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Day Dream Dance D.C.

ここはショークラブ “Wish apon aStar”
特別なショーの為に集められたはずの5人の落ちこぼれダンサー達。
来る日も来る日も地下倉庫の掃除をさせられてそろそろ5人の我慢も限界?
レッスンは!? ショーは!?
ダンス嫌いのオーナーには何か計画があるようで…

スポットライトの下で華麗なステップを踏む予定が
カビ臭い地下室で地団駄を踏む毎日 。
こんなはずじゃなかったのに…。
いつか夢見たあの場所に今アナタは立てていますか?

ダンスのスペシャリストがアナタを魅了するだけの話ではありません。
「頑張る」のスペシャリスト達が音楽に合わせて汗を振り撒きアナタを【起きたまま見る夢の世界】へ連れて行く話です。

空想実現集団TOY'S BOX

新井薬師「ウエストエンドスタジオ」で三上夏生さんご出演「Day Dream Dance D.C.」を2回観劇。
ウエストエンドスタジオ、栗生さんの「赤の女王」以来だから5年ぶりか……。
ショークラブが舞台なので予想はしていたが、想像以上にがっつり踊る舞台だった!

訳あってショークラブを閉じたいオーナー。
そこに集められた5人の落ちこぼれダンサー。
まあ、オーナーの「理由(母子の確執)」とか、落ちこぼれたちの「結束」といった内容・展開自体はまあ「ベタ」っちゃあベタ。
大きな「驚き」みたいなものは正直ない。
でもそれが良い!
特に終盤、小林が語る「オーナーの亡父の願い、母親がここを建てた『真相』」。
普通にホロッと来たよ……しかも小林の説明なのに!w

初見時は、あの結末には
「え? ここで終わるんかーい!」
だった。
ただこの後の「結果」を描いちゃったらそれこそ「野暮」なのか?とも思ったが。

ただ不思議なもので、2回目は「分かって」いるからだろうか。
初見時はちょっと消化不良な気がしたラストがストンと胸に落ちた。
やはり舞台は複数鑑賞しないとな……。

泣き所も「分かっている」からこそ初見より泣いてしまう。
これは演劇や映画が好きな人なら分かってくれると思うけど。
まあ「泣き待ち」みたいなもんではあるんだけど。

個人的に
「めちゃくちゃ笑って随所でホロっと泣かせる」
コメディーがお芝居の中では一番大好きなんだけど、今作はまさにそれ。

そしてコメディーには、最初から最後まで爆笑まみれ、てのももちろんあるけど、今作はワンシーンだけ「笑い一切なし」のガチなとこがある。
終盤のオーナーと主人公のモノローグの対比。
ショークラブの、そして先代オーナーへの思いを2人がそれぞれに語り合う。
あそこは本当に引き込まれた……。
どちらが正しいわけでもない。
いや、どちらの言ってることも/感じている思いも「共に正しい」。
「真実」なんて、人の数だけある。

アカネが「いかにも主役」じゃあないのが今作の良いとこ。
何ならキャラの濃さで言えばダンサー5人の中で一番薄い。
だからこそ皆をエンカレッジできる。
でも
「音楽が有って踊りたい仲間がいれば、ここはもうダンスホールでしょ?」
「どこだって、ダンスホールでしょ?」
と言ってた当人が、実はすっごくこのショークラブという「箱」に囚われている(そしてそれはオーナーと表裏!な)のが深い。

オーラスのアカネの、ヒーローもの(?)に絡めた発言もちょっと空回ってるというか割とメンバーだけでなくお客もちょっと置いてけぼり感あるんだけど(苦笑)、むしろそれだからこそ「いかにも主役です!」ではない感をきっちり最後に回収してて良いなぁ、って思った。
あそこでめっちゃ良いこと言ったらアカンと思う。
「明日おいしいご飯を食べるために(頑張ろう)!」
この脱力感というかクスッとする感じ。
良い。

役柄的にはオーナーの部下、中村さんに惹かれた。
トップの有能かつ冷静な補佐、でありながら、どこか「情」を捨てきれない、というかトップの言動に少し心を痛めている辺りとか……。
あとシリアスとコメディの両方を縦横に渡っていく感じが上手い。
「真相」を知ったオーナーが勝負を約束して去った後、追いかける時の「大木さんっ……」がいじらしくてホロッときた……。
ダブルキャストの舞台なのに演じた俳優さんはワケあってシングルだったとのこと。
いやはやお疲れさまですよ……。

ダンサーではババちゃんが素敵。
メンバーがオーナーから
「努力は報われるんだろ? ならお前たちより、早く、先に努力している人間が勝たなきゃ、報われなきゃおかしいだろ!」
とバチボコに言われた言葉を受けて
「そう言えば、ショーに出て輝いていた人達は全員、ずっと前から努力してたな」
と素直に自分の非を認める。
あのシーンたまらなく良い。

三上さん演じるドイちゃん。
謝ってばかり、というのは控えめ&誠実な人柄の「一面」なんだろうけど、実はそれって「責任の放棄」でもある。
だからこそ
「私も!ショーに賛成です」「私にとっては『次』が今なんです」
とはっきり言うシーンの「強さ」は、単なる「彼女の」意思表示ではなく、自分はもちろん「仲間の」人生にも責任を負う覚悟を感じてグッと来る。

エンジェルの「絵に描いたような」オネェ感の演技(演出)はLGBTへの理解が進んだ昨今としてはちょっとどうかなぁ……とは思いつつ、「生き方」を語るあのシーンの長台詞にはやはり胸打たれる。
「信じて待つって言うのは文字通りの、その場でじっと船が来るのを待つってことじゃないの。激流の中、押し流されないように、少しでも前へ。通りかかる船を自分で見つけられるように、信じて足を前に出し続けることを本当の意味で『信じて待つ』っていうの」
そう、「待つ」とは受け身ではないのだ。

オーナーの人生訓って育った環境(実際は多分に本人の不幸な思い込みだが)のせいでひねくれたものになった、ってのはそうなんだけど
「終らない悪夢なんて無い。覚めてもろくな現実じゃないけどね」
「明けない夜は無いよ。心底嫌な一日が始まるけど」
「咲かない花は無いよ。枯れない花もないけどね」
てのは一面の真実ではあるんだよね……。
前者だけ見るのも人生。
後者まで考えてしまうのも人生。

あれだけダンスを憎んでいるオーナーのダンスが一番上手い(役柄上もそうだし実際演じてる方のダンスめちゃくちゃ綺麗だった)、てのも苦い皮肉が効いている。

随所に挟み込まれるダンスシーン。
有名どころ多くて楽しかった。
ヘアスプレーとか鉄板だよね!

J-Popも結構あって、特にいきものががりの「じょいふる」とSuperflyの「タマシイレボリューション」は懐かしくて嬉しかった!

なお、踊ってるときちゃんと歌詞口ずさんでる三上夏生さん可愛かったです!(推し贔屓並感)

あと上記した、アカネの「どこだってダンスホールでしょ?」のセリフの後にくる、Mrs. GREEN APPLEので「ダンスホール」では、アカネの持った画鋲を皆で少しづつ分け合う振付があるんだけど、あれって何だかこの作品のテーマをギュッと象徴しているようで泣いちゃう。
最後結局アカネがまた全部持つとこで泣き笑い。
やっぱり「めっちゃ笑ってちょっとうるっと来る」お芝居が好きなんだよなー!

以下おまけ。
階段を生かす、ってのはウエストエンドのならではの演出あるあるなのかもしれないけど(たまたま観た2作品がそうだっただけ?)、最初に5人が降りてくるシーンで、それぞれのキャラがちゃんと「説明されている」の上手い。
なおドイちゃんのオドオド感は2回見ただけでも進化していた!

5人の名前とつなぎに書かれたA・B・C・D・E、がちゃんとリンクしているのニヤリ、なんだけど……。
あれ? エンジェル、は「A」じゃない???(無粋なツッコミかw)

あとチケットが可愛い。
作品内でも大事な道具であるカセットテープを模している。

ちゃんと表裏でテープの「巻き」が一致してるの良すぎ。

きっと普通のチケットよりお金かかるんだろうけど(やめなさい。苦笑)、素敵なアイデア~。
捨てずにしおりとして使おうかな。

逆班も1回くらい見ればよかったかなー、だけ反省点。

(1119追記)
「マリアナ海溝!」のこと書くの忘れてた。
実は今作、コメディーあるあるの「毎回違うフリーアドリブ」シーンがそんなにたくさんは無い。
その貴重な(?)やつがこれ。

大木の
マリアナ海溝のように深い……」
と言う言葉を受けて、大木と中村でボケツッコミをしまくる。
いわゆる「言葉ボケ」の天丼ってやつ(伝わる?w)。
パワハラ解雇!」とか「マリファナ最高!」とか繰り出す。
2回目(楽日)は1回目よりやり取りが多かった気がする。

こういうのに「違い」出るから、やっぱ逆班見とけば良かったな~。

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