墓石

揺られながら見る景色

私は一生忘れることはないだろう

私は毎日電車に乗っている  理由は通勤
私が住んでいるところは海が近い
電車が発車するといきなり海が見える
とても綺麗な海
この海から私は元気をもらっていた

ある日いつものように海を眺めていると
なにかを感じた。
周りを見てみると
私と同じように海を眺めている人がいた。
その彼の横顔は美しく儚かった。

彼はいつも同じ駅で降り、どこかへ消える。
名前も年齢も知らない彼に惹かれていく私
話しかけることも無くただただ彼を見つめる
彼は気づかす海を眺める。

ある日のこと 急に彼がいなくなった
それが3日、4日と続いていく。

もう会えないのかな。

そんな気持ちで毎日通勤していた。

令和△年        街で彼を見かけた。

電車で見たような彼ではなく
ゴミ置き場に投げ捨てられたような彼
ボロボロで血だらけの彼

そんな彼を私は助けてしまった

「大丈夫ですか?!?!」

「痛っ、大丈夫じゃないかもっす」

「病院行きましょ!!!」

「お姉さんの家に行きたい」

「…え!?」

「よし決まり。家どこ」

「○○市‪✕‬区です」

「ここから近いじゃん。よし行こ。」

2人で夜の静かな街を歩いた。
そして2人で私の家に帰った。

「ただいま〜」

「人の家でただいまって…」

「思ったより綺麗にしてるじゃん」

「失礼な人、」

「ごめん、ごめん、」

「お名前知りませんよね?」

「名前なんて知る必要ないよ」

不思議な人だ。

それからのことはあまりはっきりと覚えていない。

朝になると男性は

「またどこかで」

そんなくさいセリフを残して消えた。

それ以来、彼には会えていない。

しかし家に一通の手紙が届いた。

彼からだった。

「この手紙を読んでくれることに感謝する。
  もうあなたと会えないで半年が経つ。
  あなたからしたら一晩きりの男。
  あなたに真実を伝えたい。
  私があの電車に乗っていたのはご存知だね。
  それは君を見守るために乗っていたんだ。
  君の亡くなった父は元極道だった。
  そのため敵が多く、娘が知られたら大変だと
  遺言に私に娘を守るようにと。
  それからずっと電車に乗り続けた。
  あの助けて貰った日は相手にやられた。
  あなたを守る力が私にはもう残っていなかった。
  この手紙を読んでいる頃、私はもういない。
  癌で死んだ。しかし私の事は気にしないで。
  私と父の分まで楽しく生きてください。
 
                                            桜井 直哉          」

私は泣いた。

今まで父がいない人生に何も考えたことはなかった
しかしこのような真実が隠されていた。



私は今墓参りに来ている。

そこには

桜井家

と綴られている。

お花を起き、手を合わせていると
後ろから母が来た

「お母さん!なんでここに?」

「あなたこそなんでここに!?」

母はびっくりした顔で聞いてきた

「まさかあんたお兄ちゃんに会った?」

私にはなんのことかさっぱりわからなかった。

母に今まで起きたことを全て話した

そしたら母は涙を流して笑った

「実はね私とお父さんはあなたが4歳の時に離婚してるの。それでお父さんがお兄ちゃんを引き取って、私があなたを引き取ったの。だから私たちは桜井じゃなくて田森でしょ?」

そういうことだったのか。

一気に涙が溢れてきた

私を助けてくれたのは実の兄だったのだ。

戸籍上は家族じゃなくても
家族は家族だ。

という父の教訓の元、兄は私をずっと
守ってくれていたらしい。

私はあの日、もっとかける言葉があったはず
その後悔と守ってくれていた嬉しさで涙が止まらなかった。


ありがとう。お兄ちゃん。大好きだよ。



それから私は毎年墓参りに行く。


お兄ちゃんがあの日私の部屋に置いていった


煙草を持って

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