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初めてのカラーリング

昨日、生まれて初めてカラーリングをした。地毛が真っ黒で一度も染めたことのない自分には大きな冒険だ。それまでは染めようと考えたこともない。

自分の気持ちを動かしたのは娘のカラーリング。現在音大生の娘は高校時代からカラーリングしたいと言っていた。高校時代にもやりたいと希望していたが「大学生になってからね」と説得し続けた。

念願叶った娘は大学でデビュー。しかし、娘のカラーリングはそれまでの私のイメージを大きく覆した。

いわゆる茶色ではなく自然な地毛のような茶色、いや黒にちょっと茶色が入ったような色である。髪につやがあり、むしろ黒髪だったときより遥かに美しい。娘の変身具合を見たときから、密かに自分もやりたいと思ってしまった。

それまでの私のカラーリングに対するイメージはすこぶる悪い。ぱさぱさの傷んだ髪。色が落ちた頃のプリン髪。色によっては下品に見えてしまうなど悪い印象しかなかったのだ。

それに対して娘が選んだ色は、落ち着いて品があり「これだったら自分もできるかも」と思ってしまった。しかし私が同じ色にしたいと言うと、娘はぶーたれた。「真似しないでよ!」と怒られる始末。娘に反対され、なかなか実現できなかった。

やがて娘も同じ色に染めるのに飽きて、当時の色より明るめに染めるようになった。今では私が同じ色にしたいと言っても全然反対しない。

満を持して私は髪を染める決意をした。それまでも染めたいとは考えていたが、色々思うことがあり、自分を変えたいと思ったのだ。

いよいよ当日、思わず鏡で自分の顔を見てしまう。
「もうこれまでの自分とはさよならだ!」と新たな決意をするかのようにまじまじと真っ黒な髪の毛に注意を向ける。そこには自分が内に秘めてきた色んな思いがある。

美容院ではドキドキしながらカットしてもらった。今回は顎が出るようなショートボブ。元々自分はロングが好きではないし似合う方でもない。顔がおとなしめなので、ロングにするとボブやショートに比べ暗くなってしまう。

ついに髪に薬剤が塗られる。ひんやりとした感触と匂いが、かつてパーマをかけていた頃を思い出させる。私が選んだのは娘と同じグレーベージュ。ベージュを塗ると透明感が出て、髪につやが出るそう。これだったのだ!私が娘の染めた色を美しいと思ったのは。

できあがった自分の顔を鏡で見る。そこにいたのは、いつも見慣れた自分とは違う顔。何だかこれまでの自分より明るくなったような気がした。これで私は生まれ変わることができるのだろうか?

帰り道も気分が明るかった。同じ服を着ていても違う人になったかのよう。人の視線も心なしか違う。きっと一度髪を染めたことのある人はこんなマジックにかかってしまのだろう。

帰宅し、重大な事実に気づいてしまった。せっかくイメチェンしたのに誰も見せる相手がいない!娘は元夫のところに行っている。次の日も誰にも会うわけでもない。

思い切って娘にLINE電話をした。娘に新しい髪を見せたかったのだ。悲しいかな、娘はお風呂に入っているのか全然出てくれず。こうして私の輝かしい日はあっさりと幕を閉じてしまった。


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