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.* 特別に配慮を要するこどもへの対応(0~2歳児)❸ *.

おはようございます!

特別に配慮を要するこどもへの対応についての最後の記事になります。

※家庭訪問保育の理論と実践というテキストの紹介になります。

前回までの記事⇩

特別に配慮を要するこどもへの対応❶

特別に配慮を要するこどもへの対応❷



❺保育者の役割

⑴乳幼児期の発達課題達成のための援助者

発達心理学者のエリクソンは、社会との関係を重視した心理・社会的的発達論を展開し、出生から死に至るまでを8つの段階に分けて、各発達段階の課題を示しています。

乳児期の課題 ——— 「信頼」

この時期は自分の欲求を満たしてくれる大人の存在、特に母親や保育者を通して基本的信頼感を獲得する時期にあたります。

幼児期前期の課題 ——— 「自立」

歩行の確立により自由に歩けるようになったこどもは、特定の大人を安全基地として自分の世界を広げ、食事・排泄・睡眠等の生活習慣が自立に向かう時期です。

幼児期後期 ——— 「自主性と自己コントロール」

言葉が自由に使えるようになると同時に、こども同士の関りが増え、あそびやけんかも経験しながら「自主性と自己コントロール」を身に着ける段階です。

また、「保育所保育指針」には、乳幼児期の発達の特性、おおよその発達区分や特徴が示されていて、これらは保護者にとっても保育に携わる人にとっても一つの指針となっており、自分の保育を見直す時、保護者の良き相談相手として助言するとき、何が足りないのか、なぜうまくいかないのかと立ち止まって考える時のヒントになります。そして、発達を援助するとは、こどもの「年齢」に合わせた保育をすることではありません。そのこどもの「今」を把握し、「次」へ進むためにそのこどものできそうな個人的目標を設定してあげること、設定をクリアしたらほめてあげること、つまり「それでいいんだよ」と認めてあげることです。

保育者は、こどもと共に過ごす時間の中で信頼関係を形成し、日々の保育の中で一人ひとりの発達を援助できる立場にあります。こどもの伸びる力を信じて、保護者と共に協力し寄り添ってこどもを見守り、援助していきましょう。


⑵行動モデルとしての保育者

親子に関わる大人としての保育者の3つの役割

①こどもに基本的生活習慣を身につけさせたり、あそびを通じて発達を促す役割

②行動モデルとしての役割

➂親とこどもの間に立って、間を取り持つ調整役としての役割


こどもと親は常に相互関係にあります。神経質なこどもを育てている親は、こどもがぐずりそうなことは避けるようになり、低出生体重児や病気のこどもを持った親は、元気に育ってくれればよいと祈るような気持から、知らず知らずのうちに過保護になってしまうことが多く見られます。

落ち着きがないこどもは歩き始めるとあちこち行ってしまうため、親は一日中後を追いかけたり、「だめよ」と制止して泣かれることの繰り返しで疲れてしまっています。

こだわりが強いこどもを育てている場合には、育てにくさと一抹の不安を感じながらも、それなりにこどもに合わせて生活しています。

言葉が遅いこどもの場合は、他児の様子を見ると不安になり、一生懸命言葉を教えては、「言ってごらん」と言わせようと頑張ってしまうこともよく見られます。


保育者が「気になる行動」を目にとめる時、背景にはこのような親子関係があり、そこには「くせ」があると思われます。親はただ一生懸命やってきてあまり意識はしていないのですが、3歳を迎えてこどもが親と離れる時が近づくと、これでよいのだろうかと思い始める場合が多く、みんなと同じようにできないと「困る」のではないか、過保護にしすぎたから今日から自立させようなどと親の「くせ」を変えさせようとしたりします。しかしこどもは、「くせ」をすぐに変えることはできません。親の迷いと焦りはこどもに影響し、こどもは抵抗します。親は感情的になったり、手が出てしまったり、思い余って相談へ行ったりします。このように余裕がなくなった親は、頭ごなしに「だめ」と言ったり、「この子は何をやってもできない」という低い評価を下してしまっている場合が多いため、そのに保育者のような第三者が入ることで、関係が変化することが期待できます。こどもも親以外の大人と接することで気分が変わり、理解されることで落ち着き、ほめられることでやる気が出るかもしれません。親も、気分リがフレッシュして余裕をもって接することができたり、こうすればいいんだという発見がある場合もあります。このように親子関係が安定することで、良い循環が起き、気になる行動に変化が出ることも期待できます。


⑶楽しさを共有する保育者

こどもと信頼関係を築くためには、あそびを通じて共感できる体験をすることが最も有効です。楽しいあそびによって五感を刺激することは、身体や手指の機能の発達を促したり、心をハッとさせたり、発声を促したりします。そして何よりも人が好きになり、人に注目し始めます。もっと遊びたい、もう一回やろうよという要求が生まれ、それを人に伝えようとします。伝えたいことがある、伝えたい人がいる、ここからコミュニケーションや言葉が生まれます。真似るという学習に必要な基盤も、大好きな人の行動や動作に注目することから生まれ、それを真似ることで何かを一緒にする、同じだという共感が生まれるのです。


このようにあそびには素晴らしい意義がありますが、こどもによって好きなあそび、苦手なあそび、関心のあるものないものがあり、その好き嫌いが極端なこどももいます。

あくまで無理をさせないこと、はじめは好きなあそびから入ることを心がけるのがよいでしょう。こどもは、自分の嫌なこと、したいことを分かってくれる人には心を開きます。


⑷言葉かけの工夫

「できたね」「じょうずだね」や、「だいじょうぶ」「いっしょにやろう」といった安心させてあげる言葉はどのこどもにも嬉しい言葉かけで、基本的に否定的な言葉は使わない方がうまくいくようです。

例えば、小さい子を押してしまいそうな時、「押しちゃダメ!」と言うのではなく、「いいこいいこしてあげようね」と具体的にわかりやすく言ってあげましょう。ダメと言うと行動は止まりますが、何をすればよいのかわからないのです。もし、言った通り「いいこいいこ」ができたら、ほめることを忘れないようにしてください。ほめるとは「それでいいのよ」と肯定することになり、正しい行動を身に付けさせることができます。

「おかたづけしなと、おやつあげませんよ」という二重の否定表現は分かりにくいので不親切です。「おかたづけしたら、おやつたべようね」という言い方のほうがよいでしょう。

また、何かを諦めなけれればいけない時、「ばいばい」「おしまい」「またね」「ざんねん」などの言葉が役に立ちます。気持ちに区切りをつける言葉で、何回か繰り返しているうちにだんだんそういう気持ちになっていきます。

こどもによって言い方は工夫しましょう。落ち着きがないこどもには、その都度視線の中に入って、短く、分かりやすく(具体的に・視覚に訴える)伝える方が効果的です。

こだわりが強かったり、コミュニケーションが苦手なこどもには、穏やかな声で、視覚に訴える方法で分かりやすく、前もって、早めに言ってあげると、不安が少なくなるようです。


❻あそびを通して、こどもの発達を促す方法

⑴身体を使った楽しいあそび

・公園の遊具

・触れ合いあそび

・パペットやぬいぐるみの人形劇

⑵身近な素材を使ったあそび

・ボール

・新聞紙

・段ボール

・ままごと

・クレヨン

・ねんど


‣‣まとめ‣‣

子育てや保育の現場において、「あ、この子ちょっと気になるな」と思う場面があるにもかかわらず、適切な言葉のかけ方が分からなかったり、関わり方がわからなくて困っている人はとても多くいると思います。

まず、こどもの気になる行動には様々な要因が関係し、それにより引き起こされているということを理解し、適切な声かけや関わりを心がけ、こどもの発達を促していきたいですね。


※家庭訪問保育の理論と実践というテキストのなかから、特別に配慮を要するこどもへの対応についてご紹介させていただきました。


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