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プルトニウムを交換?!九州電力と四国電力は東電など電力会社5社と交換実施


フランスとイギリスに35.8tのプルトニウム

日本の電力会社は原発で燃やした使用済核燃料をフランスとイギリスの再処理工場に運んで再処理してもらっていました。その結果、フランスに14.1t、イギリスに21.7t、合計35.8t、日本の電力会社所有のプルトニウムがあります。

余剰プルトニウムを持たない約束

原発から出た使用済核燃料は全部再処理し、取り出したプルトニウムは高速増殖炉の燃料として使用、もっとプルトニウムを増殖するというのが日本の核燃料サイクル計画でした。しかし、1995年12月の高速増殖炉もんじゅの事故で、この計画は破綻しました。
では海外の再処理工場で取り出したプルトニウムはどうするのか。日本は「余剰プルトニウムをもたない」という国際公約 を守らないといけないので、普通の原発でMOX燃料として使うことにしました。プルトニウムを含むMOX燃料を使うプルサーマル発電は、危険は増すし、コストも高く、廃棄物もやっかいで、良いことは何もないのですが、フランスとイギリスにあるプルトニウムを消費するために、海外でMOX燃料を製造して日本に運ぶことにしたのです。

3年間の利用計画は関電の0.7tだけ


24年2月発表のプルトニウム利用計画(*2)

イギリスのMOX燃料工場で不正があり、今MOX燃料を作っているのはフランスの工場だけです。それも計画通りには進んでいません。
毎年発表されるプルトニウム利用計画の最新版(2024年2月16日)によれば、今後3年間のプルトニウムの利用計画は関電の高浜原発での0.7t だけです。
https://www.fepc.or.jp/about_us/pr/oshirase/__icsFiles/afieldfile/2024/02/16/press_20240216-2.pdf
『利用計画は年間わずか0.7トン… 日本にたまり続けるプルトニウム』(毎日新聞デジタル8月16日)によると「プルトニウム利用が減った理由について関電は『(フランスの)メロックス工場の機器の経年劣化と故障に伴う更新、改修が必要になった上、作業員の教育訓練に時間を要していると聞いている』と説明する」とあります。

フランスとイギリスのプルトニウムを交換

「余剰プルトニウムをもたない」という国際公約を守るために毎年プルトニウムの保有量が電事連から発表されます。

各社のプルトニウム所有量(2024年4月1日時点)https://www.fepc.or.jp/resource_sw/240412_plutonium.pdf

各社のプルトニウム所有量(2023年12月末時点)
https://www.fepc.or.jp/resource_sw/240329_plutonium.pdf

たった3ヶ月なのですが、大きく変動していました。
(タイトル画像の表参照 黄色はイギリス分がゼロになりフランス分が増えた電力会社、薄いオレンジはフランス分が減った電力会社)
九州電力と四国電力のイギリスのプルトニウムがなくなり、全てフランスにあることになりました。その分東電他5社のフランスのプルトニウムが減って、イギリスのプルトニウムが増えています。
実は九州電力と四国電力のフランス分のプルトニウムがMOX燃料を製造したため少なくなり、新たなMOX燃料製造の発注ができなくなっていました。このため、九州電力と四国電力のイギリスにあるプルトニウムを、他社が持っているフランスのプルトニウムと交換したのです。イギリスではMOX燃料製造ができません。(ではイギリスにあるプルトニウムはどうするんだ?と思いますけど、そこには触れない電力会社、電事連、突っ込まない原子力委員会)
2023年12月末現在の「プルトニウム所有量」の注記に以下の記載がありました。
※  仏国回収分のプルトニウムの一部(核分裂性プルトニウム量で東北電力 0.1トン、東京電力HD 1.0トン、中部電力 0.4トン、北陸電力 0.0トン、日本原子力発電 0.2トンの合計1.7トン)と、英国回収分のプルトニウムの一部(核分裂性プルトニウム量で四国電力 0.7トン、九州電力 1.0トンの合計1.7トン)を交換した上で、九州電力および四国電力が、MOX燃料工場が稼働している仏国でMOX燃料に加工し、利用する計画である。

北海道電力にはプルトニウムを譲渡?

また同じ注記には「 東京電力HDが仏国に保有しているプルトニウムの一部(核分裂性プルトニウム量で約40kg)が北海道電力に譲渡される予定」という記載がありました。これについては次回の「東電と共に脱原発をめざす会」で質問します。

まず再処理をやめるべき

そもそも普通の軽水炉で危険でコストも高いMOX燃料を燃やすことにしたのも、イギリスにあるプルトニウムとフランスにあるプルトニウムを交換することにしたのも、すべては「余剰プルトニウムを持たない」という約束を守るためです。だとしたら、まずは再処理を止めるべき!です。しかし国も電力会社も「核燃料サイクル」の破綻を認めず、「全量再処理」方針を維持。六ヶ所再処理工場では、できもしない計画を立てては完工延期を繰り返し、稼働し始めた原発のサイトでは、使用済核燃料がたまって各地で問題になっています。使用済核燃料の持って行き場がないなら、原発を停止するべき!です。
もっと困る使用済MOX燃料を関電はフランスに送って再・再処理すると言う計画を昨年6月に発表しました。MOX燃料はウラン燃料に比べて10倍コスト高とされているのに、再・再処理したMOX燃料はどれほど高価なものになるのでしょう。

再処理をやめて!脱原発へ!

アンデルセンの寓話「裸の王様」では「王様は裸だ」と少年が叫べば、大人たちは詐欺師の悪巧みに気付きます。しかし「再処理はできない」、「核燃料サイクルは回らない」といくら叫んでも、「回っている」「回っている」と呪文のように言い続ける原子力ムラのムラ人たち。 
わたしたちも負けずに声をあげ続けるしかありません。

核燃料サイクルは回ってないぞ!

*1 プルトニウム利用計画で具体的な原発名を挙げられていないのは東電だけです。東電は柏崎刈羽原発のプルサーマル計画を住民投票で否決されました。
2001年5月、刈羽村でプルサーマル計画受け入れの是非を問う住民投票実施。投票率88.14パーセント、賛成1,533、反対1,925、保留131、無効16。
これにより東電は福島原発でしかプルサーマルが実施できなくなり、福島原発事故当時、福島第一の3号機にはMOX燃料32体が装荷されていました。https://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/i_meet/2010/pdfdate/cb10031.pdf

*2 利用計画で最大の年間1.7t の利用をうたっているのは、電源開発の大間原発です。原子炉に装荷する燃料全てがMOX燃料というとても危険な原発です。電源開発はプルトニウムを持っていないので、他の電力会社からプルトニウムを譲り受けることになっています。
24年4月1日現在のプルトニウム所有量の注記には「仏国回収分のプルトニウムの一部が電気事業者より電源開発に譲渡される予定。(核分裂性プルトニウム量で東北電力 0.1トン、東京電力HD 0.7トン、中部電力 0.1トン、北陸電力 0.1トン、中国電力 0.2トン、四国電力 0.0トンの合計1.3トン)」との記載があります。あれ?1年分にもならない??

*3 利用計画、日本原電敦賀2号で0.5tになっています。適合性審査不許可の原発でのプルトニウム利用計画は認められないはず。さすがに来年の計画からは削除されるでしょうか。

*4 なぜ日本は再処理をやめられないのか?!
かつて秘密会議で「再処理」方針の維持が決められていたことが明らかに。

*5 MOX燃料はウラン燃料の10倍!という根拠は以下を。

*6 フランスへ使用済MOX燃料を運び出して再・再処理するなどという関電のロードマップはこちらを。


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