ゲームと競技と金
eスポーツ元年って結局いつだ。
今回は僕が不定期にブツクサ言っているやつについていいかげんある程度はまとめておこうと思ったので書くことにした。
最初に言っておくが、僕は一般的に使われる「ゲーム興行で賞金とかガッポガッポ!」という意味でeスポーツという言葉を使うのには否定的で、ビデオゲームを使って一定のレギュレーションのもと競い合うこと(以下ゲーム競技)には肯定的な立場だ。
賞金とか関係なくただ「おまえはこのゲームがうまい」という名誉のためだけに競い合うことをよしとするビデオゲーム原理主義者だ。
それを踏まえた上で読んでもらいたい。
まず、この記事を書こうと思ったのは東京都の主催する「東京eスポーツフェスタ」の実施要件などについて話題になっていたのがきっかけだ。
この大会「賞金はない(副賞として物品提供は可)」「最低でもひとつは老若男女みんなできるやつ」「CEROレーティングA(ようは全年齢対象)のタイトルが対象」といった条件があるのだが、主に賞金がない点でなんやかんや言われている。
全年齢対象のほうもなんか言われているが「おとなも こどもも おねーさんも。」ってだけだろって感じなのでわりとどうでもいい。
老人方面もゲーセンのクソジャンケンマシーンとか出すまでもなくテトリスでいいでしょテトリスで。ゲーセンいったら延々とテトリスやってるおじいさんとかよく見かけるでしょ。
※ 「上海ジジイを忘れるな」との指摘がありました。確かにその通りだと思いますが、タイトルをズラーっと並べるのもアレなので代表的なものとしてテトリスを挙げたということでどうか
少々話が脱線したが、今回メインになるのはタイトルにもあるとおりゲームと競技と金の話だ。もっと具体的に言えばeスポーツと賞金の話だな。
今てきとうに「eスポーツ 賞金」などでトゥイッター検索をかけたりしたらわかるが、「賞金もないのに誰が出るんだ」だの「賞金がないならeスポーツではない」だのといった主張がポンポンでてくるはずだ。
こういうあほがたくさん出てくるようになってしまった本邦のゲーム競技意識の低下は本当に残念だ。
古のシューティングキャラバンなどは言うに及ばず、そこら中のゲーセンで格ゲー大会が開催された時代や、
スーパーメトロイドや悪魔城白夜で人類には不可能と思われたルートでタイムを縮めて競うひとびと、
イカの甲子園とかその他もろもろ、賞金もないのに「おまえはこのゲームが一番うまい」という頂点だけを目指して競いあうひとびとはそこら中にいる。
近年ではRTAJapanなども盛り上がっており、日本はゲーム競技の先進国だというのは明らか[独自研究]だ。
だが、ひとびとは「日本はeスポーツ後進国だ」という。
eスポーツとはなんだ?
みんなだいすきWikipedia大先生によると
エレクトロニック・スポーツ(英: electronic sports)は、コンピュータゲーム(ビデオゲーム)をスポーツ・競技として捉える際の名称である。
とある。
ならば日本はeスポーツ先進国ではないのか?と思うが、最初にも書いた通り、現在eスポーツという言葉は「ゲーム興行で賞金とかガッポガッポ!」という意味で使われるというのがポイントになる。
さきほどの「賞金がないならeスポーツではない」といった意見が珍しいものではないことからもそれは分かるだろう。
つまり「高額賞金のためにゲームで競うこと」について日本は後進国というわけだ。
これは実際その通りで、海外なみの高額賞金大会などは開催できないようだし法改正なりうまい回避法なりでなんとかなるようになってほしい。
勘違いしてほしくないが、僕はゲーム競技のプロシーンを否定するつもりはまったくない。だってゲームがうまいだけでメシが食えるの最高じゃん。そういうひとはもっともっと増えてほしい。
プロがゲームの腕前だけで生活できる世の中になるのはいいことだし、それを目指してプロゲーマーの学校にいくとかいうのも、まあ失敗して身を滅ぼしたりしないならいいだろう。
僕が問題視しているのはひとびとの意識だ。
「誰がこのゲームで一番なのか決めようぜ」というときに賞金の有無というのは関係ないだろう。
優勝したところで生活の足しにもならない、ただ同じゲームのプレイヤーたちから「お前が一番だ」と認められるだけ。
そんな大会に熱中するのが我々[誰?]だったはずだ。
今最前線にいるプロのトッププレイヤーだって例外じゃない。
彼らもロクな賞金もない大会で実績を残してきた結果スポンサーがついたり、高額賞金が出る大会が開催されるようになった結果としてプロとしてやっていけるようになったのであり、最初からゲームの腕でメシを食う展望なんてものはなかったはずだ。
みんな熱中していた闘劇とかもせいぜい賞金数万円かそこらでとてもそれで生活していけるようなものではなかったのを忘れてやないか?
それなのに今eスポーツといったらまず目にするのは金の話ばかりだ。
確かにプロについては国内だけでもちゃんとメシが食える環境を作ったりといったことは重要だろう。
しかし、一番大事なのは誰が一番なのかを決めることであって賞金なんかでは断じてない。
というか賞金の問題とかしょせんプロの業界の問題でしかないんだからそっちで勝手に解決してくれ。賞金に拘らなくても実業団形式とかなんか解決方法はなんかあるでしょきっと。
そもそもそういう金の話しか聞こえてこないものを観戦しようと思うひとがそんなに多いとは思えないというのが正直なところでもある。
じっさい金の話より「パキスタンからやってきた無名のプレイヤーが強豪を破りまくって見事大会で優勝するもそいつは現地では8位の実力らしい」とかいうストーリーのほうがよっぽど気になるし、その現場を自分の目で見てみたいと思わせてくれる。
結局観戦チケットによる収入だとか協賛金だとかもどれだけのひとがこの大会を見にくるのかというのが鍵なわけであり、観客は試合じたいの魅力やてっぺんをめざすやつらの熱い話に惹かれるのであって、賞金がどうこうというのはどうでもいいんだ。
(そういう点ではコナミのKONAMI Arcade Championshipや任天堂のSplatoon甲子園などといった賞金のない大規模大会の存在はとても大きい)
つまり、賞金なんてものはeスポーツの本質でもなんでもないんだ。
というか普通のスポーツでも話題になるのは賞金の話なんかではなく誰が1位になったとかそいつがどういうやつなのかとかそういう話だろう。
それなのに「賞金もない大会に誰が出るんだ」だのといった意見がそれほど珍しいものではないという程度に本邦のゲーム競技意識は低下してしまっている。
偏見だが、こういう意識が育った理由として金だなんだとプロの話ばかり流れてくる「eスポーツ」という言葉が自分と関係ないと世界のものと思うひとびとが増えてしまったことにあるのではなかろうか。
eスポーツというのはプロの世界の話であり、普段遊んでいるのとは別のもの、そういう風に思ってしまっているのではないか。
それは違う。
賞金がなければeスポーツではないと思うひとに聞きたい。
野球はスポーツか?
おそらく大多数のひとはそうだと言うだろう。
では、賞金も何もない草野球はスポーツか?
これも同じくみなそうだと言うとおもう。草野球はスポーツではないと言われたらこの先の話ができないので草野球はスポーツ!スポーツです!
eスポーツも同じはずだ。
君たちが毎日のようにやっているなんらかのゲームの野良対戦とかもeスポーツだ。
発売されたばかりのゲームを一番早くクリアするのを競うのもeスポーツだ。
ゲーセンの大会とかはもちろんeスポーツだ。
マインドシーカーRTAもeスポーツだ。
バーチャロンのエンディングでスティックぐるぐる回して救助艇がくるまでの時間を競うのもeスポーツだ。
ソシャゲでも条件揃えてスコアアタックだかタイムアタックだかやるのもeスポーツだ。
友達の家に集まってスマブラだのゴールデンアイだので誰が一番かを決めるやつも当然eスポーツだ。
ビデオゲームで一定のレギュレーションを決めて競うなら全部eスポーツだ。Wikipedia大先生もそう言っている。
賞金なんてのはゲーム競技の本質でもなんでもない。
ただ「おまえはこのゲームがうまい」という証を求め、そして成し遂げた姿にこそ皆が心を動かし憧れ、競い合うのだ。それを忘れてはいけない。
最後に。
別に競わなくてもいいからゲームをやれゲームを。
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