カクテル

今日もここにいる

夜中まで呑み歩いている私がいる

一体何を求めてる

私は心を何で埋めようとしている

仕事終わり いつも寄るお店

1人の男の人が経営している小さなBAR

いつも私の話を聞いてくれる

ここが私の心の拠り所だった

毎週金曜日に行くあの店

行くと必ずモヒートを出してくれる

なぜモヒートなのか聞くと

「僕の気まぐれですよ」

と店主は必ず答える

そんなある日

いつも通り店に行く

「今週も疲れた!ねえねえ聞いてよ!」

私はいい報告がしたくて、ここに来た。

「あのね!私結婚することになったの!」

店主は少し間を開けて

「そうですか。おめでとうございます。」

「ありがとう!実感湧かないや笑」

そんな話をしている間にカクテルができた

しかし今日はいつもと違うカクテルだった

「あれ、今日は違うね。初めて違うの見た。」

「今日はブルームーンにしました」

そのカクテルはどこか寂しそうで、輝いていた

「なんで今日は違うカクテルなの?」

と聞くと

「今日も僕の気まぐれです」

といつも通りの答えが返ってくる

「ありがとう!次は…もうわからないかも」

「そうですか…今までありがとうございました」

私は店を出た

もう行けなくなるのかと思うと少し寂しい

心のどこかに隙間が出来てしまった

私の結婚は親から言われた人と結婚するいわゆる

許嫁がいた。私の望んだ結婚ではなかった。

しかしそれで幸せになれるなら良いか

いや、結婚するというのに

なぜ私は泣いている

嬉しいはずなのに

幸せなはずなのに

どうして…

「そういえばカクテルって意味言葉みたいなのあったよな。調べちゃおっかな。」

「え…」

そこに書かれていたのは

モヒート=心の渇きを癒して


ブルームーン=叶わぬ恋


私はその場に泣き崩れた

「なんだ。両思いだったじゃん。なんで…」

私は毎週金曜日にBARの店主に逢いに行くことを楽しみに仕事を頑張っていた。

すごく紳士的で人想いな彼に惹かれていた。



数年後、私は母親になった。

そして私は毎晩、娘に伝える。

「男っていうのはね素直に気持ちを言えないのよ。それに気づいてあげられるのがいい女の証よ。」

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