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福島原発の燃料デブリ取り出し作業員の管理目標値は年12mSv、福島避難解除基準は年20mSv、一般人は年1mSv


 デブリじゃないかも?!

東電が11月5日に取り出したデブリの放射線量は0.2m Sv/hだと発表しました。24m Sv/hを超えていたら戻すと東電は言っていましたが、測ってみたら上限値より2桁も低く、「デブリじゃないのでは」という指摘もあるようなものでした。詳しくは以下のまさのさんのnoteを。

2号機 PCV内部調査・試験的取り出し作業の状況https://www.tepco.co.jp/decommission/information/committee/roadmap_progress/pdf/2024/d240926_26-j.pdf

2号機の試験的デブリ採取状況

デブリ取り出し作業の被ばく限度は12mSv/年

「東電と共に脱原発をめざす会」(共の会)での東電の回答*1によると、デブリ取り出し作業員の被ばく限度は12m Sv/年です。
実際に作業員の被ばくした線量については、9月末までの数字で、延人数が1087人、被ばく線量合計は480人・mSvと回答しています。10月にはいってから壊れたカメラを交換して、デブリ(かな?)を取り出したので、この480人・mSv  は配管の順番を間違えてやり直し、カメラが壊れたところまでの作業の被ばく量になります。当初の計画では約360人・mSvだったので、2度の失敗で120人・mSv増えたことに。(*6 12月12日の記者会見で、おしどりマコさんたちが、記者会見では計画線量は610人・mSvから960人・mSvに増えていて、この共にの会への回答の360人・mSvは何なのかと追求してくださいました。詳細はおしどりポータルサイト↓)

このあとカメラを交換してやり直し、10月になって取り出したので、さらに追加被ばくがあったはずです。
これだけの被ばく労働の末、やっと取り出したデブリは重さが0.7g、「デブリじゃなかったかも」という声も出るような0.2mSv/h のかけらでした。

13年経っても年20mSvの被ばくの許容を強いられて

8月にNHKの「100カメ」という番組を見たことから、福島原発廃炉作業員の被ばく限度が気になるようになりました。福島第一原発での高線量の被曝作業を100台のカメラでのぞき見するという番組で、13年以上経っても、まだ労働環境がまともに整備されてない廃炉作業の過酷さが印象的でした。
「被ばくが年に16.6mSvを超えないようにしている」という発言があり、画面下に「一般人の被ばくは年に1mSv」というコメントが表示され、司会のオードリーの春日さんが「一般人の17倍近い被ばくをしているんだね」と発言。
ここで「ちょっと待って」となりました。確か福島の避難の解除基準は年に20mSv/年だったよねと。「安全」だから帰ってこいといわれて、避難者は住んでいる住宅の追い出し裁判までされています。何も悪いことをしていない福島の人たちは、廃炉作業の労働者より高い被ばくの許容を強制されているのです。しかも子どもたちも妊婦も。*2

廃炉作業員の年16.6mSvという基準はほんと?

「東電と共に脱原発をめざす会」(共の会)でこの年16.6mSvという廃炉作業員の基準限度はほんとなのかと質問しました。
質問を出したあと、回答がもらえるまでの3週間くらいかかるのですが、その間(10月9日)に↓の東京新聞の記事がでて、やはり16mSvくらいで被曝管理をしているのだなと思いました。

この記事を読むと「それにしてもデブリ採取作業の1日の被ばく線量限度が2.5ミリシーベルトというのは、他の現場で聞かないぐらい高い。事故直後は3ミリシーベルトとか5ミリシーベルトとかあったと聞くけど。2.5ミリシーベルトの半分、1.2ミリシーベルトで現場を離れるというが、今は各社とも年間被ばく線量上限を16ミリシーベルトちょっとで管理しているから、連日作業をすれば2週間も現場にいられない。人海戦術とはいえかなり厳しい」とあります。
高線量下でのデブリ取り出し作業の困難さがよくわかる記事です。

デブリ取り出し作業の被ばく限度は12mSv/年

しかし、今回の共の会の回答*1では、東電はもっと少ない12mSv/年と回答しました。「作業にあたっては,目標線量 12mSv/年を超えないよう線量管理を行」っているという回答でした。(この回答を東電から引き出したのは、実は私の質問ではなく、Yさんでした)以下回答画像を貼り付けます。

10月23日 東電と共に脱原発をめざす会回答より

デブリ取り出しはそもそも無理

「人間に対して脅威となる放射性物質のセシウム137とストロンチウム90の半減期は、それぞれ30年と28年です。100年待てば放射能は10分の1に、200年待てば100分の1に減ってくれます」
「100年か200年か経てば、その間に、ロボット技術や放射線の遮蔽技術の開発も進むはずです。そして、いつかの時点でデブリを取り出すこと以外ないと思います」
「国と東電は、それくらい長期にわたる闘いをしているんだと覚悟しなければいけません。そのためにも、一刻も早く福島県に「廃炉は不可能」と説明し、謝罪するべきです。悲しいことですが、事実を直視しなければ前に進めません」
これは小出裕章・元京大原子炉実験所助教の言葉、2022年3月7日号アエラの記事↓からの引用です。
そもそも今、燃料デブリを取り出すのは無理!なのです。

廃炉作業が進んでいるように見せかけるために労働者に無駄な被ばくを強いるのはやめて!

廃炉作業員より高い被ばくを福島県民に押し付けるのはやめて!

*1 共の会(10月23日)回答 
 燃料デブリ取り出し作業について
・9 月末までの個人の最大被ばく線量としては 1.1mSv、最小被ばく線量としては 0.0mSv となります。
・9 月末までの延人数は 1,087 人、合計被ばく線量は約 480(人・mSv)です。
・放射線従事者における線量限度は、関係法令において、実効線量で 5 年間につき 100mSv、1 年で 50mSvと定められており、その数値を超えないよう福島第一では、1 年 20mSv を超えないよう放射線業務従事者の実効線量を管理しています。
・APD 管理値は 2.0mSv で、計画作業線量の上限は 2.5mSv/日です。但し、被ばく管理として約 1.0mSv 前後で 1 日の作業を終えるようにしています。
・実際の作業にあたっては,目標線量 12mSv/年を超えないよう線量管理を行うとともに,特定の作業班に被ばくが集中しないよう,作業手順を考慮した作業班の割り当ておよび今後実施の習熟訓練を踏まえた 最適化を行ってまいります。

*2 福島原発事故避難者追い出し裁判について
福島原発事故では廃炉作業員の年間被ばく量をはるかに上回る20mSv/年の被ばくを許容することを福島県民は強制されています。避難者は20mSv/年という一般人の20倍の避難解除基準で「安全な」地元に戻ることを強いられています。避難先の住宅を追い出されたり、家賃の支払いを求められたり、裁判も起こされて戦っています。このことはなかなかマスコミでは報道されません。
また避難者は「避難の権利」を求めて、国連人権理事会で毎年のように福島事故避難者がアピールしたり、ディベートに参加しています。国連人権理事会のUPR(普遍的・定期的審査)が出した2012年、2017年、2022年の3度の勧告ではいずれも、福島の避難者に対する支援改善を日本政府に呼びかけています。
以下参考になりそうな記事を貼り付けます。

*3 タイトル画像は東電燃料デブリポータルサイトより

*4 10月23日 東電と共に脱原発をめざす会の回答について、デブリ取り出し作業9月までの被曝量、質問3−1と質問7ー21への回答を編集したものを以下↓に貼り付けます。東電の月曜と木曜の記者会見での回答と食い違っているそうです。

*5 単位を間違えていました。
「mSv・人」を 「人・mSv」に修正しました。すみません!

*6 おしどりポータルサイト

2号機燃料デブリ「試験的」取り出し 東京電力の欺瞞 その①
作業員の集団線量、市民団体へは会見の3分の1の数字を説明
3行まとめ
・この作業の集団計画線量は、汚染カメラの人力交換という予定外の作業が加わったため、10月3日に610人・mSvから960人・mSvに上方修正された。
・しかし、10月24日の、市民団体「共の会」への東電交渉では「360人・mSv」と文書回答していた。
・なぜ説明もなく3分の1の数字しか回答しないのか、筆者が問うと
「個別の市民団体との交渉の場での回答への説明はしない」

 


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