読書感想文 MEGA MAX

皆さんは知っているだろうか、『小説家になろう』というサイトを。
そう、あの初心者からプロまで有象無象の小説家が集う小説投稿サイトだ。私は昔から本を読むのが好きで、この前話題になったツイートのようにご飯を食べるときも何か読んでないと落ち着かずに成分表とにらめっこをしていたタチの人間だ。

私がこのサイトにであったのは中学のころ。無料で(質はピンキリだが)沢山の物語を読めるというのは月々の小遣いが2000円だった当時の私には非常に魅力的だった。

そして数年前、一本の作品に出合った。その題名は

『「奴は四天王の中でも最弱」とバカにされていた土属性(♀)ですが、魔王軍辞めてスローライフを送ることにしたら追放された勇者(♀)と一緒に暮らすことになりました。あと、なぜか結婚することになりました。』

だ。嘘だと思うだろう?ぶっちゃけ私も思っている。現在進行形で。
私は百合というコンテンツが好きで、小説家になろうでもおおむね百合小説を漁っていた。そんなある日見つけたのがこの小説だった。

長すぎる題名、ありがちな設定。追放系で四天王系で最弱系でスローライフ系だと??陳腐さのテーマパークか??精神的余裕があれば当時の私はこういう生意気なことを言ってそのままスクロールしていただろう。とんだクソ野郎である。
稀に見るレベルで百合に飢えていた当時の私は「どんなクソ小説でもいい。どんなに短くても良いから百合を読ませてくれ……」そう言いながら作品ページを開いた。そう、それはまるで砂漠でわずかな水を求めて彷徨う旅人のような心境で。

しかしそこで私に待っていたのは陳腐さとは無縁なエキサイティングで意外性に満ちた、最高の小説だった。

私は夢中で読み進め、最新話まで1時間半で読み進めてしまった。こんな体験は二度目、神林長平著の『戦闘妖精雪風』以来であった。

四天王の土担当だった”不滅のエルドラ”は周りからは大きなゴーレムとして認知されていたが、実はその外見はエルドラが造り出したものに過ぎず、その実態は不健康そうな肌色の美少女だった。エルドラは異世界から召喚された勇者ユウリに倒されたことを機にもともと冷遇されていた魔王軍を(勝手に)抜けだし、ひとりスローライフを送ることを決意する。しかし定住の地を探す途中でオークに襲われるエルフを助けることになってしまい、なんとか撃退したものの魔力切れで倒れてしまう。しかも運び込まれたエルフの里で因縁の勇者ユウリにばったり出会ってしまい……?

といった具合に進んでゆく話はあらすじだけ書けば一見何の変哲もない泡沫なろう小説に聞こえるだろう。しかしこの作品はその軽い読み口の文体に素晴らしい描写力が加わり、表現力だけでもほかの追放系とは一線を画している。
エルドラのほの暗い過去や、ユウリがエルフの村に居た理由など物語に適度な湿度が加わり、ただの俺TUEEEEではないことは勿論、百合小説としても二人のもどかしい空気感を大いに楽しむことができる。しかもエルドラが作り出すゴーレムは前述のとおり搭乗式で、ロボットアクション小説の文脈で読むことも可能だ。何?全部私の好きなやつで出来たバイキングか何かか?

著者の友情氏は他にも一本小説を執筆されており、こちらは少々ダークだが百合で、とても良い小説だ。

『「奴は四天王の中でも最弱」とバカにされていた土属性(♀)ですが、魔王軍辞めてスローライフを送ることにしたら追放された勇者(♀)と一緒に暮らすことになりました。あと、なぜか結婚することになりました。』は本日一章が終わり、とてもキリがよい。二章が始まる前に、この最高の百合小説に追いついてみるのはどうだろうか。

ところでエルドラーンの見た目はどんな感じなのだろうか。やっぱりスーパーロボット系?勇者ロボ系だったら題名ともマッチしていて面白いかもしれない。リアルロボット系にしても意外性があっていいよね。
以上。

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