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読書感想文『絵を見る技術』

とても良い本でしたね〜。わたしは絵は理屈の占める割合がかなり大きいと思っているんですが、まさしくその理屈の部分を丁寧に丁寧に解説してくれています。

なぜその絵が良い絵なのか? そもそも絵において注目すべきところはどこで、何を見たらいいのか? 美術館でひとつの絵の前を行ったり来たりしたり何分も同じ絵をじっと見つめたりする人って何考えてるんですか?
って思ったこと、あるでしょ?

かくいうわたしも美術館に行くと絵を前に後ろ下がったり前に出てみたりして周囲の人々に不審がられながらも長々観察する方なのですが、この本を読んだらあなたも絶対そうしたくなります。絶対です。わたしも今後は美術館の滞在時間が5倍に増えると思います。"わかる"ようになります。絵の素養なんかなくても大丈夫。絵の素養がない人でも「なるほど〜〜〜!」ってなれるように、具体的な絵を観察→解説するということをたくさんしてくれます。とにかくいっぱい具体例が出てきてわかりやすいです。

絵を見る技術は描く技術と一体です。つまり、見る技術をつけると描く技術もあがるのです。これはマジです。よく絵が上手くなりたいならデッサンをしろ!と言いますが、あれは手を育てる以上に、目を育てるための修行でもあると思います。デッサンを通して、自分の脳が今まで認識してなかった世界を正しく掘り起こす。どのような手を入れれば良くなるのかを知る、それはすなわち、何が本質なのかを見極める必要があるということなので。ちなみに私はデッサンが下手です。もう二度とやりたくありません。トラウマです。逃げています。下手な絵を描くたびにデッサンから逃げるな!!!!!!!という声が聞こえてくるようです。

というわけで、ツイートでも言いましたが、お絵描き初心者はネットでイラスト講座とか見るよりこの本読んだ方がいいと思います。視線誘導とか動きのある絵の描き方、構図の与える印象、色の使い方などなど、そういう内容、イラスト講座でもあったりするけど正直〜……正直イラスト講座ってさ〜……まだ目の育っていない初心者には見分けつかないと思うんですが、下手すぎだろ人に教える前に美術予備校でも行けやってレベルの人が講座出してることって、かなりあるんですよ。書籍でもそうです。対してこの本は名画の見方ですから名画しか出てきません! 安心して読める。

この本が解説してるのは名画なので、萌えキャラとかイラストって感じの絵は出てこないです(強いていうならミュシャが出てきます)。それがとっつきにくいと感じるのであれば仕方ないけれど、文体は柔らかくて読みやすいですし、ぜひ読んでほしい……。まあこの本だけで上手くなれるわけじゃないから、あとは別途デッサンやクロッキーなどして鍛えたり、美術解剖学の本買ったりするといいと思う。頭でっかちになりすぎず楽しく描くのが一番だけど!

あーあと、「こんな感じで視線誘導してるんです!」とか「黄金比が使われてるんです!」とか絵の上に線引いて解説してあるのを見てさ、「うーん、そうかな、まあでもそうなのか……」とモヤモヤしながら飲み込んだ経験ある人、いると思うんですが、この本はかなり丁寧に説明してくれてるので大丈夫、ちゃんとわかります。ああ、そういうことだったのか、だからしっくりきたのね、だからあそこに目が行くのね、ということがわかると、絵を見るのも描くのも楽しくなると思う。

絵がある程度描ける人なら感覚的に知っていること、既知の情報も多いとは思うんですけど、それも平易な言葉で具体例とともにロジックを説明してもらうと、あーやっぱそうなんだ、って思って気持ちいいです。感覚だけでやるよりも安定感が出てくると思うし、お勉強はした方がいいね。

あと私みたいなガチ無教養人間からするといっぱい名画が出てくるってそれだけでありがたいですね。ほんとに全然知らなくて……なんなら現物見たことあってもタイトルとか作者忘れるし……教養をつけていきたいと思いました……。

最後にワークシートがついてたり、写真がいっぱい載ってたり、こちら側の体験を大事にしてるんだなという本自体の構造もよかったですね。私たちが絵を見て観察する、文章を読んでなるほど確かにとなる、そしてまた別の絵を見る、この本を読んでいるうちにそういう経験をさせてもらえて観察力がどんどん上がっていくんですね。ただ載ってる写真がちょっと見づらいのがつらいかな……カラーではあるんですけどね! どうしてもサイズや印刷の限界とかあるのかなそこは。本を大きくしたら気軽に手に取れる感じじゃなくなっちゃうし、まあ仕方ないのかなと思う範囲ではある。

とりあえず美術館行きた〜〜い! 今度ひとりで好きなだけ絵を見てこよ。

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