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Beiraxというカメラ

令和3年になってから出番が増えてきたカメラに、Beier社のBeiraxというカメラがあります。
細かい年代などは不明ですが、おそらく1937年頃にドイツで作られたカメラで、コンパクトながら中判6x9フォーマットの撮影が出来る逸品です。

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出番が増えた理由としては
・モノクロのブローニーフィルムも自分で現像するようになった
・感光トラブルがあったけど、モルト貼って解消した(みたい)
・やっぱり6x9は超絶エモい
というものがあります。

今日はこのカメラについて、ご紹介しようと思います。

入手経緯と感光対策

昨年、ヤフオクで5,000円くらいで手に入れたものですが、前の持ち主の方が大事にされていた個体なようで、蛇腹の破れやピンホールもなく、レンズも綺麗な状態。

シャッターも1/25、1/50、1/100の各速度で(おそらく)ある程度正常に切れているようです。

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この手の蛇腹カメラにしては、とんでもない当たり個体を引いたのでは、と一人でテンション爆上げになったのをよく覚えています。

さて、このカメラで撮った写真ですが、最初に撮影したフィルム以降、不思議なことに「4枚目〜6枚目あたりで、写真の右下と左上に感光が発生する」という問題がありました。

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レンズや蛇腹の問題であれば、おそらく全コマで感光が発生するだろうと考えましたが、不思議なことに1〜3枚目と8枚目はほぼ確実に感光なし。

たまーに7枚目にもうっすら感光が生じるんですが、4~6枚目はほぼ確実に感光する、という謎現象。

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フィルム巻き取りは、巻き取り側スプールに直結したダイヤルを回して行う、という非常にプリミティブな構造でしたが、「特定のコマだけ、特定の場所に特定の形で感光が生じる」という症状から、

・フィルム蓋に破損はないし、よくよく観察してもモルトの類が貼られていた形跡は見当たらない
・でも、製造からかなり長い年月が経っており、所々金属パーツに歪みが出ているようだ
・ひょっとしたら、巻き取り作業の際、特定のコマを巻き上げるときに蓋が動くか何かして感光しているのでは

という仮説を立てて、結論
「じゃ蓋と本体が重なるところ、光が漏れちゃいそうなところにモルト貼って漏れを防止しちまえ」
という対処をすることにしました。

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結果、若干ではありますが蓋の開け閉めが硬くなったものの、感光の症状は見当たらなくなりました。
直射日光が射し込むような、感光が生じやすいような環境で撮ってみましたが、現時点で問題は再現されていないので、とりあえず解決という扱いにしています。

ちょっと変わった操作方法

このカメラは、僕が他に持っているカメラとは大幅に使い方が変わってきます。

御歳80を超える我が家の最長老ですので、当然のようにオートフォーカスやら自動露出なんて最先端機能はついてません。
何なら距離計もなく、挙句シャッターボタンもありません。
シャッタースピードは最速が1/100秒、あとは1/50、1/25秒と、バルブという選択肢があるのみです。

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レンズは105mm F4〜F32のレンズがついていますが、これは35mm換算するとざっと45mmくらい。
大昔のレンズですので中心から外れれば外れるほど、ぼやけてしまいます。

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そしてファインダーは本体上の「枠」を展開して覗き込むというタイプ。

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一度、いつも現像をお願いしているショップのお姉さんにお見せしたところ

「え、これファインダーは…? どうやってシャッター切るんですか??」

とたいそう驚いておられました。


まずこの枠を覗いて構図を決め、レンズ部分にある穴にレリーズケーブルを突っ込みます。

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露出はもちろん完全手動。F値とシャッタースピードで調整しますが、シャッタースピードは3択なので、ほぼF値の調整がメインです。
ちなみに、シャッタースピード1/50まではギリギリ手振れせずに済みますが、1/25になると手持ちでは難しかったです。

フォーカスは目測で、レンズについているダイヤルで被写体までの距離を設定し、レリーズを押してシャッターを切る、という手順で写真を撮ります。

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ぶっちゃけた話、恐ろしく面倒臭い上にピントが合ってるかどうかも目分量、露出も目分量という、アナログ極まるデバイスです。

Beiraxの強みと特徴

このカメラの何よりの強みは、蛇腹を畳めばせいぜい幅10cm、長さ20cm、厚み3cm程度におさまるコンパクトなカメラなのに、6x9のフォーマットで写真が撮れる、というポイントです。
そして露出とピントがきっちり合えば、ちょっと驚くレベルでキレイに写すことができます。

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同じ6x9フォーマットが撮れるカメラは、今我が家にはMamiya Univesal Pressがありますが、このカメラは恐ろしくかさばります。
重さこそバケペンほどはないものの、250mm砲を取り付けると、総重量で約4.5kgくらいになってしまいます。

乾坤一擲レベルで気合を入れて、6x9の写真を撮ろう、と心に決めて撮りに出かけるには良いですが、
「ちょっとお散歩ついでに撮ってこようかな」
くらいの気軽さでは、出かけて20分くらいで心が折れます。つい先日も折れました。


レンズの性能などは、現代のカメラとは比較にならないほどチープなものかと思います。
シャッタースピード最速1/100など、桁を一つ間違えてるのでは?と疑うレベルです。
ただ、そんなカメラでも、今も充分(?)写真を撮ることが出来るのは、アナログなメカが好きな身としては感動すら覚えます。

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この記事に貼り付けた6x9の写真は、全てこのBeiraxで撮影したものです。
このカメラが作られた当時、今から84年ほど前というと、まだ第二次世界大戦前。まだまだカラーフィルムは一般的ではなく、写真はもっぱらモノクロフィルムで撮影されていたことと思います。

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もちろんカラーのフィルムを入れればカラーの写真を撮ることはできますが、このカメラの良さを活かすとしたら、それはやっぱりモノクロなのかなーとも思います。

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これからの楽しみ方

最近はモノクロフィルムで写真を撮って、自分で現像してスキャンするといった楽しみ方をしています。
現像のやり方によっても写真の出来はだいぶ違ってくる、という点について、最近ようやく少しずつ理解できてきたところです。

Beiraxの写真は全体的にコントラストが低めになるような印象がありますので、現像時間を長めにしてみたらどうかな、といったところも今後試したいポイントです。

デジタルカメラ全盛+スマホカメラの性能が飛躍的に向上している現代で、蛇腹の、しかも80年以上前のカメラを使って写真を撮る意味って何? と自問自答してしまうこともありますが、大体の場合の答えは

「楽しいから良いンだよ」

に落ち着きます。

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現像しないと画像をみられない
構図もだいたいしか決められない
フォーカスなんて目分量
露出だって手動で調整
挙句シャッターボタンすらない

こんなカメラを使うのがタマらなく楽しい、という僕のような変人は、きっと蛇腹カメラを好きになれると思います(`・(エ)・´)b

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