考えを持ち帰ることにした。
家に向かっている際も手にぶら下げている紙袋の中の香水と、お店で嗅いだ香水をずっと天秤にかけていた。
初めて嗅いだ匂いは家に帰るまでずっと手の中に残り、購入したばかりの香水の香りをわすれさせてしまうのほどだった。
まるで、優しくて時に甘く変わらぬ愛情をくれる男性とうまく付き合っている最中に、刺激的で一瞬で心を奪われ不意に思い出しては少しの涙を流してしまうような男性が現れたような気持ちになった。
それを思った時、買わなくて良かったと思った。私が纏う香りはあんなに強くなくていい。安心する香りを求めているのだから、と。
なんだか、たった香りだけの話なのにやけに心が悲しがっているのに気づいて辛い。本当は買ってしまいたかったんだと思う。まるで告白してもいないのに失恋した気分だ。
匂いって罪だ。
でも大丈夫、今日買った香水は絶対私の香りにしてみせるよ。
私に買われたことを後悔はさせない。安心していてね。 と今日も、買った香水を纏った。
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