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オランダで心理専門家が考える:オランダ 医療・教育・心理の現場から! 大切なのは「自分はできる」と思える力

A君は普段は明るく愛嬌のある子ですが、気に入らないことがあるとすぐに手が出てしまいます。弟が自分が遊びたいおもちゃを使っていたり、母親が危ない行動を注意したりすると、ぽかっと手が出てしまうのです。その都度、学校でも家庭でも注意をするのですがなかなかやめることができません。ときには大泣きになったり、癇癪に繋がったりすることもあり、とてもわがままな子供だと思われてしまいます。

Bさんはお友達にとても優しく、思いやりのある子です。でも、時々相手の気持ちがうまく汲み取れなかったり、相手の子が何を求めているのかがわからず友達を怒らせてしまうことがあります。どう言葉をかわすのが良いのかわからなくなり、「みんなに嫌われている」と悲しい気持ちになっています。

お子さんの中にはうまく感情のコントロールができず、他人との関係をうまく築くことに苦しんでいるお子さんは現実にはたくさんいます。発達障害の有無に関わらず、怒りに達するポイントが低くて怒りっぽい子供や、相手の気持ちを十分に推し量るには未発達なのです。でも大人はつい怒った行動ばかりに注視してしまいます。実際にはどの子供も失敗を繰り返しながら試行錯誤して好ましい行動を獲得していきますが、中にはそれが時間がかかったり、発達がうまくいかないお子さんもいます。

セルフコントロールと自己効力感が鍵

上記のような状況を繰り返し経験してしまうと、子供たちは自己肯定感(自分はこれでいいという気持ち)を下げていき、自分の力を信じることができなくなってしまいます。そして大人や周囲の子供たちもその不適応行動ばかにり注目がいってしまいます。この自分からも周囲からの否定された感覚によるネガティブループが、うまく振る舞えない子供たちの自信を奪ってしまうのです。いわゆる二次障害です。

多くの場合、発達障害の症状があるから問題行動が生じていると考えてしまいがちです。でも、症状は軽度であっても状況にうまく合った行動がとれないから発達障害の症状が強調されてしまうケースも多々あります。逆を言えば、状況に合った行動がとれるようになれば、そのジレンマも少しずつ解消されていくのです。

状況にあった行動を習得するにはそのスキルを学ぶことが重要になります。私もお子さんたちにソーシャルスキルトレーニングを実施しています。これがうまくいくかどうか、その根底にはお子さんが自分のことをどう見ているかということがとても大切なのです。

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オランダの学校には当たり前のように、どの子もソーシャルスキルが学べる環境が整っています。視覚的に未発達な認知能力を補完する道具や構造がクラスに中に存在します。この良いところは、発達の速度を大きな問題にせず、どの子供の自律的発達を促すことができるところです。誰もが、速度はそれぞれでも「出来ている」感覚を身につけて成長します。特に、日本など海外から来たオランダ語を話さない子供たちが言語情報だけに頼らずに視覚的に判断できることが、発達障害かどうかという枠にとらわれずにどの子供の成長を促すよい例ではないでしょうか。

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