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龍神になった弟へ

小さい時から泣き虫でしたね。
母の姿が見えなくなると、すぐに大泣きしていたので、スーパーやデパートに行っても、私のように迷子になることはなかった。
初めての保育園の時も、朝から夕方までずっと泣いていたようですよ。

絵を描くことが大好きだった弟。
小学生の頃は学校で受賞され、母はあなたの才能を伸ばしたかったようでしたが、父が半強制的に少年野球チームに入れましたね。
男の子が生まれたら野球という父の願望だったのでしょう。
そこでも相変わらず泣き虫でした。
遠征などに行った帰りの車に乗りそびれそうになり大泣き。
私はそんな弟の姿を見て「なんですぐ泣くの!」と憤りを感じていたくらいです。

大人になるにつれ、私は親の顔色ばかりを伺うようになりましたが、あなたは親に気づかれないように、自分の気持ちに正直にやりたいことをしていましたね。
そんなあなたが羨ましかった。

バイクに乗り始めた時、臓器提供意思表示カードに承諾をしてほしいと言って、母を困らせていたようですが、まさかそれが数十年後に現実になるとは、誰も思っていなかったでしょう。

私もバイクに乗ることを憧れていた時期があり、二の足を踏んでいたら、「姉ちゃん、今したいことをしないで、いつするの?」と林修先生のようなことを言って、私の背中を押してくれましたね。
一緒に免許を取りに行き、私は中免、弟は大型。
あの時、一歩踏み出せたこと、今でもとても感謝しています。

教習所で颯爽と走る弟の姿はとても格好良かった。
そういえば、愛娘が2歳の時に「パパ、カッコイイね~」と、よく言っていたのを思い出しました。
今は大学生。とてもステキな女性になりつつありますよ。

そして私が20代の頃、タトゥーを入れたくなった時がありました。
そのことを弟に話し、2人で「どんな柄にする?」と話が弾みましたが、結局、何事も先に頭で考える私はシールで満足して終わり、あなたはいつの間にか足の甲に龍のタトゥーを入れていましたね。
あまりの行動の速さにビックリしました。

数十年後、あなたは4人の命を救いました。
家族を含め、周りの人たちは悲しい思いをしましたが、私はあなたが龍神になったのだと思っています。
R.I.P.

なぜか今朝、お経をあげている時に、タイトルや文章がすらすらと浮かんできたので、noteに書いておきたくなりました。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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