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【ドラマ】タクシー・シアター1

(TVドラマ、映画の企画書とあらすじ)

タイトル

「タクシー・シアター(仮)」

ジャンル

ドラマ(60〜90分)

カテゴリー

テレビドラマ、長編映画

企画概要

日常生活においては誰しも自分の全てをさらけ出せず、常に「ある人物」としての自分を演じながら他者と接している。一度きりの相手であれば自己を誇張したり、なすがまま振舞ってしまうこともしばしば。そのコミュニケーションの形態をコンセプトに、タクシーの車内という密室において乗客が演者、運転手が観客となり物語が展開される。

登場人物

  • 石成(30)有能な会社員だが人付き合いを好まない。学生時代、演劇にのめり込んでいた。

  • 伊達(27)ラッパー志望で上京したが現在はタクシー運転手。運転が荒く、気性も激しい。

  • 堀之内(30)学生演劇時代の石成のライバル。貧しくもアングラ演劇を続けている。

  • 吉川(24)石成の同僚女性。偶然石成の秘密を目にし、忘年会の席で問い詰める。

  • メンディア(22)東南アジアからの出稼ぎダンサー。拉致され密航船に乗せられる。

  • 外国人マフィア:15人ほどの外国の犯罪集団。人身と臓器売買、麻薬、銃器などの密売組織。

あらすじ

大手企業に勤める石成。優秀な営業マンだが会社内での付き合いや友人も無く孤独な独身。ただ寂しい思いをしているわけではなく、学生時代からの生き甲斐である『演技』を続けており充実した日々を過ごしている。
しかし会社員の現在、その演技を披露する舞台は一風変わった場所。ある人物になりすましてタクシーに乗車し、役を演じるが如く運転手を騙す、いや信じ込ませる。「犯人を追跡する刑事」「自意識過剰な芸能人」「嘔吐寸前の酔っ払い」「スマホで忙しく売買するデイ・トレーダー」「行先に自殺の名所を指定する負債者」など様々な乗客を演じる。入念な下調べをもとにした役作りと状況設定、繰り返し行う個人リハの末に開かれるワンマンライブ。

唯一の観客であるタクシー運転手にすら知られることのない自分だけの悦楽、『Taxi Theater』。
仕事でも取引先からのクレームや上司への対応もマニュアル通りに完璧に演じて業務をこなしていく。理想的な人生を過ごしていた石成だが、会社の後輩の吉川に「杖をついた盲人」を演じているところを偶然見られて怪しまれたり、学生時代の仲間の堀之内のアングラ演劇を覗きに行って自身の内に葛藤が生まれたりもする。
年末、会社の忘年会の席で酒に酔った吉川は石成が盲人のフリをしてタクシーに乗っていたと追及し、解散後も同じ方向の電車だからと駅まで着いてくる。石成は吉川を振り切るため普段プライベートでは絶対活用しないタクシーについ乗り込んでしまう。すると偶然にも以前「刑事」になりすまして乗った時と同じタクシー運転手の伊達で、伊達も石成に気が付く。ほろ酔い気分も手伝い、石成はバレないようにと刑事のままなりすます。即興演技の実践をかねて警察署内の裏話や凶悪事件などを語れば、伊達の方も上京してきた身の上話などをして車内は盛り上がる。
しかし信号待ちの最中、路地裏に停められた黒塗りのワゴン車に女性が拉致されるのを偶然目撃する。石成が制止しても刑事だと信じ込んでいる伊達はそのままタクシーで尾行する。繁華街を離れ港へと向かうワゴン車を気付かれずに追っていたつもりだったが、埠頭のコンテナ置場で袋小路に追い込まれてしまう。

石成と伊達はワゴン車の外国人マフィアに拘束され、路上で拉致されたメンディアと共に密航船でA国へと運ばれていく。メンディアは泣き叫び芋虫のように暗い船底を這いまわる。伊達が石成は刑事だから心配するなと伝え、没収されず捨てられたメンディアの古いガラケーを暗闇の中から探し出し110番する。しかし石成が本当の刑事じゃないことや突飛な状況の為なかなか警察に信じてもらえず、何度かかけ直している内に電波が途切れる。
騒ぎに気付きマフィアが船底に降りてくる。芝居を打つ石成はA国との間に利権を持つ有名政治家の息子を装い、解放しろとメンディアに下手な英語で通訳させる。マフィア達は全員で大笑いし、1人が片言の日本語で石成に「ヘタクソ」と吐き捨て船上へと戻っていく。
絶望で泣き叫ぶ気力も失ったメンディアは居もしない日本人婚約者や偽物の労働ビザなど自分の嘘を告白すると、伊達もラッパー時代に虚勢を張っていた自分を思い出し自嘲する。しかしこの状況下での人生の告白は縁起が悪く聞こえる。小窓に映る灯りを見てA国まで間近だと気付く石成、3人で海に飛び込み泳いで逃げることを提案する。絶対無理だと答える伊達のメンディアだが「暗い海に飛び込めば見つからない」「3人だと浮力が上がり寒さも防げる」「海流で自然に陸まで流される」などさも理論的なことを並べられ石成を信じ込む。互いにロープで繋がれた身体を少しずつ動かしながら階段を登る3人、ようやく甲板に出たところでマフィアたちに見つかってしまう。手を繋ぎ合い意を決して海に飛び込む石成、伊達、メンディアそれぞれが演劇、ラップ、ダンスのステージから喝采を浴び客席へ飛び込むイメージがオーバーラップするマフィア達は3人が飛び込んだ漆黒の海に向かって闇雲に銃を撃つ。

エピローグ:数年後、A国の街角で佇む石成。しんしんと雪が降る中で1台のタクシーが停まりドアが開く。石成が中を覗くと運転席と助手席に伊達とメンディアが座っている。後部座席に無言で石成が座るとメンディアは薄らと微笑み伊達が自動ドアを閉める。ゆっくりと走り出すタクシーは雪が降り積もる街の白い世界へと消えていく。

企画意図

本作品の主題である、演技とは相手を「信じ込ませる」ことを終盤で3段階に表現する作り。

  1. 外国マフィア相手には石成の演技が通用しない:主題の破綻。

  2. 伊達とメンディアを信じ込ませ、3人で海に飛び込む:主題の回復。

  3. エピローグはドリームシーケンスやイメージショットではなく、3人は実際に助かったと観客に信じ込ませる:主題の対象の変換

その他

東京都市圏を舞台に主人公の石成が乗客として演じる人物に合わせて新宿、六本木、町田、北千住など異なる街の風情をそれぞれに描写する。

残り1日で別記事に脚本の出だしをサンプルとして書く予定。

#創作大賞2022


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