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触れるもの皆傷つける

 うう。
 また自分で自分を傷つけてしまいました……。
 いや、自傷の話じゃないので安心してほしい。
 簡単に言うと、眉毛の手入れに失敗して出血しました。うげ~! 

 私の本来の眉毛は父譲りのフサフサ三角眉。油断するとすぐ太眉に戻ろうとするので、頻繁にお手入れしなければならない。
「いっそ全部剃って外に出る時だけ描く方が楽なんじゃない?」とアドバイスされたこともあるけど、スッピンの自分から眉毛が消滅するのはちょっと……と思ってしまうので、なるべく自前の毛を使ってナチュラルに整えておきたい派なのだ。眉毛も野菜も自然栽培が一番なのである。
 そういうわけでしょっちゅう眉用シェーバーを使って邪魔な毛を処理しているのだけど、これがまぁじれったいのなんの。
 安全なのはわかるんだけど、わかるんだけどさぁ……。
 侍の血が騒ぐのか、時々猛烈に「切れ味のいい刃物で一気に処理したい」衝動に駆られるのだ。
 なんかいいのないかなぁ、そういえば貝印の一枚刀ってたくさん入ってるのに安いなぁ。
 ……貝印か。お母さんは「やめときなさい。切れ味が良すぎて使いこなせないから」って言ってたっけ。
 だがそんなことを言われると逆に試したくなってくる。
 私の中のNeがこんな風に囁くのだ。
「とりあえずやってから考えよう、後のことは知らん」
 
と。
(ENFPやENTPやINFPやINTPの皆さん、この感覚わかりますよね?)
 よせばいいのに私は飾り気のない一枚刀セットを購入し、これで眉の手入れをやってみることにした。
 肌を蒸しタオルで柔らかくし、クリームを塗ってから眉の端っこを剃刀でなぞってみる。

「!」

 す、凄い……。
 無駄な毛を剃るというより「消す」感覚。魔法のような切れ味に私は思わず呆けてしまった。
 これ軍事転用できちゃうやつじゃん……。
 面白くなって眉間やまぶたの上なんかにも刃を当ててみる。やはりスルスルと産毛が消えていく。

 楽しいな~~~!

 十分ほどで無駄な毛はあらかた消し去ったが、それでもまだ剃り足りない。もうしばらくこの剃刀で遊んでいたい。すっかり新しいオモチャを見つけた子供のテンションで眉間に刃を当てていると、一瞬だけ肌に引っかかる感覚があった。ん? と思ってそのまま手を動かしてみるが、どうやらこれが良くなかったらしい。

「痛っ」

 私の眉間には赤い斜線が浮かび上がり、じわ~と血が滲み出てきたではないか。 
 うわ! やっちゃった! 
 えーどうしよう。
 やはり母の言葉は正しかった、これは触れるもの皆傷つける思春期のような刃だったのだ。
 ティッシュを傷口に当てながら後悔する。傷が治るまでは人に会わないようにしよう、うう……。
 まあ元々超インドア派だから余裕で引きこもれるけどさ……。
 でも鏡に映る自分が眉間に切り傷あるのはテンション下がるなぁ。
 早く治んないかな~この傷。

 


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