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【INFP】会社員時代の思い出【お局様ごめん】

 己の罪を告白しなければならない。
 私は過去に会社員時代のエピソードを記事にしているのだが、読み返してみるとかなり自分に都合よく書いていると気付いたのだ。
 あれではまるで無垢な虐められっ子の逆転劇ではないか。確かにそういう面もあったかもしれないが、実を言うと私もかなりやらかしている問題社員だったのだ。
 あの記事で悪役扱いになっていたお局様の名誉のためにも、もうちょっと詳細な回想を書いてみたいと思った次第であります、はい。

 あと多分、お局様のタイプはESTJですね……。

 えー、私が会社員として勤務していた期間はたった九ヶ月です。
 この時点で社会不適合者の匂いがプンプンする。

 私は十代の頃から作家になるのが夢だったので、
「会社員としての私は本当の私じゃない。最低限の生活費を稼ぐだけ」
 という認識でした。出世競争は全く興味がありませんでしたし、勤務中も小説のことばかり考えておりました。
 だ、ダメ社員すぎる……。
 どれくらい出世に無関心だったかというと、同僚に対して「なんかミスしたら全部私のせいにしていいよ」と言っていたほどです。
 私はあまりのトロさから入社してすぐお局様に目を付けられ、ことあるごとに叱られていたため感覚が麻痺してたんですね。SNSでは病みまくってたけど現実ではふてぶてしくなる一方でした。
 なので「私より繊細な同僚の身代わりになればいいや」と開き直り、他人が何かミスをするたびに「ごめんなさーい私がやりました!」と申し出る奇怪な新人社員と化しておりました。
 もう、ほうれんそうを完全にブチ壊してる。そこにいないはずの私がミスをしたことになる謎の現象が発生するわけですから、お局様は「ほんとに貴方がやったんだよね?」と一々疑いながら叱ってくるようになってました。
 私もなんで自分が叱られているのかわからないことが多々あったので、「自分のどこが悪いかわかる?」と聞かれるたびに元気よく「わかりません!」と返事をしてましたね。
 こういうことを言うと周囲から失笑が漏れてきます。
 笑いを嚙み殺した先輩社員が「もういいよ、あんた達のやり取り面白すぎて集中できないよ。そのへんにしてあげなよ」とフォローを入れてきたことが何度かありました。
 
 私のような社員は一刻も早くクビにするべきだったと思うのですが、人手不足の御時世ゆえそうもいきません。さすがの私もここまでアレな人材を雇ってくれる会社に感謝の気持ちはあったので、職場の休憩室には大量のお菓子を差し入れしていました。皆でそれを分けながらワイワイやっている時間が一番楽しかったと思います。
 休憩中におじさん達の話に耳を傾けるのは苦ではありませんでした。やはり私より人生経験が豊富なので聞き応えがあります。
 業務連絡はあんまり頭に入らないのに、おじさん社員の子育てエピソードはすんなり頭に入る。不思議ですねぇ。話を聞いているうちにどんどん好奇心が刺激されていって、「もっと聞かせてください!」みたいなモードになってた記憶があります。
 あとは何があったっけな……そういえば昼休みに先輩達に絵を見せて遊んでたこともあったような……確か象の絵を描いたはずです。
 職場じゃなくて幼稚園かな?
 
 そんなことばかりしていたので、会社での私の扱いは「仕事はできないが悪い子じゃない」という感じでした。
 新人だったのもあって色々と大目に見られてたんでしょうね。
 逆にお局様はめちゃくちゃ有能だったのに、部下を叱れば叱るほど「やりすぎ」「怖い」みたいな扱いになっていったので、あれはちょっと可哀想だった気がします。

 私からするとお局様は謎の生き物でした。彼女を恐れるあまり職場の空気が委縮し、逆にミスが発生しやすくなるレベルに達していたのですが、本人はそれに気付いていないようなのです。たぶん悪気はなかったんでしょうね。
 私が体調不良なのに出勤した時は多めに休憩を入れるようにシフトを調整してくれたし、まったく慈悲がない人ではなかったはずです。
 なんだろう、とにかく不器用な人に見えました。今にして思えばあの人は言葉ではなく行動で部下を労わっているつもりだったのかもしれません。
 しかし人口の大半はF型ですから、ひたすら優しい言葉をかけた方が他人に好かれやすいんですよね……そう考えるとT型の人って誤解されやすい気がします。
 
 こうして書くとお局様は堅物のように感じるかもしれませんが、意外なことに飲み会は大好きな人でした。むしろそういうのは全部参加していたと思います。あの人がお酒の席でどんな振る舞いをしていたのかは想像もつきませんが、仕事仲間との付き合いは片っ端から顔を出すべきという思考だったんでしょうね。

 逆に私は飲み会はほぼ全部スルーでした。
 新人全員が強制参加の歓迎会と、あともう一回くらい顔を出した程度かな?
 仕事が終わったら基本まっすぐ家に帰って小説を読んだり書いたりすることに専念してた気がします。夏目漱石とライトノベルを交互に読む生活でした、あの頃は。

 いやあ、E型とI型の違いがもろに表れてる。
 うーん……仕事ができない上に自ら率先して同僚のミスを被り、飲み会には全く顔を出さない。そしておじさん社員には愛想良く振る舞ってる。
 改めて己を振り返ってみると私は無能なぶりっ子に見えてたかもしれないですね、お局様からしたら……。
 もしもお局様視点でnoteを書いたら、私はめっちゃ嫌な新人として描かれそうです。

 ああでもちょっとだけ自己弁護させて頂くと、私は突発的なアクシデントには強いという長所がありました。不良少年の来訪、野生動物の侵入、機材の故障などで予定が狂って社内がメチャクチャな雰囲気になると、心の中で「面白くなってきた」とワクワクしてましたね。いっそ普段より元気が出てきたくらいです。
 予定なんて狂えば狂うほど面白いですからね。
 組織のルールがぶっ壊れて混乱している時の方がやる気出ますからね。
 
ネズミ捕りの時は大張り切りでしたよ!
 
逆にわけのわからないトラブルが起きている時は、普段あれほど気丈なお局様が物静かだった気がします。P型とJ型の違いがここに出ています。

 他にPとJの違いといえば……お局様はものすごく服装にうるさい人でした。いえ、社会人としてはあの人の方が確実に正しいのです。学生時代に制服を着崩してた頃の感覚が抜けなかった私が悪いのです。
 私はどうも会社から支給された制服が「地味だなあ、格好良くないなぁ」としか思えず、なんかアレンジ加えられないかな? とかそんなことばっか考えてた気がします。紐の結び方をちょっと工夫してみたりと、そういったことに心血を注ぐダメ社員でありました。
 ……あの会社の制服は胸元が割と開いてたので、男女ともに下に白いTシャツを着なきゃいけなかったんですよね。私は一回シャツを持ってくるのを忘れたことがあったんですが、「別にいいっしょ」と軽く考えて素肌の上にそのまま制服を着て更衣室を出たところ、お局様に「何考えてんの今すぐシャツ用意しないと皆の前に出せないから」とガチ説教を食らったのを覚えてます。まあ、色々大胆に見えちゃってたので当然の措置でしょうね……あれは私が悪いですね……。

 ここまで書くと私とお局様はずっと対立していたように感じるかもしれませんが、最後の方はそうでもなかった気がします。
 というのも私が勤めていたのは食品加工会社だったのですが、保健所の衛生検査に引っかかって営業できないという状況に追い込まれたんです(これは以前の記事でも書きました)。
 そしてどう見ても衛生面がやばそうな食品を「これ何とかして売れねえかな」と現場責任者が提案してくる、企業倫理の崩壊が訪れておりました。
 元々労働環境も悪くて離職率が凄まじかったんで、追い込まれると哀れなものです。役職のついた先輩ですら次々に辞めていきました。さきほど悪そうなセリフを吐いた最高責任者ですら私より二ヵ月早く退職しました。
 
いや~末期末期。
 さすがのお局様も労働意欲が減退したようで、後半は溜まっていた有休を使いまくってあまり職場に顔を出さないようになってました。が、たまに出勤するといつも通りバリバリ働いて倫理的に問題のありそうな業務もどんどんこなしていく。内心仕事を嫌がってるはずなのに、なぜ手を動かすのを辞めようとしないのかあの時の私には理解できませんでしたが、お局様はFiが劣勢なので自分の本心に気付けなかったのかもしれませんね。あの人も心の底では苦しんでたのかな。

 あ、私ですか? 私は「悪事に加担したくないわ」と開き直って最後の方は殆どの業務をサボってました。この頃にはもう出版関係者から声をかけられてたので、どうせ作家になるしどうでもいいやと強気になっていたのもあります。

 ……あ!
 今まさに思い出したのですが、お局様はサボりマニュアルを作って配布してましたね、この時期になると。
 
『現場で一番偉い人が不在のタイミングでいくつかの作業を省略すると、全員が20~30分ほど早く上がれるようになる。そのための詳細な指示書』

 って感じの内容でした。えらく達筆だったのを覚えてます。
 真面目な人って仕事をサボる時も真面目なんですね。わざわざ手抜きのテクニックを紙にびっしり書いて部下に配り歩くとは……。
 受け取った直後は「うわ~。まためんどくさいもん渡してきたよ」とうんざりしてたのですが、ちゃんと目を通してみるとサボりを推奨している内容なのでそりゃあもう驚きました。

「えっ、これって」

 私が顔を上げると、お局様はいつものツンとした顔で「貴方も早く帰りたいでしょ?」と言ってきた記憶があります。
 私も悪い笑みを浮かべて頷いて……あの瞬間だけは心が通じ合っていた気がします。

 う~ん。お局様美人だったし、出会う場所が違ったら良いお姉様として仲良くなれたかもしれないですね。
 ……とまあ、私の会社員時代の思い出というかお局様のフォローエピソードはこのへんで終わりです。

 しかしこうして過去のやらかしを書くと、自分が絶対会社員になってはいけない人材だったのがよくわかりますね。今の職業に就いたのは当然の流れだったとしか思えません。
 作家仲間とお話すると私なんか目じゃないくらいの奇人変人がウヨウヨいて、色んな常識に中指立てながら楽しく暮らしてますからね。やっぱり私はこっちサイドだったんだぁ! と安心感を抱くばかりであります。

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