見出し画像

アジアでオープンなジオの祭典: 「FOSS4G ASIA 2023」に参加&発表してきました!

これは、12月に日替わりで様々な話題をお届けする
🌲 MIERUNEアドベントカレンダー 🗓️ 10日目の記事です!
昨日は山崎さんによる「Mergin Maps CE (Community Edition) をEC2にデプロイする」でした。

・・・

こんにちは!MIERUNEのソフトウェア・エンジニア、久本(@sorami)です。北海道では雪が降りはじめ、もうそろそろ自転車も乗れなくなる季節です。

今回は、韓国ソウルで開催された、フリーでオープンなジオに関する国際カンファレンス「FOSS4G ASIA 2023」の参加レポートをお送りします!

(ちなみに今回、韓国でいろんな美味しいものを食べましたが、一番びっくりしたのは「トッポギ・ワッフル」でした。写真は記事の最後に!)


FOSS4GとMIERUNE

FOSS4G(フォスフォージー)」は “Free Open Source Software for GeoSpatial” の略で、地理空間情報に関するオープンソースソフトウェアのことを指します。また、同名のカンファレンスが世界各地で開催されています。

私たち位置情報技術者集団「MIERUNE(みえるね)」は、その成り立ちからFOSS4Gと関わりが強く、これまでも数々のカンファレンスに参加したり運営に携わったりしてきました。今年(2023)だけでも、17の発表と、ふたつのワークショップを各地で行いました:

今年、コソボ🇽🇰で開催された「FOSS4G 2023 Prizren(グローバルなカンファレンス)」や、日本で久しぶりにオフライン開催された「FOSS4G 2023 Japan@FUKUI」の様子は、以前に以下の記事で紹介しました:

そして今年の11月末から12月にかけては、韓国🇰🇷で「FOSS4G ASIA 2023」が開催されました。

FOSS4G ASIA 2023

FOSS4G ASIAは、その名の通りアジア地域で開催されるカンファレンスで、アジアに限らず世界各地からオープンソースや位置情報技術に関わる人々が集う場です。

2004年にタイ🇹🇭のバンコクで始まって以来、前々回は2018年にスリランカ🇱🇰のモラトゥワ、前回は2021年にネパール🇳🇵のカトマンズで開催されました(FOSS4G-ASIA – FOSS4G ASIA)。今回は2年ぶりに、韓国のソウルにて、2023年11月28日から12月2日の日程で行われました:

(ちなみに、FOSS4G “Korea” も定期的に開催されています。そちらにもMIERUNEメンバーは過去に何度も参加しており、特に FOSS4G Korea 2014 ではMIERUNE創業前の古川(@Yfuru2454)が北海道のコミュニティについて基調講演を行いました

(また裏では、AWS Heroに任命されている桐本(@dayjournal_nori)が、米国🇺🇸のラスベガスで開催された「AWS re:Invent 2023」に参加していました。26名の会社で、3割近いメンバーが国外に行っていたことになります…!)

会場の様子

カンファレンスの会場は、ソウルの中心部、光化門(クァンファムン)エリアにある、ソウル都市建築展示館とソウル市庁でした。東京で言うと丸の内のような地域でしょうか。

ソウル都市建築展示館の入り口(会場は地下にある)
ソウル支庁(右に見える建物は日本統治時代の旧庁舎、現在は図書館として使われている)

メイン会場は都市建築展示館の地下にある、広くて洒落た空間でした。ただ、ここは外と繋がるオープンな場所のため、非常に寒いという難点がありました…(メイン会場以外は室内で暖かったです)訪れた日程でのソウルは、札幌よりも寒かったです 🧊

メイン会場の様子

そのことを考慮してか、参加者へ配られたノベルティキットにはカイロや毛布が含まれていました!壇上で発表する方々もダウンジャケットを着ていたりして、普段のイベントとはなかなか違った雰囲気でした。

参加者に配られたカイロ

この他にも都市建築展示館とソウル市庁に、少なくとも5つの会場があり、並行してセッションが進められました。

セッション1日目(11/29)と2日目(11/30)の夜には、公式の懇親会(Icebreaker, Gala Diner)が開かれました。立食形式で、二日目にはバンド演奏があったりと賑わっていました。

開始前の会場 - 貞洞1928アートセンター

またその他にも参加者らは各々集って夜のソウルへ繰り出し、韓国料理を味わったり交流を楽しんでいました:

クロージングセレモニーで報告された情報によると、今回は計31セッション、134の発表があり、参加者は420名だったそうです。

参加者数を国別で見ると、開催国の韓国が過半数で、次に日本からが43名とかなり多かったです。実際に現地で会期中、日本コミュニティのさまざまな方々とお会いすることができました。

クロージングセレモニーで紹介された国別参加者数

印象に残った発表やトピック

数多くの発表があり、もちろん全てを観ることができたわけではないですが、いくつか印象に残ったことを紹介します。

基調講演では、国際連合(UN)やOSGeoの方々が登場し、様々な取り組みを紹介されていました。日本からは国土地理院の藤村英範さんがクロージングセレモニーで登壇され、UNでのSmart Mapsの活動についてお話しされてました(Smart Maps for the United Nations,with the United Nations)。やはりこのような、技術知見だけでないコミュニティ活動やビジョンのお話を聴くことができる機会は、FOSS4Gという場にふさわしいものだと感じました。

国土地理院の藤村英範さんによるクロージングセレモニーでのご発表

行政の取り組みとしては「デジタルツイン」がよく挙がるトピックでした。日本からも国土交通省のPLATEAUに関する発表がいくつもあり、また会場でブースも出展されていました。韓国でもソウル市では「S-MAP」という3D都市モデルビューアーが提供されており、これは工事情報やCCTV、天候等など様々な情報を閲覧することができ、高機能で非常に驚きました。またソウル市庁内にも、スマートシティの常設展示がありました。各国の取り組みや知見がこのような場で共有されるのは、それぞれにとって有益なことだと思います。

ソウル市庁の Smart Seoul Exhibition Hall

オープンソースのWeb地図ライブラリ「MapLibreに関する発表もいくつかあり、そのひとつではスポンサーとしてMIERUNEも紹介されていました!(State of Maplibre, Jashanpreet Singh):

アジア地域ということもあり、またジオというドメインの特性からも、「ローカライゼーション」に関する話題がたびたび挙がり、興味深かったです。例えばネパールのAadesh Baralさんによる発表では、彼の開発する、OpenStreetMapでの地名のローカライズ(英語以外の現地表記の入力など)を助けるOSM Localizerというツールが紹介されました(Empowering Local Communities: Enhancing OpenStreetMap Localization with OSM Localizer)。「そこで暮らす人よりデータに詳しい人はいない」などという彼の言葉には深く頷きました。

個人的に一番刺激を受けたのは、PMTilesの開発者でもあるProtomapsのBrandon Liuさん(@bdonによる発表です(The state of Asian web map localization with OpenStreetMap, Protomaps and MapLibre)。アジアには世界人口の過半数がおり、また多様な言語と文字があります。その上で、北米や欧州だけでなく同地域でより多くの人々が位置情報技術の恩恵を受けるための課題や取り組みが紹介されていました。例えばMapLibre GL JSはv3.4.1でCJKのグリフが綺麗になりましたが、これもBrandonさんによる取り組みですし、他にも、まだ対応されていない言語・文字への今後の取り組みなどが解説されていました(当発表はアーカイブ動画で視聴することができます: [Asia Geospatial Week] FOSS4G-Asia 2023 Seoul_Day 2 - YouTube, 4:51:05~)。また彼はそれとは別にB2Bセッションでも、オープンソースとビジネスモデルの関係について論じており、こちらも大変興味深いものでした。

Brandon Liuさん - アジア地域の円中に、世界人口の過半数がいる(Valeriepieris circle

ここで全てを紹介はできませんがこれ以外にも様々な発表があり、また色々な方々とお話することができました。

FOSS4G ASIAは、メイン会場だけですがライブ配信されており、そのアーカイブを現在も視聴できます: GISWorld - YouTube(英語), FOSS4G Asia 2023 Seoul 1일차 - YouTube(韓国語)

MIERUNEの発表

MIERUNEからは6名が参加し、うち4名が発表しました。また、B2B(Business to Business)SessionにもMIERUNEは参加・発表し、世界各国のジオ組織との交流を深めました。

Expanding the use of FOSS4G through QGIS workshops (Pakhin Yuen)

Expanding the use of FOSS4G through QGIS workshops :: FOSS4G-Asia 2023 Seoul :: pretalx

MIERUNEからの一つ目の発表は、ユエンからの「QGIS講習会」に関するものでした。

MIERUNEは、QGISプロジェクト運営委員会に承認されている日本で初めての認証機関で、「QGIS証明書プログラム」により公式の受講証明書を発行しています。証明書の発行費用はコース費用に含まれており、この費用はMIERUNEを通してQGISプロジェクトに還元されるため、QGISのプロジェクトに貢献することができます。このプログラムについては、MIERUNE QGISブログにある以下の記事もご参照ください:

講習会には、入門から上級までさまざまなコースがあります。ご興味ある方は、ぜひ次のページをご覧ください!: QGIS講習会 | MIERUNE QGIS トレーニングキャンプ | MIERUNE

Modern-style Historical Map Design with QGIS (Hajime Kato)

Modern-style Historical Map Design with QGIS :: FOSS4G-Asia 2023 Seoul :: pretalx

別の会場では加藤(@chizutodesign)から、彼の開発する現代風デザインの地図サイト「れきちず」が紹介されました。

様々な大量の資料をもとに、デザイナーとしての力量を発揮したこの力作には、参加者からも「どうやってPOI(Point of Interest, 地点)を同定したのか」「デザインへ歴史の雰囲気を活かすにはどうしたらいいか」などといった質問が飛びました。

ちなみに、加藤は今年(2023)11月に作品集『地図とか路線図とか』(天夢人)を出版しました。先日開催された出版イベントでは、このれきちずが、より広く持続的に発展していくためにMIERUNEが公式にバックアップしていくことが発表されました。

Introduction to Data Visualization with deck.gl (Norihiro Narayama)

Introduction to Data Visualization with deck.gl :: FOSS4G-Asia 2023 Seoul :: pretalx

二日目朝には、楢山(@northprint)による、データ可視化フレームワーク「deck.gl」に関する発表がありました。

deck.glは、WebGLを活用した大規模なデータ可視化のためのフレームワークで、多様でクールな表現を作ることができます。

デモを交えたこの発表では、韓国で誰もが知る「バナナウユ(바나나우유, バナナ牛乳)」の3Dモデルが登場したりして、会場を盛り上げていました 🍌🥛 (そのデモは→で見ることができます!: https://foss4g-asia-2023-demo.vercel.app/ )

 https://foss4g-asia-2023-demo.vercel.app/ 

AIST 3DDB Client: an open-source web application for the 3D database (Sorami Hisamoto)

AIST 3DDB Client: an open-source web application for the 3D database :: FOSS4G-Asia 2023 Seoul :: pretalx

二日目に別会場では私(@sorami)が、産総研のオープンソース3Dビューアー「AIST 3DDB Client」を紹介しました。

これは産総研の依頼を受けてMIERUNEが開発したもので、産総研の3Dデータベースにある地物を簡単に閲覧することができます。以下のサイトで、実際に使ったり、コードを見たりすることができます:

小さな会場だったのですが、立ち見が出るほどの盛況で驚きました。それだけ、様々な国の方々が、3D領域に興味を持たれているということでしょう。

B2B Session

この他にも、B2B(Business to Business)という、世界中の様々な企業が自社紹介をするセッションがあり、ここではユエンがMIERUNEについて解説しました。各地で取り組む方々と繋がることができる良い機会でした。

おわりに

アジアに限らず世界各地の方々と交流したり、業界のトレンドを感じたり、また我々の取り組みを紹介する良い機会でした!

人によってはどうしても言語の障壁が高かったりするでしょうが、それを補佐する技術も台頭していますし、そしてコミュニティの人々は好意的に受け入れてくれるはずです。日本からも積極的に、グローバルな場へ参加していけると良いなと思います。

次回のFOSS4G ASIAについては案内がありませんでしたが、FOSS4G Europe 2024は7月にエストニア🇪🇪のタルトゥで、FOSS4G 2024(グローバル)はブラジル🇧🇷のベレンで開催されることが決定しています。またそこでMIERUNEメンバーが、世界各地のFOSS4Gを愛する方々とお会いできるのを楽しみにしています!


・・・

告知: 「MIERUNE JCT」で ”FOSS4G ASIAトーク” をやります!

MIERUNEは、オンラインイベント「MIERUNE JCT(ジャンクション)」を定期的に開催しており、社内外のゲストが、カジュアルに様々な技術知見を共有しています。

次回は2023年12月13日開催で、ここでは「国際カンファレンスFOSS4G ASIA参加してみたトーク!」と題して、実際に現地参加された社外の方々とMIERUNEメンバーでパネルディスカッションを行います。こちらもぜひご参加ください!

前回の様子は、以下の記事で紹介しています:

おまけ: トッポギ・ワッフル

今回、韓国でいろいろな美味しいものを食べましたが、一番驚いたのは、ソウルの原宿こと明洞(ミョンドン)の、とってもお洒落なカフェで食べた「トッポギ・ワッフル」でした。

「”トッポギ”ってお餅だから、白玉みたいなことかな?それとも米粉のワッフル??」なんてワクワクして頼んだら、大きなワッフルと、普通にトッポギ(写真のお椀に入ってるもの)が出てきました。

辛いもの🌶️と甘いもの🍨を交互に、まあ美味しいんですが、食べててその振り幅に頭が混乱しました(笑)皆さんも韓国へ行った際には、試してみてはいかがでしょうか!

놀랐지만 맛있었습니다!

・・・

🌲 MIERUNEアドベントカレンダー 🗓️ 、明日は小松(@satoshi7190)さんによる記事です。お楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?