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【2月2日京都市長選挙】京都を知ろう!~観光編~

1.はじめに

 京都市では、国内外から訪れる観光客の姿を日々当たり前に目にします。
政府は日本全体としての観光立国を目指し、2008年に新設された観光庁は「2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人」の目標を掲げています。事実、2010年からの10年間で訪日観光客数は約680万人(2009年)から約2700万人(2019年)と驚異的な伸び率を見せています。

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出典:日本政府観光局(JNTO)

 そんな日本国内でも京都市は有数の観光地であり、2018年の観光総合調査の結果では、外国人宿泊客数が前年から一気に100万人近く増えて450万人に達し観光消費額は1兆3千億円を超えて過去最高を更新しました。
しかしながらそんな京都市では、「観光公害」という言葉が広まっていることも一つの現実です。
 「観光公害」とはなんなのか、そして今後の京都市の観光のあり方とはどのようなものなのか、現状と課題を踏まえ考えていきます。

2.観光公害とは

 観光公害とは観光がもたらす弊害を公害に例えた表現であり、オーバーツーリズムとも表現されます。観光客の増加によって混雑が生じ、観光客の満足度が低下するばかりか地域の日常生活にも支障をきたしてしまうことで、結果的に地域としての持続可能性が低下するという問題を引き起こします。実はこの観光公害は京都市だけの問題ではなく、海外旅行が珍しいものでなくなった今世界的に広がる課題となっています。
 例えばスペインのバルセロナでは1992年のオリンピック開催を機に観光客が急増。2017年には不満を抱いた住民らによる反観光デモが発生し、「これは観光ではない。侵略だ」といった声まで上がりました。
 そんな現状に対し、北海道倶知安町で開いたG20会合では「安全や混雑、地域との関係性の観点から困難を生み出す」との認識を示す共同宣言を出しています。観光庁も観光公害に対する対策を余儀なくされており、日本でも企業を巻き込んだ様々な取り組みがなされようとしています。


3.京都市における観光公害

 冒頭で述べたとおり、京都市は日本でも有数の観光地となっていますが観光公害という言葉が市民の意識に根差し始めているのも事実です。公共交通機関や観光スポット付近の混雑、ゴミのポイ捨て問題、果てはホテルの乱立によるオフィス不足なども問題となっています。事実、許可施設(旅館・ホテル、簡易宿泊所)の数は以下の図のように急激に増えています。

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 京都市バスの混雑状況も、鉄道があまり発達していない京都市においては非常に重大な問題です。京都市交通局が2019年11月に実施した市バス運転手に対するアンケートでは、京都駅前や祇園、金閣寺、四条河原町の主要4エリアで「車内通路がふさがり、車内移動が非常に困難」「満員で乗り切れないほど激しい混雑」が、いずれも上位との結果が出ました。

 また、最近問題となった事例としては祇園付近での舞妓を追いかけるなどの行為です。その珍しさから、舞妓を見かけた観光客がカメラ片手に追いかけタクシーに乗る舞妓にまでカメラを向けるような場面も見られます。このような現象に「舞妓パパラッチ」という名称まで用いられました。


4.対策と問いかけ

 さて、そんな現状に対して京都市はどのような対策を講じているのでしょうか?
 現京都市長の門川大作氏は観光公害が問題とされる現状に対して2019年11月に次のようにコメントしています。
「京都は観光都市ではない。観光のために作られた町ではない。市民の皆さんの安心安全と地域文化の継承を重要視しない宿泊施設の参入については“お断りしたい”と宣言いたします。」(京都市 門川大作市長)
 これを受け京都市は、2020年度以降、地域住民の理解を得られない宿泊施設の新設抑制などに取り組む方針を示しました。また、市として富裕層の誘致に力を入れるとの態度を表明しています。
 その上で「持続可能で満足度の高い国際文化観光都市」を目指すとされており、これは具体的に以下のような都市を目指すものとされています。

市民生活と観光との調和の確保を大前提として,
・ 歴史的建造物や庭園,まちなみ景観,自然景観,伝統文化,現代文化,生活文化,
伝統産業など,京都の優れた文化を守り,育て,創造的に活用を進める都市
・ 観光,文化,経済を融合し,国内外から訪れる人々との交流を通じて,地域の発展
につなげる都市
・ 市民,観光客及び事業者に高い満足を提供する都市
出典:京都市

 京都市が発表した「京都観光振興計画2020+1」では、2013年の「京都観光振興計画2020」策定後に出現した問題とその対応を以下のようにまとめています。

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 また、地元の自治体でもマナー向上にむけた取り組みがなされている。観光公害の現状でも述べたような芸舞妓に対する撮影などは、無断で撮影しないことを呼びかける立て看板などがおかれ、巡回員も配置されるようになりました。
 しかしながら同時に、この観光公害という問題やそれへの対応は本当に本質的なものなのかという声も上がります。観光客を倦厭するような動きに対し、市民と観光客がwin-winの関係を築くにはどうすれば良いのかを考えることが必要かもしれません。

<参考文献>
「『満員で乗り切れない』祇園、金閣寺など4地域で激しい混雑 京都市バス運転手アンケート」京都新聞(2019年12月30日 2:00)https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/61692
「京都市、ホテル・旅館の総客室数が「前年比20%増」の4万5千室を突破 インバウンドを追い風に増加止まらず」Airstair(2019年6月12日)https://airstair.jp/kyoto-hotel-occ/
「年別訪日外客数」日本の観光統計データ(2020年1月31日最終閲覧)https://statistics.jnto.go.jp/graph/#graph--inbound--travelers--transition
「観光公害巡り京都市指針 市民生活、第一に 混雑対応、マナー対策など /京都」毎日新聞(2019年11月21日)https://mainichi.jp/articles/20191121/ddl/k26/010/381000c
「京都市観光消費額が最高を更新 外国人増も日本人客減少」京都新聞(2019年7月3日21:34)https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/8871
「京都、「観光公害」への対応が課題に」日経新聞(2019年12月30 2:00)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53940140X21C19A2LKA000/
「この30年で観光立国になった日本。その現状と取組について」PUBLIC RELATION OFFICE(2020年1月31日最終閲覧)https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/201904/201904_04_jp.html
「観光庁について」国土交通省(2020年1月31日最終閲覧)http://www.mlit.go.jp/kankocho/about/vision.html
「京都観光振興計画2020+1」京都市(2020年1月31日最終閲覧)https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/cmsfiles/contents/0000252/252318/02honsatsu.pdf
「『観光公害』対応策を共有へ G20会合で議論」日本経済新聞(2019年10月26日 20:00)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51454790W9A021C1EA3000/
「【特集】熱狂の『舞妓パパラッチ』問題...市長も憤り「京都は観光都市ではない!」とホテルお断り宣言..."観光公害"が深刻」mbs(2019年12月02日放送)https://www.mbs.jp/mint/news/2019/12/03/073640.shtml
「許可施設数の推移(令和元年12月末日現在 速報値)」京都市(2019年12月31日)https://minpakuportal.city.kyoto.lg.jp/wp-content/uploads/2020/01/0116suii2.pdf


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